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第20章―消せない罪―

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 グール達の動きを完全に封じると、ラジエルは上空から聖なる魔法を唱えた。

「光の精霊よ、闇に蠢く悪しき魔物達を聖なる光の柱にて全てを浄化せよ、エルトラーナ!」


 ラジエルは上空から呪文を詠唱すると、両手から聖なる光の玉を放った。放たれた光の玉は地上にいたグール達の群れに向かって眩い光を放つと同時に、辺りに強烈な光の柱が出現した。聖なる光の柱は一瞬で周りを呑み込んだ。その光の柱に全身を包まれると、グール達は忽ち化石となって砕け散った。


『お、おのれっ…! 天族めっ…!!』

『ギャアアアアアアアアッ!!』


 グールの親玉は、周りにいた手下と共に光の柱に呑み込まれると消滅した。光は闇を打ち払い、全てを浄化させた。その瞬間、大きな光の柱は森全体を光で覆い尽す程の眩い輝きを放ってから消滅した。

 光の柱が消えると悪に満ちた邪悪な気配が森から途端にその気配を無くして、かわりに神聖なる気配へと浄化された。ラジエルは白い翼を畳むとヒラリと地上に着した。ラファエルは結界魔法陣から外に出ると、無言で彼の方へと歩き出した。

「これで暫くは、この森に邪悪な輩が寄り付かなくなるでしょう。ですが、いずれは…――」

 ラジエルはポツリと彼に呟いた。するとラファエルはその唇をキスで塞いだ。唇に微かに感触が伝わると、そこで唖然となった。

「ッ…ラファエル様…――」

 塞いだ唇をゆっくり離すと、ラファエルはラジエルの胸元を拳で突いた。

「っ…! お前は本当にズルい奴だ! 私を心配させて、こっちは死んだかと思ったんだぞ…!?」


「ラファエル様…」


 彼にその事を詰め寄られると困った表情で佇んだ。ラファエルはラジエルの前で小刻みに身体を震わせた。

「無茶は承知でした。ですがそうして戦わなければ、大切な人を守れないと思いまして…――」

 ラジエルの何気ないその言葉が彼の心をかき乱した。ラファエルは彼から背中を向けると、怒り似た声で責めたてた。

「私が大切…!? バカを言うな、お前は本当に愚かだ…! そんな戦い方で私が喜ぶと思ったのか…!? こっちは本当にっ…――!」

「もういい…! それがお前の戦い方なら、好きにしろ…! だが、お前を殺していいのは私だ…! そしてお前を憎むことも傷つけることも…! そのことを覚えとけ!!」

「ラファエル様……」


 ラジエルは彼の背中をジッと見つめながら、戸惑った表情で佇んだ。

 震えてる肩に手を置くとラファエルは悲しそうな瞳で振り向いた。


「お前を傷つけていいのは私だ…わかったな…――」


 そう呟いた彼の瞳は僅かに濡れていた。ラジエルはハッとなると、後ろから抱き締めたい衝動に駆られた。

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