156 / 316
第14章―魂の在りか―
13
しおりを挟む「私にはブライアン団長の役目は重すぎます……! それにそんな重大な任務を私ごときが簡単に引き受けることは出来ません! 皆で話し合って決めたほうがよいかと…――!」
動揺するアレンにバーシルは意を唱えた。
「そんなことは無論承知である。だが、今この王宮騎士団に必要なのは、実力がある者のが団を率いるリーダー的存在だ。ブライアン団長が死んで誰が彼の役目を担うと言うのだ? 貴公にはその頭角があるからこそ、私は頼んでいるのだ。それにこんなチャンスは滅多にないぞ?」
「ですが…――」
「なら、王宮騎士団を抜けて将軍としての出世の道を歩むか? 今ならまだ間に合うぞ。それに貴公は王宮騎士団で治まるような器ではなかろう――」
「そ、それは……!」
アレンは顔をうつ向かせると沈痛な表情で口を閉ざした。
「バーシル大臣……!」
「何だシュナイゼル?」
「ブライアン団長の件に関しては、私に全て任せてはくれませんでしょうか? 我が王宮騎士団でその話を慎重に検討して行こうと思う次第でございます」
「ほう、では貴公らで会議を開くがよい。だが、私に言わせればアレンのほかに現時点で団長が務まる者はいないと思うがのう。ホホホッ」
バーシルは目を細目ながら優雅に笑った。重苦しい雰囲気の中で大臣から突きつけられた突然の選択。戸惑うアレンをシュナイゼルは顔色を伺いながら様子をみた。そこに突如、シュゼットが扉を開いて慌てて入ってきた。
「ルワン王がお目覚めになりました! 王は今、テラスに居ます!」
「おお、ルワン王がお目覚めになられたか! では、我々も急ごうとしよう!」
「は、はい…――!」
「シュナイゼル殿、王宮騎士団一行が城へと到着したので今から王から話があるかと――」
シュゼットは慌てて出ていく2人にそのことを告げた。2人は謁見の間から出て行くと、王がいるテラスへと向かった。階段を上へと上がると3階を上がって直ぐに一望を見渡せるテラスがある大広間の部屋へと向かった。部屋に入ると、王はテラスから手を振っていた。歓声が上がる中、王は下に集まっている彼らに向けて声をかけた。
「王宮騎士団達よ、よくぞ無事に戻ってきた! お前達の活躍は聞いておる。今は戦での疲れをとるがよい! 敵は我が国、ローディンを侵略しようとしているのはお前達もすでに知っているはずだ! 東のサンドリア王国が同盟を破り、突然の進軍を始めたのは言うまでもない! 200年の同盟が破られた今、我々はそれに抵抗しなくてはこの国は敵に侵略を受けることになるだろう! 敵の狙いは不明だが、奴らをこの国から一刻でも早く追い出さなくてはならない! 敵の進軍を防ぐには我が軍とお前達、王宮騎士団達の力が必要だ! 王宮騎士団達よ気を引き締めて戦うがよい! 皆の者、剣を掲げよ! これは国の存亡を賭けた戦いである! 血を大地に捧げ、侵略しようとする者をその刃で打ち倒すのだ! 全ては愛する者を守る為に! 我がローディンに栄光あれ――!」
王は持っている剣を天へと掲げると魂の言葉を力強く唱えた。魂を揺さぶる言葉に王宮騎士団達は、王の前で己の剣を天へと掲げたのだった。そして、一同は次々に言葉を発して己を奮い立たせた。
――ローディンに栄光あれ!――
彼らの魂の揺さぶる声はその日、夕陽が満ちる空の天上へと響き渡った。
0
お気に入りに追加
66
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる