狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片

文字の大きさ
上 下
449 / 528
8章 魔道国

第448話 おるとろす(狐猫)

しおりを挟む


「空間魔法は難しいのう......何とか使えるが......戦闘中は難しいのじゃ。」

「そうですねぇ......戦闘中に使えたら便利だとは思いますけど......僕は辛うじて固定で相手の攻撃を防ぐことが出来るくらいですかね。」

俺とナレアさんは二日に渡って空間魔法の練習を妖猫様の神域で行っていた。
俺は固定、歪曲、接続を何とか一通り発動させることは出来たが......接続は特に難しく、まだ目の届く範囲内でしか接続できないし、発動に非常に時間が掛かる。
接続で一気にグラニダに行くって言うのはかなり難しそうだな。
因みにナレアさんは固定を何とか発動させることは出来たけど、歪曲は未だに成功していない。

『ケイ君はもう少しなれたら接続も上手いこと使えるようになると思うよ。ナレアちゃんはー、接続はちょっと無理かなぁ。歪曲を辛うじて使える様になるって感じだと思うよ。』

「無念じゃ。接続が便利そうなのにのう。」

『僕の眷属になったら少し相性が良くなるはずだから、接続も使えるようになると思うよ?』

「む......それは少し心が惹かれる提案ではあるが......止めておくのじゃ。」

『あはは、残念。』

全然残念じゃなさそうに妖猫様が笑いながら言う。
これでナレアさん神獣様全員に誘われてない?
あれ?
応龍様には誘われてないっけ?

「ところで、眷属になると加護の相性が変わったりするのかの?」

『うん。加護よりも眷属となる方が繋がりが深いからねぇ。まぁ、特定の神獣と繋がりが深くなったからと言っても、他の神獣の加護と相性が悪くなるってことはないよ。相性って言うのはあくまでその存在に対する相性だからね。他所とのつながりで関係が変わったりはしないってところかな?』

「存在に対する相性のう......確か眷属となると生物としての格が昇華すると聞いたが......存在そのものは変わらぬという事かの?」

『うん。生物としての格が上がったとしても、その人物そのものが変わるわけじゃないからね。相性って言うのは肉体的な物じゃなく、精神的な物だからね。』

例えスケルトンから体は進化しても、リィリさんの精神はずっとリィリさんってことだよね。

『とは言え、複数の加護を得るのは人間くらいのものだけどね。魔物だと加護の影響が強すぎて、複数の加護を得るとよく分からない体になっちゃったりするし......。』

なんか恐ろしい話が出てきたぞ?

「あの......妖猫様、それはどういうことですか?」

『ん?そのままだよ。動物や魔物が複数の加護を得ると......なんか不思議な生き物に進化しちゃうんだよ。僕と天狼の加護を得ると、猫と狼の中間......だったらまだいい方で、猫と狼の二つの首が生えるとか。』

......怖いな!?
狂気の世界みたいな感じに......。
ファラが仙狐様の加護とかもらったら最強なのでは......とか考えたことがあったけど......勧めなくて良かった......そんな恐ろしいことになっていたかもしれないのか。
いや、まぁ、仙狐様が止めてくれると思うけど。

「それは......昔やってしまったのですよね?」

でなかったらその結果を知っているはずないし......。

『まぁ、昔の......魔神との戦いの頃にねー。人や眷属以外に加護を与えるのは珍しかったから、気づかなかったんだよね......まぁ、本人はあまり気にしていなかったというか......その後で眷属にしたらごく普通の姿になったけどね。』

「それって......さらにとんでもないことになった可能性もあったのでは......?」

『首が三つにならなくて良かったよー。』

あっけらかんと妖猫様は言っているけど......当時はかなり躊躇ったのではないだろうか?
流石に実験的なノリでつき進めるような話ではないだろう。

『神子様、妖猫様の名誉の為に言わせていただきたいのですが......。』

「ん?」

妖猫様の傍で静かに控えていた青猫さんが俺に話しかけてくる。

『あー、そういうのは気にしなくてもいいんだけどなー。』

しかし、妖猫様が尻尾を振りながら青猫さんの言葉を止める様に言う。
どうやら理由があって複数加護を得た相手を眷族にしたみたいだけど......妖猫様は話したく無さそうだな。

『いえ、自分の事ですから、私が話したいのです。』

『まぁ......そう言われたら止める権利はないけどさー。』

今自分の事って言っていたけど......複数の加護をもらって変な進化しちゃったのは青猫さんってことか。

『ありがとうございます......神子様、お察しかもしれませんが、先程妖猫様の話に出てきた複数の加護を得て体が変化したのも、その後に眷属にしてもらい元の種族に近い体に変わったのも、全て私の事です。』

