80 / 528
3章 龍王国
第79話 魔道具屋にて
しおりを挟む「なるほど......どうやらあなたの師匠は随分と型破りな方のようですね。鍛えるつもりがないとも取れますが。」
一通りの説明をした後、オグレオさんはこう切り出してきた。
「そうなのですか?」
「普通は魔術士として育成するなら、基本の術式や基本的な魔道具の作り方をしっかりと叩きこんだ上で転写用の魔道具を渡します。そうでないと危険ですからね。魔術式が正しく動作しなければ起動した瞬間に大変なことになる事もありますから。」
やっぱり変な魔術式だと発動しないだけじゃ済まなさそうだ。
良かった、試さなくて......。
「その事を教えてなかったのは痛い目を合わせたかったのか、それとも教えるまでもなくあなたなら気付くと思われていたのか......。」
デリータさんなら......どっちもあり得るかな......。
「まぁ人の教育方針に口を出すのはやめておきましょう。現にあなたは自分で考えここに来ているのだから、あなたの師匠は間違っていないという事でしょうしね。」
色々とお世話になっているとは思うけど、世間的には俺とデリータさんは師弟関係ってことなのだろうか?
魔術師の方々の認識ではそうなんだろうな、多分。
デリータさんはそんなこと言っていなかったけど。
「さて転写した魔術式を読み取る魔道具でしたな。勿論、ありますよ。魔術式の比較が出来るのですが一つは完成形の魔道具が必要なタイプ。もう一つは比較したい魔術式を羊皮紙の状態で用意しておくタイプです。ただ、あなたの場合は完成形の魔道具と比較するタイプの方がいいでしょうね。羊皮紙タイプは一度使うと転写の時と同様に羊皮紙が燃え尽きてしまいますので。」
「なるほど......その魔道具は購入することは可能ですか?」
「申し訳ありませんが、当店にはおいていません。魔術師しか必要としない魔道具ですし、普通は自前でもっているものですからね......。」
なるほど......確かに商売する上で必須だよな......業務用魔道具って感じか。
デリータさんは使っていなかったようだけど......。
「手に入れるにはどうしたらいいでしょうか?」
「魔術師ギルドで購入するしかないですが、私が紹介状を書きましょう。魔術師ギルドは閉鎖的なので紹介状を持たずにいくとほぼ間違いなく門前払いされてしまいます。」
「よろしいのですか?今お会いしたばかりなのに。」
「構いませんよ、ナレア様のお知り合いのお方ですし。ケイ様が何か問題を起こした時はナレア様に文句を言いますので。」
「ほほ、ケイならば問題なかろう。こやつ、そこそこ有名人じゃしな。何かやらかしたとしてもそこまで苦労せずに見つけられよう。」
信用されているのかされていないのか......いや、ナレアさんとは二回あっただけだ。
それだけにしてはかなり信用してくれているってことだろう。
「ケイ様は有名なのですか?」
「うむ。こやつ、下級冒険者の癖にたった二人でダンジョンを攻略しおった大馬鹿者の片割れよ。狂気の沙汰じゃな。」
「ダンジョンの攻略を二人で!?」
「真似をするような愚か者が出ないことを祈るばかりじゃの。」
酷い言われようだ......。
「そこまで無茶なことはしてないつもりですが......。」
「馬鹿者。そんなに簡単にダンジョンが攻略出来るのなら、国が躍起になって冒険者を集めるわけがなかろう。浅い階層に偶々ボスがいたと言っておったが、そもそも浅かろうが深かろうがダンジョンに二人で乗り込む時点でどうかしておるわ。ましてやボスを倒すなど......下手に出会ってしまえば死を覚悟せねばならぬような相手じゃぞ?それをあっけらかんとしおって......。」
む......なんか派手にミスったかな?
レギさんからボス退治がそこまでの大事って聞かされてなかったけど......。
後で確認しておいた方がいいな......。
レギさんとリィリさんの二人で殆ど苦戦することなく倒してたから普通の魔物よりちょっと強いくらいかと......。
「まぁボスとメインで戦ったのは僕ではありませんし。僕は戦闘の序盤だけ参加して、後はサポートに徹していましたから。」
「まぁ見るからに前衛はもう一人の男が担っていそうではあったがのう......だがそういう問題では......。」
「とはいえ、お一人で遺跡に行くような冒険者も正気の沙汰ではありませんね。」
「むぐ......。」
まさかのオグレオさんの裏切りにナレアさんが言葉に詰まる。
「私からしたらどっちもどっちと言ったところですよ。お二人とも命を大事になさってください。」
「はい、気を付けます。」
「う、うむ。覚えておこう。」
「では私は裏で紹介状を準備してきますので少しこちらでお待ちください。」
「ありがとうございます、宜しくお願いします。」
オグレオさんは微笑みながら頷くとドアの向こうに消えていった。
「オグレオの奴め......説教中に横から殴ってくるとは威厳も何もあったものではないではないか......。」
なんかナレアさんがオグレオさんへの文句をぶつくさ言っている。
まぁ人に注意している最中に似たようなことを横から注意されたらバツが悪いよね......。
ここは一つ話題を変える方向で......。
「ナレアさんはこの後、何か予定はありますか?」
「なんじゃ?ナンパか?」
「いえ、違いますけど。」
「違うのか?」
「違います。この後もし良かったら一緒に食事でもどうかなと思いまして。」
「なんじゃ。ナンパか。」
「違いますよ。」
「違わんじゃろ。」
「......すみません、言い方が悪かったです。えっと、僕の仲間とこの後合流してご飯を食べるのですが、一緒にどうですか?」
「なんじゃ、ナンパじゃないのか。つまらんのう。」
ナレアさん......ナンパされたかったのかな?
