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第6章―竜騎兵―
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しおりを挟むジャントゥーユは恐怖に怯える男を目の前に、ニタニタしながら笑っていた。彼にとって人を殺す事は簡単で容易かった。それこそ戸惑いすら感じないほどの純粋な悪に満ちていた。
「あの男は一体、何なんだよ!? まともじゃねぇぞあの看守……!」
誰かがそのことを言うと、髭を生やした男が震える声で話した。
「あれはもしかしらイカれた連中の1人かも知れない……! ここのご子息は、幼い頃から心の病に冒されていて、おかしな連中を引き連れてるって前に噂では聞いてたけど、ま、まさか、あいつらじゃねーよな…――?」
髭を生やした男がそのことを言うと、凍りついた表情で体を震わせた。ジャントゥーユに下半身を刺された若い男は床の上で激しく痙攣を起こすと、出血多量が原因で外傷性ショック死を引き起こしたのだった。そして、間もなくして床の上で息をひきとった。さっきまで絶叫して喚いていたのに、もう彼が喚くことはなかった。叫び声に耳を塞いで体を震わせていた周りも、彼が急に静かになった途端に塞いだ耳から手を離したのだった。切り裂くような彼の断末魔の叫び声はまるでこの世の声とはおもえないほどの苦しみに満ちた声だった。彼がようやく静かになると、近くにいた男が彼のもとに駆け寄って恐る恐る声をかけた。
「おっ、おい……! スティング返事をしろっ……!」
そう言って声をかけると、両手で体を揺すった。でもいくら揺すっても、彼が起きることはもう二度となかった。まるで眠っているようだった。彼の苦しみの声を聞かずに済んだと思う反面、周りは彼の死に困惑した。男は彼が死んでいることを確認すると、腰が砕けたかのようにうしろの地面に両手をついて倒れた。
「し、死んでる……! スティングの奴、死んでる! 死んでるぞっ!」
彼はスティングの死を間近で確認すると、体を震わせながら恐怖に怯えた声をあげた。男が騒ぐと部屋の奥から、いかつい体格の隊長らしき人物が現れた。
「うるさいぞお前ら! さっきからなに騒いでやがる、静かにしろ!」
男は騒々しいと言って怒鳴ると、部屋の奥から若い女を連れて現れた。彼の上半身は裸姿だった。その下は黒い長ズボンを履いていた。女は白いシーツを肌にまとっているだけで、他には何も身につけていなかった。隊長らしき男は女を無理やり連れてくると、手荒い感じで床に座らせた。女は男に手荒く扱っても抵抗すらしなかった。まるで魂が抜けた人形のように彼女の顔には表情がなかった。彼女がここで男達にどんなめにあわされていたのかは、すぐに想像がついた。
隊長らしき男は見た目は、30代くらいだった。いかつい体格に付け加え、髪は茶髪で瞳は青かった。野性的な魅力を持つ彼は、ハルバートと呼ばれていた。そして、竜騎兵の彼らを一つに纏める隊長だった。だが、輝かしかった過去の栄光は過ぎ去り今は廃人のようなロクデナシの男になった。彼を見た限り、かつて戦場で栄光と名声を欲しいままにしてきた者とは思えないほどに酷く変わり果てていた。廃人のようになってからは、酒と女と薬に溺れた。何を彼をそうさせるのか。彼は虚ろな瞳で酒と女と薬を求め続けた。もうそこには、かつての輝かしかった自分はいなかった。ただ腐った肉の塊のように彼自身が腐敗したかったのかもしれない――。
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