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3章 龍王国
第74話 騎士との会話(聞いているだけ)
しおりを挟む「頭をお上げくださいワイアード様。私たちは偶々通りかかった冒険者に過ぎません。目の前で魔物に襲われる人が居れば助けるのは普通の事で、そこまで畏まってお礼を言われるようなことではありません。」
こちらに向かって頭を下げているワイアードさんにレギさんが受け応えをしている。
村長さんとのやりとりも見ていたけど、実直というか真面目な人って印象を受けるな。
「その高潔なお心、我々も見習いたいものです......それで、および立てして申し訳ありませんが、村を襲撃した魔物についてお話を伺いたいのです。」
「承知しました。お話しさせていただきます。」
「それでは皆様こちらでお話しください。」
ワイアードさんとレギさんの挨拶がひと段落したところで村長さんが椅子を勧める。
ワイアードさんはとても洗練された仕草で椅子に座りこちらを見つめている。
レギさんに続いて俺とリィリさんが座るとレギさんがそれぞれの紹介をした後に話を始めた。
「村を襲っていた魔物は、スラッジリザード。数は九体まで確認しました。」
「スラッジリザード......ですか。確か非常に大きなサイズのトカゲの魔物でしたか?」
「えぇ、動きは機敏とは言えませんが、非常に厄介なガス攻撃保持しています。」
「聞いた覚えがあります。確か可燃性のガスで、非常に悪臭だとか。」
ワイアードさんは記憶を辿るように顎に手を当てながらレギさんからスラッジリザードの情報を聞き取っている。
しかし結構情報を知っている様だ、騎士は魔物の情報にも精通しているのだろうか。
「えぇ、その通りです。ワイアード様は魔物の知識が豊富なのですね。」
「ははっ、偶々ですよ。この辺りに生息する厄介そうな特徴を持つ魔物について調べたことがありまして、その時に悪臭のガスという項目が目に止まったのですよ。」
ワイアードさんが苦笑するように告白する。
「確かに、そこは気になりますね。これはアドバイスですが、興味本位であのガスには近づかないほうがいいですよ。想像を絶する臭いですし、うっかり吸い込んだら喉や胸が焼けます。目がつぶれるという話も聞いたことがあります。」
「それは恐ろしいですね......魔物の死骸はまだ村の中にありましたよね?部下に扱いを気を付けるように伝えなくては......っとしまった。副官まで作業に駆り出してしまっていますね。申し訳ありません、今の話を部下に伝えて来たいので少し失礼させていただきます。」
ワイアードさんは立ち上がり一礼をすると急ぎ足で村長さん宅を出て行った。
側にいるはずの副官も作業に出してしまっているというのはワイアードさんのうっかりなのか......副官の方のうっかりなのか......。
村長さんやレギさんを見ると少し気疲れをしているようだった。
やはり相当精神力を消耗する相手のようだ......。
特に村長さんの方はふらふらしているように見える。
まぁ、魔物の襲撃から騎士団の来訪と気の休まる時がなかっただろうしなぁ......。
「申し訳ないレギ殿、話を中断させてしまって。」
はっや......ワイアードさん戻ってくるのめちゃくちゃ早いな。
副官の方は近くにいたってことだろうけど......。
「いえ、私は大丈夫です。其方の方は?」
ワイアードさんに続いて大柄な騎士が一人家の中に入ってきた。
「彼はヘイズモット上級騎士です。私の副官でして、良ければ一緒にレギ殿のお話しを聞かせてもらえたらと思い連れてきました。」
「それは構いませんが、先ほどの件はもう大丈夫なのですか?」
「えぇ、部下への指示は既に出しておきました。非常に危険なので死骸も丁寧に扱うようにと。」
そう言いながら先ほどの席に座るワイアードさん。
ヘイズモットさんはワイアードさんの斜め後方に立っている様だ。
大柄なヘイズモットさんが立っていると威圧感がすごいな。
「とりあえずはそれで大丈夫そうですね。死骸の処理はギルドに任せるか、国のほうに専門にされている方がいるのならそちらで処理したほうがいいと思います。」
「死骸については魔物を研究している機関があるので、レギ殿たちが良ければ買い取らせてもらえますか?」
「私たちは構いませんが......よろしいのですか?。」
「是非、お願いします。ただ金額に関しては後でヘイズモットと話してもらえますか?私はちょっとそういったことが苦手なもので......。」
そういって恥ずかしそうに苦笑しながら頭を掻くワイアードさん。
「承知いたしました。ヘイズモット様、後程宜しくお願いします。」
レギさんとヘイズモットさんがお互いに軽く礼をしているのをワイアードさんは嬉しそうに見ている。
書類仕事が嫌いなタイプと苦労して補佐する副官って感じなのかな?
