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vs翡翠
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「夏姫起きろ。飯が冷めるぞ」
「・・ん?」
眠い目を擦り辺りを見渡すと賢士の部屋で賢士の服に埋もれて裸で寝ている自分がいた。
「なんでこんな事に?」
その呟きが聞こえたのか賢士が笑っている。
「俺が帰って来たらお前ここで巣作りしてたんだよ。布団にくるまって出て来ないしべそべそ泣いてるし」
・・全然覚えてない。
「可愛かったなあ。すごい素直でめちゃめちゃに甘えてくるし自分から足開いてここ触っ「ぎゃあああああ!!!」」
俺は賢士に飛びついて口を塞いだ。
「ふぁひふんはよ」
「もう黙って!!」
そもそもそんな状態になっちゃったのは賢士のせいだ。
賢士の運命なんかに会って不安になって・・。
「夏姫、頭の上の耳がしょんぼり垂れてんぞ」
「頭の上に耳なんかありません」
俺はベッドに戻り布団をかぶって丸くなった。
それごと賢士に抱きしめられ圧迫感にぐうと喉が鳴る。
「やめてよ」
「だってお前凄い可愛い」
俺の元気がない理由がわかってるくせに。
ムカつく。
「ちゃんと飯食えよ?じゃあ行ってくるけど今朝は見送ってくれないのか?」
うう。本当に嫌な奴だな。
俺は仕方なくシーツを体に巻きつけて、にょろりとベッドから降りた。
「晩御飯は卵おじやだから早く帰って来て」
拗ね気味にそう言うと賢士はげふんと声を詰まらせる。
「お前卵と相性悪いんだからもう卵に触るな」
「えっ?卵は料理初心者の味方で失敗なしって聞いたけど?」
「限度があるんだよ。卵の懐の深さに甘えんな」
「限度・・」
意味が分からない。
「それに今日は遅くなるから飯はいらない。
お前は冷蔵庫にラザニアがあるからレンジで温めて食べとけ。サラダも食えよ」
「どこ行くの?」
嫌な予感がして賢士の腕を掴む。
「ちょっとな」
「怪しい!」
「いや、その・・」
「運命の人でしょ!翡翠さん!」
「・・・」
「ほらやっぱり」
賢士はため息をついてそうだと言った。
「仕事だよ。お前が気にすると思って言わなかっただけだ。そんな気になるならお前も行くか?」
「いく!」
俺はそう答えて急いで身支度を整えた。
なんで行くなんて言っちゃったんだろう。
事務所に着いてその後翡翠さんが到着してから約10分。
既に俺は後悔し始めていた。
凄いのだ。
何が凄いって。
翡翠さんの圧。
説明がしにくいからと俺を追い払って賢士の隣を確保した翡翠さんはこれでもかとΩのフェロモンを振り撒き事あるごとに賢士の肩や背中に寄りかかるし説明のたびに手に触れる。
わざと俺に見せつけるように耳に唇を寄せて内緒話した後、俺の方を見てニヤリと笑うし本当にもうメンタルが削られる。
「夏姫大丈夫?」
少し離れたソファに座る俺に見かねた浩二がコーヒーとお菓子を持って来てくれた。
「子供じゃないんだからこんな物で釣られないから・・ゴディバのチョコだ!」
「季節限定のミルクだぞー」
「浩二大好き!」
あ、しまった昔の癖が。
あーあ賢士がすごい顔でこっちを見てる。
でも賢士も悪いよな。
離れろって言えばいいのに。
なんでされるがままなんだよ。
なんだか急にチョコが味気なく感じる。
そんな俺を見て浩二がごめんなと謝った。
「浩二のせいじゃないし」
「いや、俺が対応出来たらいいんだけど。翡翠気難しいからさ。ああ見えてあいつ本当に凄いんだ。特に裏社会に強くて今回もあいつじゃなきゃ勝てないから賢士も気を遣ってる」
そっか・・。
そんな風にこの人じゃなきゃダメだって思ってもらえるの羨ましいな。
俺なんていくらでも代わりがきく。
でも翡翠さんは他にいない。
しかも運命の番なんだ。
俺はチョコをちまちまと齧りながら遠目から見てもお似合いの二人を寂しい気持ちで見つめた。
「・・ん?」
眠い目を擦り辺りを見渡すと賢士の部屋で賢士の服に埋もれて裸で寝ている自分がいた。
「なんでこんな事に?」
その呟きが聞こえたのか賢士が笑っている。
「俺が帰って来たらお前ここで巣作りしてたんだよ。布団にくるまって出て来ないしべそべそ泣いてるし」
・・全然覚えてない。
「可愛かったなあ。すごい素直でめちゃめちゃに甘えてくるし自分から足開いてここ触っ「ぎゃあああああ!!!」」
俺は賢士に飛びついて口を塞いだ。
「ふぁひふんはよ」
「もう黙って!!」
そもそもそんな状態になっちゃったのは賢士のせいだ。
賢士の運命なんかに会って不安になって・・。
「夏姫、頭の上の耳がしょんぼり垂れてんぞ」
「頭の上に耳なんかありません」
俺はベッドに戻り布団をかぶって丸くなった。
それごと賢士に抱きしめられ圧迫感にぐうと喉が鳴る。
「やめてよ」
「だってお前凄い可愛い」
俺の元気がない理由がわかってるくせに。
ムカつく。
「ちゃんと飯食えよ?じゃあ行ってくるけど今朝は見送ってくれないのか?」
うう。本当に嫌な奴だな。
俺は仕方なくシーツを体に巻きつけて、にょろりとベッドから降りた。
「晩御飯は卵おじやだから早く帰って来て」
拗ね気味にそう言うと賢士はげふんと声を詰まらせる。
「お前卵と相性悪いんだからもう卵に触るな」
「えっ?卵は料理初心者の味方で失敗なしって聞いたけど?」
「限度があるんだよ。卵の懐の深さに甘えんな」
「限度・・」
意味が分からない。
「それに今日は遅くなるから飯はいらない。
お前は冷蔵庫にラザニアがあるからレンジで温めて食べとけ。サラダも食えよ」
「どこ行くの?」
嫌な予感がして賢士の腕を掴む。
「ちょっとな」
「怪しい!」
「いや、その・・」
「運命の人でしょ!翡翠さん!」
「・・・」
「ほらやっぱり」
賢士はため息をついてそうだと言った。
「仕事だよ。お前が気にすると思って言わなかっただけだ。そんな気になるならお前も行くか?」
「いく!」
俺はそう答えて急いで身支度を整えた。
なんで行くなんて言っちゃったんだろう。
事務所に着いてその後翡翠さんが到着してから約10分。
既に俺は後悔し始めていた。
凄いのだ。
何が凄いって。
翡翠さんの圧。
説明がしにくいからと俺を追い払って賢士の隣を確保した翡翠さんはこれでもかとΩのフェロモンを振り撒き事あるごとに賢士の肩や背中に寄りかかるし説明のたびに手に触れる。
わざと俺に見せつけるように耳に唇を寄せて内緒話した後、俺の方を見てニヤリと笑うし本当にもうメンタルが削られる。
「夏姫大丈夫?」
少し離れたソファに座る俺に見かねた浩二がコーヒーとお菓子を持って来てくれた。
「子供じゃないんだからこんな物で釣られないから・・ゴディバのチョコだ!」
「季節限定のミルクだぞー」
「浩二大好き!」
あ、しまった昔の癖が。
あーあ賢士がすごい顔でこっちを見てる。
でも賢士も悪いよな。
離れろって言えばいいのに。
なんでされるがままなんだよ。
なんだか急にチョコが味気なく感じる。
そんな俺を見て浩二がごめんなと謝った。
「浩二のせいじゃないし」
「いや、俺が対応出来たらいいんだけど。翡翠気難しいからさ。ああ見えてあいつ本当に凄いんだ。特に裏社会に強くて今回もあいつじゃなきゃ勝てないから賢士も気を遣ってる」
そっか・・。
そんな風にこの人じゃなきゃダメだって思ってもらえるの羨ましいな。
俺なんていくらでも代わりがきく。
でも翡翠さんは他にいない。
しかも運命の番なんだ。
俺はチョコをちまちまと齧りながら遠目から見てもお似合いの二人を寂しい気持ちで見つめた。
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