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5章 東の地
第270話 求婚!?
しおりを挟むカザン君に見守られながら魔道具をいくつか作成した。
最後にナレアさんに言われた様にアクセサリーに嵌め込んで......。
「はい、カザン君。こっちが疲労回復促進、こっちが緊急時の体力回復用ね。まだあと何個か作るけど、とりあえずその二つ。こっちはノーラちゃん用の空を飛ぶ魔道具、少しずつ高さと速さを変えているからカザン君の判断でノーラちゃんに渡してあげて。」
「あ、はい。ありがとうございます。」
説明をしながら完成した魔道具を渡したのだが、何故か微妙な表情で魔道具を受け取るカザン君。
あぁ、空を飛ぶって言ったから大げさな感じがして心配させちゃったのか。
「まぁ、そこまで高く飛んだりは出来ないから。精々カザン君の肩くらいまでの高さかな?」
「......なるほど。そこまで高くないのですね。」
そう答えるカザン君はどこか心あらずと言った感じで......。
グラニダを離れるってことを意識させすぎたのだろうか?
でもその辺の話は最近結構していたし......今更そこまで気落ちはしないと思うのだけど。
少し疑問に思いながらも魔道具の作成を続けていく。
本当は怪我の治療系の魔道具も作りたいのだけど......それは扱いが難しいのでやめた方が良いと言われている。
以前レギさんから言われた戦争を引き起こしかねないと言う話と同じだ。
魔力量の問題があるからカザン君かノーラちゃんじゃないと使えないものではあるのだけど、相手にはそれは分からないことだからね......。
軽い強化魔法と、治癒力向上あたりかな?
手早く魔法を発動して魔道具を作りアクセサリーに嵌め込んでいく。
丁度一つ魔道具が完成したタイミングで扉がノックされてノーラちゃんの声が聞こえる。
ノーラちゃんだったら魔道具は隠す必要は無いな。
「失礼します、兄様、ケイ兄様。」
「おはよー、カザン君、ケイ君。お邪魔するねー。」
ノーラちゃんと一緒にリィリさんが部屋に入ってくる。
相変わらず二人は一緒に居るみたいで、本当に仲がいいね。
俺は部屋に入ってきた二人に挨拶を返しながらまた一つ魔道具を完成させる。
よし、とりあえずここまでにするかな?
「はい、カザン君。とりあえずこれで最後だよ。」
「......ありがとうございます。」
俺が差し出した魔道具をカザン君が受け取る。
それを見ていたノーラちゃんが目を丸くして声を上げた。
「わー!ケイ兄様が兄様に指輪をプレゼントしたのです!」
......!?
「本当だー。そっかー愛の告白中だったのかー邪魔しちゃったねー。」
っ!!?
俺はノーラちゃん、リィリさんの顔を見る。
二人とも妙に目がキラキラとしているが、その瞳の中にいる俺の表情はぎょっとしたものだった。
俺がゆっくりとカザン君の方に顔を向けると、なんとも微妙な表情をしたカザン君が頬を指で掻いている。
もしかしてさっき魔道具を渡した後からカザン君の反応が微妙な感じになっていたのは、作った魔道具が全部指輪だったから!?
確かに男相手にプレゼントで指輪を送るって普通無いな!?
「男性に指輪を送られたのは初めてです。」
「カザン君もまた微妙な表現を......。」
いや、カザン君は分かっていてやっているのか!?
でもそれは、今この場においては自爆じゃないかな?
リィリさんだけなら俺一人を揶揄うだけで済むけど、この場にはノーラちゃんもいる。
もしこの後......。
「も、もしや......お兄様はケイ兄様と御結婚されるのですか!?」
ブっとカザン君が噴き出す。
かくいう俺も絶句しているけど......これは予想以上の反応だ。
「ノーラちゃん、ノーラちゃん。二人の邪魔をしちゃ悪いから私達は外に出てようか。」
「は、はいなのです!ごゆっくりなのです。」
「お邪魔しましたー。」
二人がそそくさと部屋から出ていく。
......しまった。
あまりの物言いにそのまま見送ってしまった。
扉が閉まる直前にノーラちゃんが母様に報告しないといけないのですって言った気がする。
「カザン君!二人を止めないと大変なことに!」
「......あっ!はい!」
慌てた俺とカザン君が急ぎドアを開けて廊下に出るが......そこには既に誰もいない。
庭に面した窓が開かれていて......ここから飛び出したのだろうか?
