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第18章―虚ろな心―

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 扉をノックするとギュータスは部屋に入った。部屋は薄暗く窓に垂れ下がっている赤いカーテンは開いていた。そこから雨が降っている様子が伺えた。轟音とともに雷が光った。ズドンと大きな音を響かせながら、雨は仕切りに降って止む気配はなかった。部屋はシンと静まり返り、人のいる気配は感じられなかった。

「おい、クロビス居るのか?」

 ギュータスは辺りを見渡しながら薄暗い中を歩いた。奥に入ると、誰かが赤いソファーの上に横たわっているのが見えた。目を凝らすとそこで雷が再び光って落ちた。外が光ると部屋の中が一瞬明るくなった。そこで彼はようやく気づいた。ソファーに横たわっていたのはクロビスだった。彼は片手にザクロの果実を持ちながら、もう片方の手をダランとさせてそこで寛いでいた。

「なっ、何だよ。そこに居たのか? 居たなら返事くらいしろよ……!」

 ギュータスは彼の近くでそう話すと、ソファーの前に立った。するとその隣でジャントゥーユが首に首輪をつけながら床に小さく座っていた。ジャントゥーユの首には首輪がつけられていて長い鎖の先には、クロビスの手に繋がれていた。クロビスはギュータスの声に反応をせずに空虚な瞳で果実を噛った。心がそこに居ないような、空っぽの彼がそこに居た。

 ソファーに横たわって果実を食べている姿は、妖艶な妖しさを漂わせていた。ギュータスはその姿に一瞬魅了された。冷酷な女王が赤い果実を貪る姿は、見ているものをそこで惹き付けた。彼はザクロを食べながらギュータスには目もくれなかった。服はいつもよりもラフな格好で、看守の服ではなく。白いYシャツに下は素足だった。そして、胸元のボタンだけがはたけていた。どこか色気が漂うその姿に彼は無意識に唾を飲んだ。

「何だよ、聞いてないのか…? おい、クロビス…――?」

 そこで声をかけると彼のもとに近づいた。するとジャントゥーユが、いきなり犬のように突然と吠えた。

「何だよ、いきなり犬の真似なんかしやがって! それにその首輪は何だ!?」

 ギュータスがジャントゥーユに話していると、クロビスは不意に目を向けた。犬のように吠え続けるとそこで叱った。

「吠えるな。そこで大人しくしてろ」

「ガウガウッ! グルルルッ…!」

 彼に叱られるとジャントゥーユは大人しくなった。クロビスは、体をおこすとソファーに座ったままギュータスに話しかけた。

「何しに来た?」

「ああ、ちょっとな。お前に渡す物があって来た」

「だったら早くするんだな。私は今、一人でいたい気分なんだ」

 クロビスはそう話すとツンとした顔で果実を噛った。

「おい、所でこの首輪は何だ?」

 ギュータスはジャントゥーユの首輪を見ながら彼に話しかけた。

「――フン、番犬だ。何か言いたい事でもあるのか? それともお前が私の番犬にでもなりたいか?」

「ばっ、番犬…――!?」

「ああ、そうだ。こいつは私の番犬だ。なあ、そうだろ?」

 クロビスはそう話すと、首輪の鎖をクイッと引っ張った。ジャラッと音をさせながら鎖を引っ張ると、ジャントゥーユは無言でニタリと笑った。

「大人しいが、たまに凶暴になるんだ。だからこうやって鎖に繋いでいるんだ。鎖に繋いでいる時は奴も大人しい。何ならお前も鎖に繋いでやろうか?」

 クロビスはそう話すとジャントゥーユの頭を撫でた。その仕草が妖艶な雰囲気を漂わせた。果実を持っていた手から甘い汁が垂れると、その濡れた手をジャントゥーユの前に差し出した。

「手が濡れた。舐めろ」

 クロビスは女王様のような口調で命令すると、彼は果実の汁が滴り落ちた手を舌で舐めた。

「フフフッ。まるで獣の犬だな。でも、そこが良い。どうだ美味しいか?」

 ジャントゥーユは命令されると、彼の腕を犬のように舌でペロペロと舐めた。そして、彼に聞かれると首を頷かせてニタリと笑った。ジャントゥーユは不意に彼の指先を舐めるとクロビスは僅かに顔の表情を変えた。妖艶な色気を漂わせた彼をギュータスはそこでジッと見つめながら生唾を飲んだ。指先を舌でペロペロ舐められると、クロビスは表情を歪めながら乱れた吐息をした。乱れた吐息をしながらクスッと不敵に笑った。


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