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第20章―消せない罪―
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しおりを挟む「ニンゲンのニオイだ……」
「美味そうな…ニオイ……」
「ニンゲンの肉…ニンゲンの肉…喰イタイ…」
「頭ヲクレ足ヲクレ腕ヲクレ……」
「ここに美味そうなニンゲンがいる…キシシッ」
森の茂みから赤い瞳を光らせながら不気味な声で魔物達は喋っていた。ラファエルはラジエルの後ろに立つと彼に話しかけた。
「気をつけろ、今宵は月が満ちている…! 奴らは月が満ちている時はいつもよりも凶暴だ…――!」
『ハッ…!』
「ニンゲン喰イタイ…肉ヲ…グヘヘヘッ……」
赤い瞳を光らせながら茂みの奥からグール達がゾロゾロと姿を現した。2人は醜悪な姿をしたグール達を前にゾッと寒気を感じた。
「なんて醜くて醜悪な化け物なんだ…! 見るだけでもおぞましい…! あのような醜い輩は即刻、排除しなくては…――!」
ラジエル眼鏡の奥を光らせると戦闘体勢に入った。
「ざっと14体はいるな、グールにグーラだ…! おい、油断するなよ!」
ラファエルは彼の背後から声をかけた。
「戦う力を持たない貴方様をここで死なせるわけには、いきません! 私が全力でお守り致します!」
彼がそう言って話すとラファエルは相づちをした。
「ああ、そうだ。お前が私を守るんだ。私は戦うことが出来ない。頼んだぞラジエル…――!」
『御意!』
ラジエルは着ているコートを翻すと、凛々しい表情で彼らの前に立ちはだかった
「さあ、来い! 醜悪な化け物め、貴様らを一匹残らず駆逐してやる!」
「ニンゲンだ…ニンゲンだ…キヒヒヒヒヒヒッ…なんて美味そうなニンゲンだ……」
「目玉を喰うのはオレだ…」
「じゃあ、オレは足がイイ…」
「私は腕が食べたい…」
「肉ヲ…新鮮な肉ヲ…人間ノ肉…うまそうだ……」
グールとグーラは廃屋の周りを取り囲んで彼らを獲物として待ち伏せていた。醜悪な姿をさらし、その姿は痩せこけた骸骨にひとしい。皮膚は全身緑色で、赤い目玉をギョロつかせながら、口からヨダレを垂らした。手足ともに肉さえない。ガリガリに痩せこけた醜い化け物。それが屍食鬼と呼ばれる怪物だった。
彼らは人間の肉や人間の死体を喰らい。時に人間の子供を食べると言った冷酷無比な、残忍性を持ち合わせていた。彼らは廃屋の周りを取り囲んで、2人を襲うタイミングを見計らっていた。ラジエルは片手を翳すと彼のいる所に結界魔法陣を張り巡らせた。地面には六芒星の印が描かれた。
蒼白い光を放ちながら結界魔法陣は邪悪な者達を外側から寄せ付けないように聖なる光を放っていた。グール達は彼らの周りを囲むようにニタニタと不気味に笑った。
「ラファエル様、なにがあろうがその結果魔法陣から外に出てはなりません! そこにいる限りは身は安全です!」
ラファエルは結果魔法陣の内側から声をかけた。
「ラジエル、気をつけろ…――!」
「ハッ!」
彼は返事をすると真っ直ぐな瞳で前を見た。醜い姿をしたグール達が廃屋を取り囲む中、彼は一人で怪物と立ち向かった。ラジエルは廃屋から外に出ると、真ん中に立ち止まって声をあげた。
「さあ、来い! 悪しき怪物どもめっ!!」
グール達はゾロゾロと姿を現すと、不気味な赤い瞳を光らせながら彼の方へと向かった。
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