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第18章―虚ろな心―
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しおりを挟む「お前はあの時、すでに一度息をひきとったのだ。だが、私がお前に分け与えた竜の魂の力により。お前は奇跡的に息を吹き返したのだ」
ユングは彼から竜の魂の話を聞かされた。信じられないような話しに、彼は驚いた様子を見せた。
「なんだか今でも信じられないないです。僕の中にそんな一部があるなんて…。隊長とリューケリオンには感謝してもしきれないです――! その、僕を助けてくれてありがとうございます…――! 僕はこの恩は一生忘れません!」
感謝の気持ちを精一杯伝えると、そこで笑顔でニコリと笑った。
「お前が気にする事ではない。私は只、目の前のお前を助けたかっただけだ」
「リーゼルバーグ隊長…――」
ユングは彼の心の優しさに触れると、感極まって涙をウッすらと浮かべた。
「さあ、体を休めるがよい。お前はまだ安静にしなくてはならないのだからな」
「はい…――!」
彼はそう話すと、掛け布団を手で直してかけてあげた。ユングはフと、ベッドの横にある花瓶に気がついた。
「あの、この花……?」
「ああ、この花か? さっきハルバートとリーナが見舞いに来たんだ。そして、この花はリーナが飾ったのだ」
「リーナさんが?」
「ああ、早く良くなるようにと言っておったぞ?」
「そうですか。ハルバート隊長が見舞いに来るなんて意外ですね?」
「ああ、そうじゃな。あれはきっとリーナに言われたからだろう。奴は人の話しには耳をかさないが、不思議とリーナの話しは受け入れるんだ。あれはきっと、尻にしかれるタイプだ」
リーゼルバーグは何気にその事を話すと、珍しく笑い声をあげて笑った。
「あはははっ! リーゼルバーグ隊長、そんなことを話したらハルバート隊長に怒られますよ!」
「そうだな。では、お前と私の内緒にしとおこう」
「はい!」
2人は窓辺で会話を楽しんだ。リーゼルバーグは、彼に最後に質問した。
「こんな事を聞くのも何だが、お前さんはあの時の事を覚えているか?」
「え? 何をですか?」
「鳥人族の連中と戦った際の記憶だ。覚えておらんのか?」
「鳥人族とですか……? す、すみません。全然記憶にないです…――」
「そうか。では、お前さんが鳥人族に矢を放った事もか?」
「僕がですか!? 僕が鳥人族に矢を…――!? そ、そんなの無理ですよ! 鳥人族を相手に矢を放つなんてそんなの僕みたいなヒヨッコが敵う相手じゃありませんよ!」
ユングは彼の前でその事を否定した。しかし、リーゼルバーグは何かを感じていた。
「もしかしたら僕の父さんなら鳥人族にひょっとしたら勝てるかも知れないけど僕はまだ…――」
「そうか。何も覚えていないのか…――。わかった。ならばお前が思い出すまで待つとしよう」
「リ、リーゼルバーグ隊長……?」
「ではユングよ、ゆっくり体を休めるのだ」
「は、はい……!」
何も覚えていないことを改めて確認すると、彼は内に秘めた思いを話さずに、椅子から立ち上がって扉の方へと向かった。
「これだけは伝えとく。忘れているとは言えでも、お前のとっさの行動で、私は間一髪の所をお前に救われた。礼を言うぞ――」
リーゼルバーグは入り口の前で感謝の言葉を一言告げると部屋をあとにした。ユングはその言葉を受け止めるとベッドの上で一人考え込んだのだった。
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