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3章 龍王国

第68話 二つの道

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へぇ、ファラちゃんっていうんだ。あったことないなー。」

「ファラは街にいた時も忙しくしていましたからね......今度合流できたときに紹介します。ものすごく真面目で頼りになる子です。」

「なるほどー、ケイ君の所の子はみんないい子だからねぇ。楽しみだな。」

リィリさんは運ばれてきた料理に舌鼓を打ちながら楽しそうに話す。
今いる店は、リィリさんが聞き込みで見つけた料理大会に出場していた店の内の一つだ。
一応俺もファラの配下のネズミ君に教えてもらっていたが、リィリさんが合流した時には既に晩御飯のお店は決めてきたと予約までしてきていたのだ。

「一応この先の情報も仕入れてきていますが、レギさんの方はどうでした?」

「俺の方も次の村への道とかは仕入れてきているから突き合わせといくか。」

「了解です。僕が貰った情報では北門から抜けた先にある分かれ道を左に曲がったルートから行く方がいいと。」

「ほぅ、俺は分かれ道を右に曲がった先にある村から行く方が楽だと聞いたが。」

レギさんが考え込むように告げてくる。

「はい、それも聞いています。右に曲がった場合は馬車で半日ほど行ったところに村があり、その先は山裾をぐるっと回り込むように移動していくようです。道は平坦で馬車の旅ならこちらの方が楽みたいですね。逆に左の道だとそのまま北上するように進み山を越えるルートに入る様です。馬車では通りにくい上に道も森に山ですから険しい道と言えます。歩きで三日程かけると山の反対側にある村まで行けるようですが、商品を抱えた商人や農村の人たちは右の道を選ばざるをえないでしょうね......。右に進んだ場合は山の反対側にある村まで一週間程はかかるそうです。」

「なるほど......確かに俺が話を聞いた商人や冒険者なんかは右のルートで安全に進むことを推奨していたが......俺達にはシャルとグルフがいる。」

「はい、シャルやグルフであれば山越えであっても半日で山の向こう側の村まで行けるそうなので。」

「人が滅多に通らないなら街道を走ってもいいかもな、もし人がいるようなら隠れる必要はあるが。」

「はい、その手間を考えても山越えルートの方が早くて安全じゃないかと。」

「なるほどな......山越えの方が安全ってのは普通の感覚からはかけ離れているが......そっちルートの方が良さそうだな。」

「では、山越えルートでいくということで。」

「了解だ、リィリもそれでいいよな?」

「うん、もちろん。」

何となくリィリさんは食事に夢中ので打ち合わせの内容は上の空って感じがしないでもないけれど......レギさんが言及していないってことは大丈夫なんだろう。

「他に何か情報はあるか?」

「右を選らんでも左を選んでも特に問題が起こっているという話はないようです。あえて言うなら右の道の方が盗賊が出やすく、左の道の方が魔物が出やすいってところですかね?」

「まぁ森に突っ込み山越えするなら魔物の一匹や二匹くらい出るだろうな。」

「右の道だと後一か所街を経由してから龍王国に入るそうですが左の道だと次の街はもう龍王国内だそうです。」

「なるほど......ここでどちらの道を選ぶかで龍王国に入るルートも変わるって感じだな。」

「そうなります。因みにファラはどちらのルートを選んでもいいように準備をしておくとの事です。」

「......ほんとどうなっているんだ、そのファットラットは......。」

「僕も不思議です。」

「そういえば、前リィリと二人で下水に行ったとき、一匹もネズミを見なかったな......。」

「あぁ、あの街のネズミは全てファラの配下に収まっていますから......生活の質も改善されて餌の確保とかも組織的にやっているみたいですよ。」

「途轍もない話だな......何匹ぐらい配下いるんだ?」

「僕も分からないです......因みに下水にいるスライムは全部マナスの配下だそうです。」

何となくマナスが誇らしげに横に揺れている気がする。

「あの街、お前の一声で制圧出来るんじゃねぇか?」

「いやぁ、まさかそんな。あはは。」

「あの街だけじゃなくって、この街も行けるんじゃない?賢いネズミ君たちが組織立って動き出したらひとたまりもないと思うんだけど......。」

ここに来てファラの存在が大変なことになってきた......いや元々街の情報全て牛耳れてるって感じではあったけど......。

「ま、まぁそれはさておき、後は龍王国について少しだけ。基本的に穏やかな統治がされているらしく、問題らしき問題は特にないみたいですね。聖域についての情報はまだありませんが、こっちは龍王国に入ってからですかね。」

「そうだな、俺の方も詳しくは分からなかったが国は安定している様だな。東部と接しているとは思えないな。」

「東部に何かあるんですか?」

「あぁ、大陸東部は小さな国が無数にあってな......常に戦争を繰り返しているんだ。」

「......あっちの方はまだそんな感じなんだ。」

「リィリさんが知っているということは十年前からそうなんですか?」

「東の方がごちゃごちゃしているのは十年やそこらじゃきかないぜ?元々は東の大国ってのがあったんだが......ひたすら軍備拡大して他国に戦争を吹っ掛けるってのを繰り返して西に向かってどんどん侵攻を続けていたんだが、五十年程前に龍王国に阻まれてな......それから地方のあちこちで反乱がおきて大国はばらばら。その時に起きた禍根が原因で独立した国々も戦争に突入。もう今となっちゃ最初の原因がなんだとかは関係ないだろうな。」

「血で血を洗う戦乱の世ってことですか......しかし当時いけいけだった東の大国の侵攻を跳ね返した龍王国はかなりの力を持っているってことですよね?」

「その辺はよく分かってねぇんだよな。一説には戦線を拡大しすぎている癖に新たに大国に仕掛けて対応しきれなかったともいわれているし。龍王国に全軍を向けたところ後方で反乱がおきて首脳陣が軒並み殺されたとか......龍王国を侮って進軍していた所、龍の一撃で軍隊が一撃で吹き飛ばされたってのもあったな。」

「どれもありそうですけど......真相は分からずってところですか。」

「龍王国を挟んで国の反対側で起きたことだしな......しかも五十年も前の話だ。龍王国で調べたらなにかわかるかもしれないけどな。」

そこまで言うとレギさんは声を潜めて続ける。

「ケイの場合、応龍ってのに聞けばわかるんじゃねぇか?」

「そうですね......聞いても良さそうな雰囲気だったら聞いてみますか。」

「でも、まずはどうやって会うか。それが問題だよね。」

リィリさんの言葉に俺もレギさんも表情が渋くなる。

「国の上層部が関わってくるとなぁ、都市国家くらいならまだ何とかなるんだが......。」

「縁故もないですしね......。」

「ギルドを頼った所でどうなるわけでもないし......下手なところに話を持っていけば国家転覆罪とかで掴まりそうだしな......。すまねぇな、手伝いをさせてくれとついてきてこの体たらく......。」

「いえ、流石に相手が国ですから。普通はどうしようもないと思いますよ。道中色々お世話になっていますからそれで十分すぎる程ですよ。」

とは言え、何かしら手掛かりの様なものは欲しいな......。
ファラが何かいい情報をもたらしてくれるといいんだけど......流石に何でもかんでも任せるのはな......。

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