347 / 528
7章 西への旅路
第346話 一戦目
しおりを挟む確か応龍様は、そんなに好戦的な眷属がいないから誰が手を上げるか分からないって言っていたけど......。
今俺の目の前で参戦の意を示した応龍様の眷属は......今この場にいる眷属の半数以上......。
眷属の方達も刺激に飢えているってことだろうか。
あまりの大盛況に、眷属の方達を集めて戦ってみるかと聞いた応龍様も若干面を喰らっているような感じだ。
『少し多いな。そちらは何名が戦うのだろうか?』
「四名ですが、その内二名は個人ではなく組んで戦わせていただきたいです。」
『分かった。その二名と言うのは加護を持たぬ者達か?』
「そうです。」
今回の模擬戦に参加するのは、俺、ナレアさん、レギさん、リィリさんだ。
その内レギさんとリィリさんは二人で組んで戦いたいとのことなので、戦闘回数としては三回だ。
流石に仙狐様の時みたいに何戦もやるってことはない......と思うけど......眷属の人達の興奮を見るに何周か戦わないといけないかもしれないな......。
『よし、では三名を選出するが......そうだな......。』
応龍様が三名を選び、出てくるように言う。
まぁ、当然分かってはいたけど......皆さんドラゴンですね......はっきりいって、物凄く強そう。
『なるべくいい勝負になりそうなものを選んだが、そちらの実力は正確には把握していないのでな。魔力量や身のこなしからの推測だ。大きく外していたらすまんな。』
「いえ。楽しみです。」
いや、正直に言えば楽しみよりも不安的な意味でドキドキが止まらない。
シャルに相手の強さがどのくらいなのか聞きたい気もするけど......今回も模擬戦だ。
事前情報無しで自分よりも強い相手と戦う方が、良い経験になるだろう。
......とは思うのだけど......強い相手は正直非常に怖い......のは俺だけみたいだね。
ナレアさんは非常にワクワクしているって雰囲気だし、リィリさんはいつも通りだ。
レギさんは真剣な面持ちだけど......緊張したりビビったりはしていないね......。
きっと俺はどれだけこの世界に慣れたとしても、戦闘前のドキドキは無くならないのだろうな......始まっちゃえば結構なんとかなるのだけど......。
まぁ、戦い始めたらビビってる暇ないもんな。
「こちらはいつでもよいが、誰からやるのじゃ?」
「そうだな......ケイやナレアは先に相手の戦い方というか、魔法を見てみたいだろ?」
ナレアさんの問いにレギさんが答える。
つまり先に戦って相手の魔法を見せてくれるってことだと思うけど。
「そうですね......でもいいのですか?」
レギさんだって相手の情報を得てから戦う方が対策は取りやすい筈だ。
「魔物......って言うは違うのだろうが......初見の相手と戦うのはいい経験になるからな。ケイにとってもそうだろうが、譲ってもらってもいいか?」
そういってニカっと笑うレギさんだが......かっこいいなぁ。
「じゃぁ、初戦はお願いします。その......気を付けてください。」
「おう。」
「リィリさんも、よろしくお願いします。」
「うん、任せといて。ナレアちゃんもしっかり見といてね。」
「うむ、楽しませてもらうのじゃ。」
うーん、この二人は本当にいつも通りだな。
プレッシャーとかはないのだろうか......。
とりあえず、頼もしい二人が先陣を切ることを応龍様に伝えよう。
おそらくそれぞれの相手を決めた状態で指名したのだろうからね。
「応龍様。初戦はこの二人がやらせていただきます。」
『わかった。ではお前が出なさい。』
応龍様が赤いドラゴンに向けて出るように言う。
レギさん達の相手はあの眷属のようだ。
仙狐様の所のように舞台があるわけじゃないけど、見物をしている応龍様の眷属の方々が車座になっているので、その中心で戦えという事だろう。
相手の体が大きい分、仙狐様の所にあった舞台よりもかなり広く場所を取っている。
まさかあの巨体でシャルや霧狐さんみたいに高速移動はしないだろうけど......もしそんな動きをしてきたら体当たりだけで勝負はつきだよね。
後、懸念としては......あの赤いドラゴンが空を飛んだ場合、レギさん達には有効な攻撃手段が殆どないことだろう。
能力的に言えばレギさん達が圧倒的に不利だと思うけど......俺やナレアさんの渡している魔道具が、どのくらい相手に通じるかにかかっているかもしれない。
レギさんとナレアさんが並んで円の中心に進む。
相手は中心から少し離れた位置で動かないようなので少し距離がある。
普段であれば強化魔法の効果もあり、一息で距離を詰めることが出来るけど......今はレギさんの頼みで強化魔法を切ってある。
強化魔法を込めた魔道具と、デリータさんに開発してもらった魔道具を複製して渡してあるので、レギさんも問題なく自分に強化魔法を掛けられるけど......俺が直接かける物よりは効果が低めだ。
強化魔法の魔道具も作り直した方が良いかもな......。
『では、始め!』
相変わらず俺が考え事をしている間に事が進んでしまっているな......応龍様の掛け声と共にレギさん達の試合が始まる。
開始の合図と同時にレギさんが魔道具を発動して自分に強化魔法を掛ける。
そしてレギさんの体の影からリィリさんが飛び出し相手の左手側へ、少し遅れてレギさんが相手の右手側に回り込むように動いていく。
強化魔法無しの状態なら力も早さもリィリさんの方が上。
ただ、リィリさんの武器は細身の双剣だから大型のドラゴンにはあまり効果的なダメージは与えられないだろう。
しかし魔道具により身体強化を施したレギさんは、早さではリィリさんに劣るものの力は若干上、さらに武器が両手持ちの斧なので大型を相手取るにはいい武器だ。
何より、レギさんとリィリさんの連携は息がぴったりで、俺が強化魔法を全開にしても捌ききれずに押し切られてしまうのだ。
多少の身体能力の差なんか、技術と連携によってあっという間にアドバンテージを無くし制圧してしまう。
二人からすればただ身体能力に優れるだけ、ただ体が大きいだけというのは相手の特徴の一つであって、恐れるべき点ではないのだろう。
左右に分かれて接近してくる二人を悠然と迎え撃とうとしている赤いドラゴンだが、余裕というか......油断しているように見える。
まぁ、レギさんもリィリさんも加護持ちじゃないって知っているからだろうけど......恐らくあの二人はそういう油断を見逃さない。
