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4章 遺跡

第142話 では突入しようか

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「すまなかったのじゃ、ファラが作ってくれた地図があまりにも見事だったので色々と想像が膨らんでしまってな。目の前に本物の遺跡があるというのに思慮に耽ってしまったのじゃ。」

「いや、俺達もちょっと体を動かしていたからな、お互い様だ。」

ナレアさんが我に返り、どことなくボロボロになったレギさんとリィリさんが戻ってきた。
ナレアさんはともかく、レギさん達はこれから遺跡に突入するというのに随分と激しい攻防を繰り広げていたようだ。
少し離れた位置に居る騎士団の人達が驚いたような感心したような表情を浮かべているのが見える。

「それでは打合せを再開して、それから遺跡へと向かうのじゃ。ファラよ、先ほどまでの話以外に注意事項はなにかあるかの?」

『いえ、大体話しました。細かい点は地図の方に記載しております。』

「うむ。では方針じゃが、妾達は一階から調べていく。ゴーレムは全て排除していくが一階層ずつじゃ。妾達が遺跡の中に入ることによって警備状態が変わる可能性があるので、ファラは先行して二階への階段を見張っておいてくれ。増援が来たら教えて欲しいのじゃ。」

『承知いたしました。』

「一階のゴーレムは六体、巡回三の階段前に三じゃな。まずは巡回しているものを排除、階段前のゴーレムが動かぬようなら調査に移る。階段の見張りにマナスの分体を置いて、ファラとマナス本体は地下二階で変化がないか偵察を頼むのじゃ。妾達は一階を隈なく調査、先遣隊の遺品は一先ず外に運び出して騎士団に預けておくのじゃ。」

ナレアさんが方針を決め俺たちは頷く。

「恐らく予想通り何かの研究施設で間違いないと思うのじゃ。警備も厳重で遺跡の状態もかなり良い。相応の危険が予想されるのじゃ、皆警戒は最大限にしておいてくれ。何か質問はあるかの?」

「ゴーレムには弱点はないのか?」

「ゴーレムは体がかなり固い、ケイやリィリの武器では細い部分や関節を狙わないと有効な損傷を与えるのは難しいじゃろう。一撃で行動不能にするなら体に埋め込まれている魔道具を狙うのが一番じゃ。破壊は難しいと思うが、体から離せば動けなくなる。」

「狙うなら魔道具ってことだな......なら俺が正面を押さえる間に側面から頼む。」

ナレアさんの説明を聞いてレギさんが戦闘方針を決める。

「ダンジョンの、ボスの時のやり方ですね......それなりに広い場所じゃないと厳しいと思いますが。」

「通路では無理じゃな......部屋の中でもそこまで広い場所は一階には無さそうじゃ。階段前は広いがゴーレムが警備している所じゃからおびき寄せるには向いて無いのう。」

「巡回しているゴーレムに関してはこの位置で戦ってはどうでしょうか?」

そう言って俺は地図の一点を指す。

「ふむ、出口に陣取ればこちらは通路を使って三方から攻撃を仕掛けられるな。その一方で相手は一匹ずつしか出てこられないというわけじゃな。」

俺が示したのは巡回ルート上にある部屋の出入り口の一つだ。
比較的広い通路だからゴーレムが出てくる所に待ち構えればこちらが有利に戦える。

「そうだな、その場所がいいだろう。それで相手の強さも計れるだろうしな。」

「ならば、まずはそこを目指すのじゃ。皆、十分注意するのじゃ。」

ナレアさんの声に従い遺跡探索が始まる。
魔法系の魔道具が見つかると嬉しいけど......ゴーレムがいるってことは比較的新しい遺跡みたいだから望み薄かな?
まぁそれはともかく、犠牲もかなり出ている遺跡だ。
油断せずに行こう。
ナレアさんを先頭に俺たちは初めての遺跡へと突入した。



ファラの書いてくれた地図によると、遺跡の一階部分はそこまで広くない。
俺達はあらかじめ決めていた巡回しているゴーレムの迎撃地点を目指して移動している。
遺跡に足を踏み込むと同時に遺跡内の照明が点灯したので視界は良好だ。
人の出入りを感知して自動で照明を点けるか......日本の住宅みたいな感じだな......。
夜、人の家の前を通ると突然明かりがついてびっくりするんだよな......。
それにしても作られてから二千年以上も経っている動作しているのはすごいね......家電はそんなに持たないからこっちの方が便利かもしれない。
まぁ二千年も持たなくていいけど......。