いや、そんな感じじゃない......こちらの反応を楽しんでいるだけのような感じだな。
「じゃが、お主の仲間には興味があるのう。お言葉に甘えさせてもらおうと思うがいいかの?」
「えぇ、もちろんです。」
「では、邪魔させてもらうとするか。しかし、ふむ。何か手土産くらいは用意したいものだが......この後すぐという話ではないのじゃろ?」
「えぇ、晩御飯までは各々自由時間です。まだ結構時間がありますね。」
日暮れまで後六時間はあるだろう。
昼食も先ほど食べたばかりだしもう少し遅くても俺は構わないけど......リィリさんは許してくれないだろうな......。
「であれば、紹介状を貰ったら少し街を歩かぬか?手土産を見繕いたいのでな。お主らは酒はいける口かの?」
「えぇ、大丈夫ですよ。僕はそこまで吞みませんが、他の人達は結構呑みますよ。」
「おや?あの大柄な男だけではないのかの?」
「あ、はい。もう一人女性が一人います。」
「ほほ、攻略後に新たに迎えたのかの?手が早いのう。」
「そういうわけではありませんが、レギさん......一緒にダンジョンを攻略した人の昔なじみの方ですよ。」
「なんじゃ、そうなのか。つまらんのう。」
「ナレアさん......なんか僕の事、ナンパ野郎とか思ってませんか?」
「違うのか?」
「もうそのくだりはいいですよ......。」
ため息交じりに応えたところで奥からオグレオさんが紹介状を持って戻ってきた。
「随分と楽しそう......ケイ様はお疲れのご様子ですね。」
「あはは、いえ、そんなことは......。」
「うむ、ナンパされたのじゃ。」
「......もう、それでいいですよ。あ、オグレオさんも晩御飯一緒にどうですか?」
「お誘いいただきありがとうございます。ですが、申し訳ありません。少し片づけなければならない仕事がありますので......。」
「そうですか、分かりました。では次の機会に。」
「えぇ、その時は是非。では、こちらが魔術師ギルドへの紹介状になります。ここから一番近い魔術師ギルドは龍王国の首都にあるので少し遠いですがそちらで提出してください。購入したい魔道具の事についても書いてありますので。」
「何から何までありがとうございます。」
「いえ、頑張って勉強してください。もしオリジナルの魔術式を作ることが出来たら見せて頂けると嬉しいですね。」
「その時は是非、見てもらいたいと思います。」
「楽しみにしております。」
オグレオさんから紹介状を受け取り、懐へとしまう。
「それではオグレオ、またのう、息災でな。」
「はい、ナレア様もお体にお気をつけください。」
「ありがとうございました。」
「ケイ様もお体にお気をつけて、ナレア様の事宜しくお願いします。」
「はい、わかりました。」
俺とナレアさんは一緒に旅をしているわけじゃないけど......まぁいいよね?
「うむ、よろしく頼む。」
ナレアさんがそれ言うのはおかしいからね?
からかわれている感が残ったまま、俺とナレアさんはオグレオさんの魔道具店を後にした。
2
お気に入りに追加
1,717
あなたにおすすめの小説
老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!
菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは
「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。
同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと
アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう
最初の武器は木の棒!?
そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。
何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら
困難に立ち向かっていく。
チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!
異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。
話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい!
****** 完結まで必ず続けます *****
****** 毎日更新もします *****
他サイトへ重複投稿しています!
レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)
荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」
俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」
ハーデス 「では……」
俺 「だが断る!」
ハーデス 「むっ、今何と?」
俺 「断ると言ったんだ」
ハーデス 「なぜだ?」
俺 「……俺のレベルだ」
ハーデス 「……は?」
俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」
ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」
俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」
ハーデス 「……正気……なのか?」
俺 「もちろん」
異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。
たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
異世界転生!俺はここで生きていく
おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。
同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。
今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。
だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。
意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった!
魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。
俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。
それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ!
小説家になろうでも投稿しています。
メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。
宜しくお願いします。
外れスキル持ちの天才錬金術師 神獣に気に入られたのでレア素材探しの旅に出かけます
蒼井美紗
ファンタジー
旧題:外れスキルだと思っていた素材変質は、レア素材を量産させる神スキルでした〜錬金術師の俺、幻の治癒薬を作り出します〜
誰もが二十歳までにスキルを発現する世界で、エリクが手に入れたのは「素材変質」というスキルだった。
スキル一覧にも載っていないレアスキルに喜んだのも束の間、それはどんな素材も劣化させてしまう外れスキルだと気づく。
そのスキルによって働いていた錬金工房をクビになり、生活費を稼ぐために仕方なく冒険者になったエリクは、街の外で採取前の素材に触れたことでスキルの真価に気づいた。
「素材変質スキル」とは、採取前の素材に触れると、その素材をより良いものに変化させるというものだったのだ。
スキルの真の力に気づいたエリクは、その力によって激レア素材も手に入れられるようになり、冒険者として、さらに錬金術師としても頭角を表していく。
また、エリクのスキルを気に入った存在が仲間になり――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる