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第6章―竜騎兵―
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しおりを挟む彼は布を捲るとそれがスティングの遺体だと確認した。気がつけば床には、血の池ができていたのだった。彼は一瞬、ハルバートの方を見た。彼はテーブルに両手をついたまま、黙ってそこに立っていた。リーゼルバーグはスティングの遺体を見るなり呟いた。
「これはひどい、なんて有様だ……! 一体彼に何が起きたと言うんだ。まさかお前が殺ったのか…――?」
「ふざけんなよ! いくら薬で頭がラリっていも俺は自分の部下は殺さねぇ! 殺ったのは俺じゃねえ、あいつがスティングを殺ったんだ!」
そう言って彼が怒鳴り散らすと、リーゼルバーグは不意にジャントゥーユの方を見た。彼はニタリと怪しく不気味に笑っていた。
「くそっ、よくもスティングを……! あいつはバカだったけど、俺にとっちゃ可愛い部下だったのによ……!」
ハルバートはそう呟くと、少し落胆した表情をみせた。リーゼルバーグは彼の遺体に騎士の祈りを捧げると「やすからに眠れ」と言って布を被せた。そして、沈痛な趣でハルバートの傍に寄った。
「おい、大丈夫か…――?」
「っ、うるせぇ……!」
ハルバートは怒りに内震えると、彼が肩に置いてきた手を振り払った。突然の部下の死に動揺している様子だった。そして、2人は再び会話をすると、そこでダモクレスの岬に行くことを決めた。
「一応言っとくが俺も行くからな、最近は相棒と空を飛んでねえからよ。あいつも窮屈な小屋の中で毎日いたらストレスが溜まってるかも知れねえし、たまにはあいつを外でおもいっきり暴れさせてやらないとな。んで、散歩ついでに脱走した囚人を生け捕って来てやるぜ!」
ハルバートは彼にそう言うと、そこでおかしそうに笑った。
「――お主、そんな状態でまともに空を飛べるのか? 薬にも手を出した今のお前にまともに竜と心を交すことは出来るのか?」
彼が不意にそのことを尋ねとハルバートは黙った。
「いいか、昔とは違うんだぞ! 今のお前は…――!」
リーゼルバーグが急に声を張り上げると、黙っていた部下達は一斉に彼の方を見た。ハルバートは何かを思い詰めると僅かに拳を震わせた。
「やれやれ、これだから騎士って奴は…――」
ハルバートは一言そう言うと、リーゼルバーグに真っ向から話した。
「あんたは自分がそうだと思う道を歩めばいい。俺は自分がそうだと思う道を歩む。俺とあんたは違う、俺を見てみろよ? どこにクルセードの誇りがあるんだよ? あったとしても埃まみれで、んなもんはもうねーんだよ! クルセードの誇りならとっくの昔に捨てたんだよあの時にな…――!」
彼はそう言うとどこか寂しそうに表情を曇らせた。
「あんたは騎士としての誇りを捨ててないならそれでいいだろ、何を期待しているんだ? 過去の俺を探すのはもうやめろ!」
ハルバートは自分の思いを彼にぶつけると、テーブルの上に拳をドンと叩きつけたのだった。
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