接近する速度を少し緩めたリィリさんを追い越し、先に自分の元に辿り着いたレギさんに向けてその大きな手を振り下ろす赤いドラゴン。
「ふっ!」
明らかに牽制と言った感じで振り下ろされた手を迎撃するように気合一閃、レギさんが掬い上げるような形で斧を振り上げた!
振り下ろされた手と振り上げられた斧が一瞬拮抗したように見えたのだが、次の瞬間その巨体が仰け反らんばかりに片手を弾き上げられて体勢を崩す赤いドラゴン。
うん、目を見開いて滅茶苦茶驚いているけど......驚いている暇はないと思いますよ?
「戦闘において油断は良くないよー。後、予想外の事が起こったからと言って頭や体を止めるのもね。」
赤いドラゴンの体を駆け上がりながら、いつもと変わらぬ口調で相手の油断を咎めるリィリさん。
リィリさんの言葉は聞こえているだろうけど、レギさんに跳ね上げられた衝撃で体勢を戻すことが出来ない赤いドラゴンは、成すがままに体を駆け上られて......最後に跳躍したリィリさんに顎を斬り上げられた。
......え!?
い、今の勢い......死んでない!?
しかし俺の心配をよそに血飛沫が上がることはなく、ドラゴンは仰向けに倒れていく。
あぁ、リィリさんの武器は訓練用の刃を潰した剣だったのか。
ドラゴンが倒れるのと同時に地面に着地したリィリさんは、腰に四本も剣を佩いていた。
恐らく相手の動きに応じて武器を変えるつもりだったのだろう。
『そこまで!』
応龍様が終了の声を上げ、初戦が終了した。
3
お気に入りに追加
1,717
あなたにおすすめの小説
老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!
菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは
「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。
同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと
アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう
最初の武器は木の棒!?
そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。
何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら
困難に立ち向かっていく。
チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!
異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。
話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい!
****** 完結まで必ず続けます *****
****** 毎日更新もします *****
他サイトへ重複投稿しています!
レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)
荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」
俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」
ハーデス 「では……」
俺 「だが断る!」
ハーデス 「むっ、今何と?」
俺 「断ると言ったんだ」
ハーデス 「なぜだ?」
俺 「……俺のレベルだ」
ハーデス 「……は?」
俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」
ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」
俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」
ハーデス 「……正気……なのか?」
俺 「もちろん」
異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。
たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
どこかで見たような異世界物語
PIAS
ファンタジー
現代日本で暮らす特に共通点を持たない者達が、突如として異世界「ティルリンティ」へと飛ばされてしまう。
飛ばされた先はダンジョン内と思しき部屋の一室。
互いの思惑も分からぬまま協力体制を取ることになった彼らは、一先ずダンジョンからの脱出を目指す。
これは、右も左も分からない異世界に飛ばされ「異邦人」となってしまった彼らの織り成す物語。
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
異世界転生!俺はここで生きていく
おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。
同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。
今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。
だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。
意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった!
魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。
俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。
それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ!
小説家になろうでも投稿しています。
メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。
宜しくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる