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★本編★
惨劇の記憶
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「おやめ下さい!陛下!」
僕は必死で腕の中の小さな命を抱きしめた。
産まれてからほんの1週間、まだ手放せるはずがない。
「さっさとこちらに寄越せアリス」
躊躇いなく僕に向かって歩を進めるのは僕の番にしてこの国の最高権力者、そしてこの子の父親でもある国王のルドルフだ。
「魔法使いには幼い頃からの教育が必要なのはわかっております!けれどせめて乳離れするまで待って頂けませんか!」
まだ産褥も開けていないやっと寝顔を見て子を産んだ実感を噛み締めているところなのに。だが僕のその言葉を聞いてルドルフはニヤリと笑った。
「やはり魔力はその子に受け継がれたのだな」
「!!」
同じ魔術師のはずなのにルドルフは気付いてなかったのか?!逃げきれそうにない状況で僕は子供……密かにルルテラと名付けた娘を掻き抱きじりりと後ろに下がった。狭くはない自分の部屋だが追い詰められるのは時間の問題だ。
その時
影のように空気が揺れ腰の辺りにドンと重い衝撃を受けた。そのあとを追うようにじわじわと鈍痛が広がりたまらず床にへたり込む。
ゆっくり振り向くと僕の護衛騎士だったはずの男が細身の剣を握り顔を歪ませ涙に顔を汚していた。
ああこれはダメだ。
薄れていく意識に悟る。的確に急所を貫かれたこの身体はもう長くはもたない。
「ルルテラ……」
まだスヤスヤと眠る手のひらに花の形のあざを頂いた愛しい娘。
なすすべもなく腕をもがれるように連れ去られたその後ろ姿にせめてこれから先の人生に幸あらんことを心から願い目を閉じかけた……その時。
抱き上げられた娘はそのまま乱暴に床に叩きつけられあろうことか国王、いや父親自らの手で小さな体に剣を突き立てられた。
まさに泣く暇さえ与えられず。
じわりと白い産着に広がる赤い血。そこから立ち昇る蒼いゆらぎが狂王の体に吸い込まれていく。
ああ……そうか。
この男は最初から強い魔力を持った子供を産ませる事だけが目的だったんだ。その子を殺して強大な魔力を我が物にする為に。
「あああああああ!!!!」
死にゆく目に映る悪夢が霞む。
ルドルフを愛さなければ
彼と結婚しなければ
魔術師として覚醒しなければ
オメガでなければ
ルルテラは死なずに済んだのに!!!
体から赤い閃光が迸る。魔力の全てをルルテラに譲ったはずなのに。そして僕は声にならない叫びを上げながらルドルフに向かって眩い光の矢を放った。
けれどそれらは憎い男の元に届く前に全て弾かれ消え去ってしまう。太々しい笑みを浮かべる目の前の悪魔。
僕は絶望に唇を噛み締めた。
悔しい悔しい悔しい!!!
もう一度。
もしもう一度やり直せるなら
ルドルフ
愛しい我が子を殺される前に僕がお前の息の根を止めてやる。
僕は必死で腕の中の小さな命を抱きしめた。
産まれてからほんの1週間、まだ手放せるはずがない。
「さっさとこちらに寄越せアリス」
躊躇いなく僕に向かって歩を進めるのは僕の番にしてこの国の最高権力者、そしてこの子の父親でもある国王のルドルフだ。
「魔法使いには幼い頃からの教育が必要なのはわかっております!けれどせめて乳離れするまで待って頂けませんか!」
まだ産褥も開けていないやっと寝顔を見て子を産んだ実感を噛み締めているところなのに。だが僕のその言葉を聞いてルドルフはニヤリと笑った。
「やはり魔力はその子に受け継がれたのだな」
「!!」
同じ魔術師のはずなのにルドルフは気付いてなかったのか?!逃げきれそうにない状況で僕は子供……密かにルルテラと名付けた娘を掻き抱きじりりと後ろに下がった。狭くはない自分の部屋だが追い詰められるのは時間の問題だ。
その時
影のように空気が揺れ腰の辺りにドンと重い衝撃を受けた。そのあとを追うようにじわじわと鈍痛が広がりたまらず床にへたり込む。
ゆっくり振り向くと僕の護衛騎士だったはずの男が細身の剣を握り顔を歪ませ涙に顔を汚していた。
ああこれはダメだ。
薄れていく意識に悟る。的確に急所を貫かれたこの身体はもう長くはもたない。
「ルルテラ……」
まだスヤスヤと眠る手のひらに花の形のあざを頂いた愛しい娘。
なすすべもなく腕をもがれるように連れ去られたその後ろ姿にせめてこれから先の人生に幸あらんことを心から願い目を閉じかけた……その時。
抱き上げられた娘はそのまま乱暴に床に叩きつけられあろうことか国王、いや父親自らの手で小さな体に剣を突き立てられた。
まさに泣く暇さえ与えられず。
じわりと白い産着に広がる赤い血。そこから立ち昇る蒼いゆらぎが狂王の体に吸い込まれていく。
ああ……そうか。
この男は最初から強い魔力を持った子供を産ませる事だけが目的だったんだ。その子を殺して強大な魔力を我が物にする為に。
「あああああああ!!!!」
死にゆく目に映る悪夢が霞む。
ルドルフを愛さなければ
彼と結婚しなければ
魔術師として覚醒しなければ
オメガでなければ
ルルテラは死なずに済んだのに!!!
体から赤い閃光が迸る。魔力の全てをルルテラに譲ったはずなのに。そして僕は声にならない叫びを上げながらルドルフに向かって眩い光の矢を放った。
けれどそれらは憎い男の元に届く前に全て弾かれ消え去ってしまう。太々しい笑みを浮かべる目の前の悪魔。
僕は絶望に唇を噛み締めた。
悔しい悔しい悔しい!!!
もう一度。
もしもう一度やり直せるなら
ルドルフ
愛しい我が子を殺される前に僕がお前の息の根を止めてやる。
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