「よし、ここじゃな。レギ殿正面を頼む。」

「おう。」

しょうもない事を考えている内に迎撃地点に到着した。
勿論油断はしていない、ちゃんと警戒はしつつ余計な事を考えていた......はずだ。

「......どんな性能なのか楽しみなのじゃ。」

ボソっと呟いたナレアさんの表情はお気に入りのおもちゃを見つけた子供のように目を輝かせていた。
そしてナレアさんの歓喜に答えるようにゴーレムが姿を現した。



「これは予想以上の力だな!」

部屋の出口から姿を現した重装のゴーレムが正面に立ちふさがるレギさんを狙い攻撃を仕掛ける。
その重い一撃を受け止めたレギさんが声を上げた。
そのままレギさんは自ら攻撃を仕掛けることをせず、相手の動きを止めることに注力している。
攻撃を仕掛けるのは相手の側面に布陣している俺とリィリさんの役目だ。

「これすっごく硬いよ!」

レギさんを攻撃するために伸ばしたゴーレムの腕を愛用の双剣で攻撃したリィリさんから悲鳴のような声が上がるが......俺も同感だ。
ナレアさんのアドバイス通りに関節を狙ったのだがあっさりと弾かれてしまった。

「ケイ!すまん!強化魔法を少し強めにくれ!」

初めてレギさんから強化魔法の追加オーダーが来た。
今のレギさんの強化魔法は効果を少なめにしてあるが、それでも未強化に比べればかなりの差がある。

「了解です!強化直後は動きに気を付けてください!」

俺はレギさんの強化魔法を掛けなおすと同時に自分にも普段より強めに強化を掛け直す。
先程よりも余裕をもってゴーレムの攻撃を受け止めたレギさんがそのまま腕を跳ね上げる。
胴の部分ががら空きだけど......そこを斬る自信はない。
レギさんに跳ね上げられた腕を振り下ろし攻撃を仕掛けるゴーレムの腕関節を狙ってナイフで斬り上げる。
当然魔力は通して既に刃先は伸ばしてある。
ゴーレムの腕とナイフが交差した瞬間、かなりの負荷が腕にかかったが先ほどかけた強化魔法のお蔭で打ち負けることなくナイフを振りぬくことが出来た。
なんとかゴーレムの右腕を破壊することが出来たが、切り飛ばしたというより関節を砕いた感じになってしまった。

「これは......武器の方が先に参りそうですね......!」

幸い俺の武器は壊れる様子は見られないが、レギさんやリィリさんの武器は業物とはいえ普通の武器だ。
このまま戦闘を続けると先に武器の方が壊れてしまうだろう。

「リィリ交代じゃ!妾が前に出る!」

ゴーレムの左側ではリィリさんとナレアさんがポジションを代わるようだ。
遺跡の中で落とし穴作戦は使えないが......体勢を崩す程度ならいけるか?
ナレアさんの武器は魔道具に魔法......それと体術だ。
体術はゴーレムにはあまり効果的ではないと思うが......ナレアさんは普段どうやってゴーレムと戦っているんだ?

「ケイ!胸の装甲部分を剥がすのじゃ!おそらくそこに魔道具がある!」

「了解です!」

相手に近づくことでゴーレムの作りが把握できたのかナレアさんから指示が飛ぶ。
腰にナイフ戻して両手を自由にした俺は少し高い位置にあるゴーレムの胸部分に飛びかかる。
こちら側の腕は俺が破壊しているので簡単にとりつくことが出来た。
反対側の腕はナレアさんとレギさんが押しとどめてくれている。
強化魔法をかなり強めに腕に掛け、隙間に指を突き刺して一気に引きはがす!
装甲の下には三個の魔晶石がはめ込まれているのが見える。

「これ全部剥がしていいですか!?」

「すまん!初めて見る魔道具じゃ!一度離れてくれ!」

俺はすぐにゴーレムから飛びのく。
とことん想定外だね!

「レギ殿、すまぬ!少し時間を稼げるかの!?」

「あぁ!問題ねぇ!」

「頼むのじゃ!解析は流石に無理じゃが......!」

「ナレアちゃん少し下がって!私が前に出る!」

ナレアさんと入れ替わりリィリさんが相手の側面に立つ。
ナレアさんは少し離れた位置でゴーレムの観察を続ける。
しかし、リィリさんが前に出ると同時にゴーレムが後ろに下がった。

「なんじゃと!?」

下がったゴーレムと入れ替わるように軽装のゴーレムが部屋から出てくる。
ナレアさんが驚いたところを見るとゴーレムがそんな動きをするのは珍しいみたいだね......本当に厄介だね......!

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