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最終章 狼の子
第509話 変形
しおりを挟む石槍を使い相手の動きを誘導して、罠に誘い込んでから電撃を叩き込んでやった。
自分で放っておきながら一瞬眩しさに目を瞑ってしまった......前回は屋外で明るかったから平気だったけど、洞窟の中ではちょっと眩し過ぎたな......次は気を付けよう。
ようやく戻った視界の先には......体の大きさを半分くらいにしたボスがいた。
これは......効いたのか?
電撃を当てた瞬間、目を逸らしていたのが悔やまれる......消し飛ばしたのか縮んだのか......どちらにせよ何発か叩き込めば倒せるかもしれない!
そう思い、再び電撃を放とうとしたのだが、それよりも一瞬早く相手が身体を変化させて辺りに撒かれていた水を吸収してしまった。
俺の電撃は狙った場所に放てる物じゃない、水と武器を併用してなんとか当てることが出来る代物で......相手が水を警戒している以上当てるのはかなり難しそうだな......。
水を吸収......何をどこまで吸収できるか分からないけどめんどくさそうな能力だ。
普通に水を飲んだだけならいいのだけど......地面とか俺の身体とかも溶かして吸収できるとなったらかなりまずい。
それにしても、身体の大きさを半減させたけど......前足や触手を生やしたみたいに元の大きさに戻ったりはしないみたいだ。
再生の限界......若しくは再生できない様なダメージだったってところだろうか?
しかし、身体の半分が吹き飛んでいるとかなら分かるのだけど......体のサイズが二回りほど小さくなっているってのが気になる。
俺が見ていなかった一瞬で再生したのか縮んだのかは分からないけど......眩しくて目を逸らしてしまったのが悔やまれるな。
まぁ、何にせよ......どうにかして電撃を叩き込めば勝てそうだな。
水を利用する方法は相手も警戒しているし......また何か方法を考えないとな。
俺は相手から目を逸らさずに地面に刺した短剣を回収、魔力を流して剣先を伸ばす。
「さて......どうしようかな。」
短剣を構えながらどう電撃を当てるか考えていると、少し離れた位置にいたボスが小刻みに震えだした。
「......何を?」
小刻みに震えながら動き出し......いや、身体の形を変えている?
面倒なことになる前に攻めた方が良さそうだ。
俺は今まで使わなかった石弾を撃ちながら相手に接近する。
少しでも邪魔になればと思ったけど......石弾は効果が無さそうだ。
石弾はボスの身体を貫通するだけで相手の行動を阻害しているような感じは全くしない。
それどころか、接近する俺に向かって触手を伸ばして接近させないようにする余裕まであるみたいだ。
って言うか、さっきまでこんなに長く触手を伸ばしてきたりしていなかったよね?
電撃によって伸ばせるようになったとか......?
もしそうだとしたら相手は強くなっている......いや、違うか。
電撃で強くなれるのだとしたら、水を無くして俺が追加で放とうとした電撃を遮るはずがない。
まぁ、触手は長くなったとけど数を減らしているので、このくらいであれば躱しながら距離を詰められる。
俺は色々な角度から襲い掛かってくる触手を避けながら、相手との距離を縮めていく。
しかし、俺がボスの元へ辿り着くよりも早く、震えていたボスの身体に変化が起こり始める。
「縮んでいってる?」
最初はグルフと同じかそれよりも大きかったボスの身体だったが、先程の俺の雷撃によって半分程度のサイズになっていた。
しかし、今はそこからさらに縮んでいき......四足歩行もやめてひょろ長い一本の柱のようになっている。
やはりスライムの様に体をある程度自在に変形させられるみたいだけど......柱になってどうする気だ?
