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第7章―闇に蠢く者―
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しおりを挟むカマエルは我が子の話を聞かされると、深い悲しみに暮れた。そして、ローブを纏った者に一言告げた。
「3人の息子達の安否が気になるがお前が無事でなりよりだ。お前も私の大事な息子の一人だ。それを決してを忘れるではないぞ…――!」
父のその言葉に彼は黙って頷いたのだった。
「そうか、私が捕らわれている間にそのような事があったのか。だが、天界にはミカエル様やウリエル様やガブリエル様やラファエル様がいる。それに偉大なるアークエンジェル様や、他の天使達も……! 悪魔ごときに我々、天使が負けるはずがない!」
カマエルはそう話すと力強い眼差しで前を見つめた。彼の気持ちとは裏腹に、ローブを纏った者は父にある事を告げた。
「カミーユ様、ミカエル様のことで一つ申し上げます。天界に魔族の群れが押し寄せ、貴方様が悪魔達に捕らわれたあの日、ミカエル様は封印されし暗黒の地、モルグドアの暗黒の門へと数人の天使達を連れて向かいました。そして、そこでミカエル様は最大の宿敵サタンの不意打ちにあったのです…――!」
「なっ、何だと……!?」
その言葉にカマエルは、全身にとてつもない衝撃を受けた。
「貴様、何を戯けたことを言っている! 偉大なるミカエル様は四大天使の1人であり、天界でもっとも優れた最高位の天使とされるお方だ! そして、あの方は全ての天使を統べる天界最強の大天使であり、その大天使長のミカエル様が、忌まわしきサタンの不意打ちにあうなどとは、何て愚かな発言を述べたのだ! 例え、我が息子であってもミカエル様を愚弄するなどとは決して許されることではないぞ!」
カマエルは怒鳴り声を上げると、天使特有の怒りに満ちたのだった。その怒りは大気のように辺りを包み込み、触れるもの全てを共振させた。父の逆鱗に触れると、彼は咄嗟に許しを乞いた。
「お許し下さいカミーユ様、どうかその怒りをお鎮めください……! 貴方様の怒りはごもっともです! ですが、私はあの日この目で見たのです! ミカエル様がモルグドアの門でサタンの不意打ちによって倒れるお姿を…――!」
彼は父の逆鱗に触れるのを承知の上で、自分がその目で見た真実を告げた。
「なんてことだ! 我らの偉大なるミカエル様が、悪しきサタンの手にかけられようとは…――! そのような事はあってはならん、決してそのような……!」
カマエルは鎖に繋がれた牢屋の中で怒りと悲しみに満ちると、我を忘れたかのように嘆き悲しんだのだった。その様子は、絶望に包まれた者の深い悲しみに打ち拉がれるような様子だった。壁に貼りつけにされて杭で打たれた両方の翼は、怒りと悲しみを表すようにもがいた。その嘆きの様子は、ミカエルが彼にとって絶対なる存在である事を示すと同時に、彼の中で絶対なる存在が崩れ去った瞬間でもあった。今まで見たことがない父の深い悲しみの姿に、彼は黙ってそこで見ているしかなかった。
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