「そうだったのですね......。」

『あの当時......少しでも力が欲しかった私は妖猫様の加護と仙狐様の加護を授かりました......結果、首が二つに増え......まぁ、なんというか不思議な気分でした。私自身の思考が二つになるというか......常に思考が二重になるというか......。』

青猫さんはその時の感覚を思い出そうとしているのか、視線を空中に漂わせつつ言う。

『普段はそこまで問題はなかったのですが、戦闘中や咄嗟の判断の時に乱れるのですよね。それに、出来れば左右の頭で別の魔法を使う......みたいな風にしたかったのですが......どちらの頭も同じことを同じタイミングで考えるというか......役割分担は無理でした。』

頭が二つあったとしても思考出来るのは一人分だけだったということか......。
その癖微妙に思考が二重になって体をスムーズに動かせない......完全にデメリットだけの体だったってことか......。 

『そのまま魔神の眷属と戦っていたのですが......やはり動きづらく、不覚を取ってしまいました。その時、偶々同じ場所で戦っていた妖猫様が眷属とすることで救ってくださいました。』

「眷属となった時の進化によって命を取り留めたということですか。」

『そんな感じだったっけー?懐かしいねー。』

妖猫様がゴロゴロしながら青猫さんに言う。
青猫さんはそんな妖猫様の事を優しい目で見ながら話を続ける。

『結果的に進化することで以前の姿に近い進化を遂げ、戦闘にも不自由することは無くなりました。空間魔法の適正も上がったのでいいことづくめでしたね。』

相当な苦労をしているというのに、そんな風に言えるのは凄いと思うけど......。

『そういう事ですので、妖猫様は死にゆく私を救うために眷属としたのであって、実験の為に複数の加護を得た者を眷属としたのではありません。』

「なるほど......僕も妖猫様が実験の為にそういうことをしたとは思っていませんでしたが、そう言った理由があったのですね。」

妖猫様らしいというか......神獣様達らしい理由な気がする。
そういえば......青猫さんが青くないのにそんな名前なのは元々の種族名なのかもしれないな。

『まぁ、青猫の話は置いておいてさー、魔法の練習はいいのかな?』

「そうですね、頑張って使いこなせるようにならないと。」

『ところで、ケイ君は天狼の所の召喚物の封印を解くつもりなんだよね?』

「あ、はい。そのつもりです。」

『だったらかなり頑張って練習しないとねー。僕の空間魔法を解くのは結構大変だよ?』

「......分かりました。あの、妖猫様......母さんの所にある封印について、後で相談させてもらいたいのですがいいでしょうか?」

『ん?勿論良いけど......封印の解き方のコツって言うのは特にないよ?』

「あ、はい。そちらは努力して解除出来るようになりたいと思います。そうではなく封印自体について聞きたいことがありまして。」

『ふーん?まぁ、特に隠さなきゃいけないことがあるわけじゃないし、何でも聞いてよ。』

「ありがとうございます。もう少し練習して感覚を掴めたら聞かせて下さい。」

『了解だよー。』

妖猫様は相変わらずゴロゴロしながら軽い様子で言ってくる。
なんというか......妖猫様は母さんを除けば、一番気楽な感じでやり取りが出来るなぁ。

しおりを挟む
感想 60

あなたにおすすめの小説

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

修学旅行に行くはずが異世界に着いた。〜三種のお買い物スキルで仲間と共に〜

長船凪
ファンタジー
修学旅行へ行く為に荷物を持って、バスの来る学校のグラウンドへ向かう途中、三人の高校生はコンビニに寄った。 コンビニから出た先は、見知らぬ場所、森の中だった。 ここから生き残る為、サバイバルと旅が始まる。 実際の所、そこは異世界だった。 勇者召喚の余波を受けて、異世界へ転移してしまった彼等は、お買い物スキルを得た。 奏が食品。コウタが金物。紗耶香が化粧品。という、三人種類の違うショップスキルを得た。 特殊なお買い物スキルを使い商品を仕入れ、料理を作り、現地の人達と交流し、商人や狩りなどをしながら、少しずつ、異世界に順応しつつ生きていく、三人の物語。 実は時間差クラス転移で、他のクラスメイトも勇者召喚により、異世界に転移していた。 主人公 高校2年     高遠 奏    呼び名 カナデっち。奏。 クラスメイトのギャル   水木 紗耶香  呼び名 サヤ。 紗耶香ちゃん。水木さん。  主人公の幼馴染      片桐 浩太   呼び名 コウタ コータ君 (なろうでも別名義で公開) タイトル微妙に変更しました。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

処理中です...