見た目はヘイズモットさんの方が豪快で書類仕事とか苦手そうな感じだけど......。
「それにしてもレギ殿達はとても優秀な冒険者なのですね。三人で村に点在する九体の魔物を退治するとは、中々出来ることじゃないと思いますが。」
「いえ、私たちは所詮下級冒険者ですので。私達よりも格上の冒険者はいくらでもいます。」
「そうでしょうか?私の目にはそうは見えませんが......皆さんが拠点とされている冒険者ギルドが優秀なのでしょうか?どちらを活動拠点にされているのですか?」
「私たちは都市国家を拠点としていましたが......今はフリーといいますか、色々と旅をしている最中です。」
「そうでしたか。都市国家の方から来たということはシンエセラ龍王国を目指してきたのですか?」
「そうですね、龍王国と東の方も気になっているのですが......。」
「東方ですか......旅をするにはあまりお勧め出来ません。まだ戦乱の収まる気配も見えませんので。レギ殿たちはお強いとは思いますが、人相手だと勝手も違うでしょうし......。」
ワイアードさんの表情が曇る。
「そうですか、やはり東の方は危険ですか......都市国家の方まではあまり話が流れてこなかったので、ありがとうございます。龍王国より東に行くのは少し考えようと思います。」
「いえ、お役に立てたのならば何よりです。っと、話が大分逸れてしまいましたね......話を戻しますが、現れた魔物はスラッジリザードだけでしたか?」
「そうですね。他の魔物は見かけませんでした。」
「なるほど......村長殿から聞いていたのですが、山の方から魔物が流れてきているとのことだったので他の種類の魔物がいてもおかしくないと思ったのですが......。」
何かを考えこむワイアードさん。
魔物が複数種類いないことがおかしいのだろうか?
俺が知っている魔物は同じ種類で群れていることが多いけど......グルフ達もそうだったし、ファラもビッグボアもそうだった。
レギさんも疑問に思ったのかワイアードさんに尋ねている。
「普通の魔物には縄張り等があって単一種類の魔物の群れというものが多いと思いますが、龍王国ではそうではないのですか?」
「あぁ、すみません。そういうわけではないのですが、山には多くの種類の魔物が生息しているようなので、少し気になっただけです。」
「なるほど......。」
何となくワイアードさんの方にも気になる事がある様な気がする。
今は龍王国の情報が殆どないから予測しようがないけど......。
「ヘイズモット、レギ殿に確認しておきたいことはないか?」
「もし良ければ、今回現れた魔物......スラッジリザードでしたか?それの対処法を教えて頂きたいのですが。」
「えぇ、構いませんよ。スラッジリザードはガス攻撃が危険なので距離が空いていたとしても正面に立ってはいけません。また尻尾の一撃も強力なので、基本的には側面から攻撃を仕掛ける必要があります。ガスと尻尾に気を付けていれば比較的動きは遅いので問題なく対処できると思いますが、攻撃する際に腹の部分を斬りつけると溜めているガスが漏れ出すので危険です。横から頭を潰す、これを心掛けていれば大丈夫です。」
「ありがとうございます。遭遇した際はそのように処理させていただきます。」
ヘイズモットさんが一礼した後一歩下がってワイアードさんの後ろに控える。
何となく話を逸らされたように感じるけど、その辺、今は突っ込めないよね......。
前の街で話を聞いたときは龍王国では特に問題が起きていないって話だったけど......何か起きているのか知れないな......。
早めにファラと合流して情報を聞いたほうがいいかもしれない。
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