カザン君の執務室は二階にあり、地面までは結構な高さだけど......まぁリィリさんがノーラちゃんを抱えて跳んだとかだろうね。
「う......既にいないですね。」
「扉が閉まる直前に、ノーラちゃんがレーアさんの所に行くって言ってたと思う。」
「それはかなりまずいです。」
俺もそう思うよ......。
「急いでレーアさんの所に行く?」
「......出遅れましたからね......今行っても鉢合わせになるというか、最悪のタイミングになりそうなんですよね。」
「それは確かに言えてるね......。」
どう考えても面白おかしくレーアさんに説明されて......レーアさんがそれに乗って......かなりしんどい未来が見える気がする。
誤解だとかそんなつもりはないとか言っても全然聞いてもらえないんだよね......。
......これはこのままカザン君に任せてしまうのがいいのではないだろうか?
俺はこれから街の方で宿をとって、ナレアさんが戻ってくるのを待つというのは......。
「ケイさん、それはダメです。」
「......何のことかな?」
カザン君が逃がさないとばかりに俺の肩を掴み、強張った笑顔をこちらに向けてくる。
「今、ほとぼりが冷めるまで家から出て、街で宿を取ろうとか考えていませんでしたか?」
「ソンナコトハナイヨ?」
自分でも白々しい声だなぁとは思うけど、とりあえずカザン君の読みを否定しておく。
しかし、かなりの高精度でカザン君も俺の考えを読むようになってきたね。
やはりこの世界の人は魔法以上に不思議な能力を持っているようだ。
「そもそもケイさんが魔道具を指輪型にしたのが原因じゃないですか!せめて何か打開策くらい考えてくださいよ!」
「指輪型が一番使いやすいんじゃないかと思ったんだよ!それにレギさんだって魔道具は指輪型をつかってるじゃないか!......まてよ?ってことは、こうなった原因はレギさんにあるといってもいいんじゃないだろうか?」
「それは暴論が過ぎますよ。後、現実逃避してないで何か対策を考えないと間違いなく厄介なことになりますよ!」
カザン君が半眼になりながら言ってくる。
やはり責任転嫁はダメか。
いや、最初から期待はしていなかったけどね。
「......とりあえず、ノーラちゃんの誤解を解くところから始めたらどうかな......?リィリさんやレーアさんのいない場所だったらちゃんと聞いてくれると思うのだけど。」
「ノーラをですか?」
「うん、それでノーラちゃんの方からレーアさんに誤解だったって伝えてもらう方向で......。」
「うーん......誤解なのは母も重々承知しているでしょうから......あまり意味はないんじゃないですかね?」
そりゃそうか......こんなことを本気にされたら......非常に困る。
でも誤解だと分かっていて揶揄ってくるのもタチが悪い......。
俺とカザン君は頭を悩ませながら部屋の扉を開けて中へと戻る。
応接テーブルの上には先程作っていた......そして今回頭を悩ませる原因となった魔道具が乗っていた。
「......じゃぁ、ノーラちゃんには事前に誤解だって釈明をしておく。それでレーアさんと話をする時にこの話題が出たら、ノーラちゃん用の魔道具の話をして話題を逸らすって言うのはどうだろう?」
「ノーラに釈明しておくのは話題を逸らしやすくするためですね?」
「うん。リィリさん達がいたら絶対にノーラちゃんを巻き込んで攻めてくるからね。事前に誤解を解いておかないと話題を逸らすことも難しいと思うんだ。」
「なるほど......確かにそうですね。」
「後は......出来ればナレアさんが戻ってくる前にこの話はケリをつけないと......。」
「相手の戦力が揃う前に......ってことですね。」
俺とカザン君は来るべき未来に備えて策を講じていく。
どうすれば被害を最小限に抑えることが出来るのか。
まだ見ぬ未来に怯える俺達は、とてもじゃないけど領主や神子と呼ばれる人物には見えないだろうね。
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