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第20章―消せない罪―
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しおりを挟む「確かに私はもう貴方様の部下ではありません…。今はハラリエル様の部下として、主君に尽くしております。しかし、例えそうであっても私は貴方の部下に変わりはありません…――!」
「ッ…」
「貴方も本当はわかってるはずです…私の…――」
切なさを秘めた瞳で彼を真っ直ぐ見つめた。そして、後ろから肩にそっと手を置いた。ラファエルは息を呑むと途端にその手を振り払った。
「ッ…――! …かな、愚かなことを言うなっ…!!」
「ラファエル様……」
「私がお前の気持ちなど知るわけがないだろ……!? お前は勘違いしているのだ、頭を冷やせ…!」
ラファエルは冷たく言い返すと突き放した。
「お前は錯覚している…! 勘違いして…――!」
『ラファエル様っつ!!』
ラジエルはその言葉にカッとなると、彼を床に押し倒した。
「私は決して勘違いをしてるわけではありません!! ましてや錯覚など……! この思いが勘違いで錯覚ならどんなに楽か…! 錯覚なら何故、こんなにも私の胸は苦しいのですか…!? その答えを貴方はご存じのはずです!」
「ラジエル…――」
彼の苦しそうな表情に気がつくとそこでかける言葉を失った。下から手を伸ばすと左の頬に触れた。
「お前と出会ったあの頃は全てがまだ幼かった。時々、思い出す事もある。だが、どんなに過ぎ去った過去が恋しくてもそこに戻る事はもう出来ない…! お前は私の幻をみていたんだ! いい加減その事に気づけ……!」
ラファエルは意味深にそのことを話すと、彼から瞳を反らした。ラジエルは棘のある言葉に傷つくと唇を噛み締めた。
「私は貴方様の"幻"をみていたわけではありません! 私は今でもずっと…――!」
ラジエルは切ない瞳で彼を見つめた。ラファエルは、どこか遠くを見つめると天井を見上げて話した。
「かつて昔、ここに人が住んでいた。でもここにはもう住人はいない。あるのは朽ち果てた廃屋だ。ここに来る度に嫌と言うほど思い知らされる…。これは私にとって忘れたい過去に等しい。此処こそが、私の罪の始まりの場所だ。そして、この家に住んでいた住人こそがこの私だよ…――」
ラファエルは遠い過去を思い詰めた表情で語った。
「罪の始まりは私だけではなく、お前や兄さんもそうだ。同じ罪の十字架を背負っている。そのことを決して忘れるな…――!」
凍りつく言葉にハッとなると、ラジエルは彼の傍から離れた。ラファエルは床から立ち上がると彼の胸元に爪を立てた。
「忘れるな。 もしその事を忘れたら、お前の心臓をこの手で抉り出してやる…――!」
「っ…ラ、ラファエル様……!」
一瞬、胸元に爪を立てられると苦悶の表情を見せた。ラファエルは冷たく話すと彼を突き放した。
「さあ、もう帰るぞ――」
「はい……」
ラジエルは後ろで眼鏡を人差し指であげると、小さく返事をした。2人の間には僅に距離があった。それは見えない壁に阻まれるような心の距離に等しかった。近くにいるのにお互いの気持ちが見えない。
見えないからこそ主君への想いが強まった。目の前にいる彼に、もどかしさを感じた。壊れた扉の前に立つとラファエルは出口の前で足を止めた。
「ラファエル様、どうしましたか…――?」
不意に後ろから話しかけた。するとラファエルは外をジッと見ながら一言呟いた。
「屍食鬼だ。どうやらこの森には、いつの間にか魔物が住み着いたらしいな」
「ラファエル様、危険です…!! 私の後ろにおさがり下さい…――!」
彼の前に立つと咄嗟に辺りを見渡した。すると茂みの奥から誰かが赤い瞳を不気味に光らせながらジッと彼らを見つめていた。
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