その変化は意味がよく分からなかったけど、相手のやりたいようにさせてやる必要は何処にもない。
柱に変化したといっても触手による攻撃は止んでいないしまだ小刻みに震えている......恐らく相手はまだ変化の途中だろう。
俺は触手を避けながら今度は水弾を放つ。
この水弾自体に威力は殆ど無い。
精々バケツに入った水を思いっきり叩きつけられる程度の威力だろう。
だが、俺も相手もこの水弾が意味するところは十分理解している。
当然ボスはそれを無視することは出来ずに飛んでくる水弾に向かって触手を伸ばし、水を吸収させる。
しかし俺はボスのいる付近に向かって水弾をどんどんと撃ち出し、ボスはそれを千本ノックを受ける高校球児が如く触手で拾って吸収していく。
まぁ、動かしているのは触手だけだけど......。
それにしても、やはり水......そして電撃をかなり警戒しているようだね。
水弾の数が数なので、俺に向かって攻撃をしていた触手も自分の元に戻して水を処理している。
狙い通り、こちらは完全にフリーになった。
俺は一気に加速して柱......というか、丸太?の様になったボスを薙ぐように短剣を振る。
「っ!?」
硬質な触手に一撃を阻まれた俺は、動きを止めずに反対側の手を突き出し大量の水を生み出し辺りにばら撒く!
こいつ自身の硬さを変化させることが出来ることは分かっていたけど、今のは意表を突かれた。
先程危惧したみたいに戦闘中に自在に硬さを変化させることが出来るようになったのかもしれないな......。
硬質な触手による連撃を躱しながら俺は再び本体に攻撃を仕掛けようとしたが......どうやら間に合わなかったようだ。
俺の前には丸太から二足歩行......人型になったボスが剣を構えていた。
View of リィリ
ケイ君が雷を使ってボスを吹き飛ばした。
その瞬間は眩しくて見られなかったけど、明らかに相手はケイ君の雷を警戒しているみたいだね。
「惜しかったなー、あとちょっとで終わってそうだったのに。」
「あぁ、だが時間の問題じゃないか?弱点が分かったんだ、後はそれをどう当てるかだけだろ?」
「じゃが、相手も相当警戒しておるようじゃな。ケイの放つ雷は他の天地魔法と違って一瞬溜める時間が必要の様じゃし......下準備も色々と必要じゃ。不意をついてもう一度当てると言うのも難しいかもしれぬ。」
確かにナレアちゃんの言う通り、あれだけ警戒している相手に雷を当てるのは難しいかもしれない。
水の排除を優先して動いているみたいだし......。
でもレギにぃの言ったように光明が見えたのも確かだ。
「ケイ君だったら上手い事相手を誘導して決めてくれるんじゃないかな?」
身体の形を変化させたボスにケイ君が水を撃ちまくりながら接近していくのを見ながら私が言うと、ナレアちゃんは難しい顔をしながら頷く。
「そう、じゃな。勝つための手は見えた......後はどう詰めていくか、その道筋を考えるだけじゃな。」
そう口にしながらもナレアちゃんは難しい顔......いや、不安そうにしている。
その不安を取り除いてあげられるような言葉を掛けてあげられないことを不甲斐なく思うけど......こればっかりは言葉だけじゃ絶対に足りない。
私はナレアちゃんの手をそっと握る。
「む?どうしたのじゃ?」
少しだけ驚いたような表情をしながらこちらを見てくるナレアちゃんに、私は何も言わずに少しだけ手に力を込めながら笑いかける。
ナレアちゃんは......強張っていた表情から少しだけ力を抜き、顔色はまだ良くないけど私に軽く笑った後ケイ君の方に視線を戻した。
ほらケイ君!
大事なナレアちゃんがこんなに不安そうにしているんだよ?
早くそんな気持ち悪い感じのボスなんか倒して、ナレアちゃんを安心させてあげなさい!
それに......はやくやっつけないと、今にも飛び出しそうになっているのをギリギリのところで堪えているシャルちゃんが全部終わらせちゃうよ?
そんなことを考えながらケイ君の事を見ていると、ボスが形を変えて人型になった。
これは......ケイ君にとってはやり易くなったんじゃないかな?
ケイ君は獣や虫みたいな相手と戦うのを、あまり得意としていない気がするし。
逆に人相手だと、こちらが飲み込まれそうになるような怒涛の攻めを見せてくるんだよね。
そんな風に考えていると、ボスの振りかぶった剣がケイ君に向けて振り下ろされた。
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