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第13章―箱庭の天使達―

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「きみに答えるつもりはない。例えそうであっても、きみには関係ないだろ?」

「つれないね。ボクたち兄弟なのに、関係ないなんて酷いな」

「四大天使でもないのにきみと僕達が兄弟だって? 違うな、きみは只の終末の天使だ。災いと不幸を呼ぶ不吉な天使。それがきみだよラグエル。きみは天使達の中でも他とは異なったイレギュラーな存在だ。その黒い羽こそが何よりの証拠じゃないか?」

 彼のおもわぬ言葉にラグエルは一瞬、顔の表情が変わった。穏やかな表情とは打って変わり、鋭い視線で彼を睨み付けた。暫く沈黙するとラグエルは落ち着きを取り戻したように顔の表情を変えてニコッと笑った。

「ウリエル、彼の独り占めはよくないな。いくら自分の弟が可愛いからってさ、ミカエルだって迷惑だと思うよ?」

 ラグエルは一言文句をつけると呆れた笑いを浮かべた。

「ミカエルに会ってどうするつもりだ? 寝首でもかくのか?」

 ウリエルは再び剣を抜くと、それを彼に向けて言い放った。

「あきれた。まだボクを信じてないの? ボクはあいつとは手を組んでいない。本当にキミは分からず屋なんだね、呆れて言葉もでないよ」

 ラグエルは言い返すと冷ややかな目で彼を見た。

「僕はこう見えても用心深いんだ。きみが何しに来たかは分からないけど、ミカエルに会わすつもりはない。どうしても彼に会いたいなら僕を倒すことだ」

 ウリエルは剣を構えると、彼の前に立ちはだかった。部屋の中に、はりつめた空気が漂うと2人はそこで沈黙しながら向かい合った。

「ボクとやる気?」

「ああ、きみが退こうとはしないからね。聞き分けが出来ないのはきみの方だ」

 2人は牽制をしながら間合いをとった。重くはりつめた様な空気は静寂に静まりかえる部屋の中で、異様な緊張感を生み出した。一触即発の雰囲気を漂わせる中、先に動いたのはウリエルだった。彼は持っている剣を大きく振り上げた。剣を横に振ると瞬く間に真空を切り裂いた。彼の鋭い剣さばきにラグエルは思わず後ろに下がって回避した。

「おっと危ない!」

 彼は後ろに下がると身軽な動きで剣をかわした。ラグエルが剣を避けるとウリエルは再び剣を振った。突然の猛撃を目の前にラグエルはただ、交わすことしかできなかった。ウリエルは殺気を放ちながら剣を猛烈に振り続けた。それこそ、目の前にいる相手に一瞬の隙を与えんばかりに彼は鬼神のように攻め立てた。

『ハァァーッ!!』

 ウリエルは剣に力を込めると、そのまま強烈な一撃を突いた。するとラグエルは咄嗟に彼の攻撃を回避して避けた。彼の突いた一撃は宮殿の長い柱にめがけて命中した。その衝撃は凄まじく、柱に大きな亀裂が入るほどだった。

『チィッ!』

 彼に剣をかわされると、ウリエルはそこで舌打ちをして目を鋭くさせた。ラグエルは翼を広げて宙を浮くと高い柱の上に着地して下を見下ろした。

「惜しい、今のは惜しかったね。今の突きこうげきは、なかなかだったよ。ちょっと一瞬ひやっとしたかな。キミのその性格は相変わらずだねウリエル――。キミは剣を持つと人が変わったように攻撃的になる癖がある。穏やかな天使はそんな乱暴なことはしないよ」

『黙れぇ! 災いを呼ぶ、終末の堕天使がッ!!』

 ウリエルは怒鳴って言い返すと剣を振って柱を斜めにスパッと切り落とした。柱が崩れ落ちると足場も崩れて、彼は高い上から下にまっ逆さまに落ちた。

「あははっ! キミが怒るなんて珍しいや、こんなのは天魔大戦以来だよ!」

 荒ぶる彼とは違い、ラグエルは楽しそうな笑い声をあげると落ちる間際に翼を広げて空中で体勢を立て直した。

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