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第5章―死と恐怖―

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ジャントゥーユが紙切れをみつけるとギュータスはそれを確かめる為、その紙をこっちに渡せと急かすように言った。しかし、彼はそれを渡そうとはしなかった。

自分がクロビスに直接渡すと言い張ると、牢屋の外に出て行った。そして、そのまま出口の方へと向かって行った。

 自分の言うことを聞かないジャントゥーユに、彼はしびれを切らすと、後ろから声をかけるなり揺さぶりをかけた。

「おい、本当にその紙はオーチスが囚人に渡した紙なのか? もしも違ったらどうするんだ。中を確認しないでクロビスに渡す気かよ」

ギュータスがそのことを言うと、ジャントゥーユは其処で立ち止まって振り返った。

「……確認?」 

「そうだ。渡す前に中身を確認しろ! 中身を確認しねーで渡してもそれがもし違う紙だったら、お前はきっとクロビスに八つ裂きにされるぜ?」

 ギュータスはそう言うと嫌味っぽく笑った。

「今日はアイツは頭がキレてるからな。不機嫌なのにそれに拍車をかけるような馬鹿な真似は、俺だったらしないぜ」

 彼がそう話すとジャントゥーユは、その必要はないと言い返した。 

「中身を確認しなくてもわかる……」 

「本当かぁ? 本当にそうなのかぁ~?」

ギュータスはさらに揺さぶりをかけた。しつこく聞いてくると、ジャントゥーユは手に持っている紙を見て自分で中身を確認しようとした。だが、彼には字が読めなかった。ギュータスはその事を知っていて更に相手を揺さぶった。

「お前、頭が馬鹿だから字が読めねーんだよな。クロビスに話は聞いたぜ。字が読めねえ癖に中身を確認しても何て書いてあるの分からないんじゃないのか? かえーそーだからよ、代わりに俺が中を確認してやるよ」 

 そう言うと『さっさとこっちによこせ!』と、相手から紙を横取りしようとした。ギュータスに馬鹿にされると彼は『絶対に渡さない』と言って部屋から出ようとした。

ジャントゥーユが頑なに渡そうとしないと、彼は奥の手に出た。相手が可愛いがっているネズミを素手で1匹捕まえると、それを握り潰すと言って脅した。

 ネズミの悲鳴にジャントゥーユは、後ろを振り返った。するとギュータスの手の中に、ネズミが1匹捕まっていた。そして、ネズミは苦しそうにジタバタと暴れていた。

 ギュータスはそんなことお構い無しに、さらに手の中で握り潰そうとした。ジャントゥーユは、大声で『やめろ!』と叫んだが、彼は残酷な顔でケラケラと笑ってやめようとはしなかった。

「ほら、さっさとその紙をこっちによこせ!! でないとお前が大事にして可愛いがってるお友達をこの場でミンチにしちまうぜ!?」

そう言うとワル顔でニヤついた。手の中に捕われているネズミはさらに悲鳴をあげて暴れた。怪力男と呼ばれるギュータスにとってはネズミを1匹握り潰すことは簡単だった。

 それこそ林檎を素手で握り潰す事なんて簡単で容易かった。彼はそんな怪力で凶暴な性格の持ち主だった。ギュータスはギラついた目をしながら再び、紙をこっちによこせと脅した。
 
ジャントゥーユは自分が可愛がっているネズミを助ける為に彼に紙を渋々渡した。紙を受け取ると、彼はそこでネズミをジャントゥーユの方へと乱暴に投げ飛ばした。

 宙に投げ飛ばされたネズミをジャントゥーユは咄嗟に受け止めると、手の中でネズミは怖がってガタガタと怯えていた。そしてもう1匹のネズミはどこかに隠れて消えた。

 ジャントゥーユは無言で相手を睨みつけたが、ギュータスは気にも止めなかった。そして、手柄は自分のモノだと言うと、さっそく紙の中を確認した。

紙にはこう書かれていた『ダモクレスの岬』と、それだけではなく。他に囚人が脱獄する為に必要な情報が書かれていた。ギュータスは、その紙を見るなり豪快に笑った。

「ついにみつけたぜ、決定的証拠を! やっぱりアイツは黒だったか!!」 

ギュータスは大きな声で言うと、紙切れを握ったまま言った。

「こうしちゃいられねぇ、早くクロビスにこの事を知らせないとな!」

 彼はニヤつきながらそう話したのだった。

「ジャントゥーユ、やっぱりテメェは馬鹿で間抜けな奴だぜ!」

 ギュータスは彼に向かって悪態を突くと、笑いながら部屋を足早に出て行った――。
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