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2章 ダンジョン
第62話 これまでの話とこれからの話
しおりを挟む「ケイの目的自体は些細な事だが......スケールがデカすぎるな......。」
「そうね......まさか神獣や別の世界とかが出てくるとは思わなかった。」
レギさん達に今までの事を全て語った。
異世界から突然この世界に来た事から母さんの事、魔法、神域。
そして目的である他の神獣の事や元の世界の両親への連絡、母さんから奪われた魔力の事を。
二人は途中で口を挟むことなく、真剣に話を聞いてくれた。
でも内容が突拍子もなさ過ぎて考え込んでしまったようだ。
「あはは、流石に突拍子もなさ過ぎて信じられませんよね?」
「いや、すまねぇ。信じていないわけじゃないんだ。ただ予想をはるかに上回る内容だったもんでな......。」
「ごめんなさい。自分の身に起きたことを考えれば、私たちの想像も出来ないようなことは起こり得るってことをまた失念していたみたい。」
「だが、予想していたよりも遥かに面白そうな話じゃねぇか!ただの手紙配達かと思ったら世界中を巡っておとぎ話の神獣に会うのか......。」
「とんでもないお使いがあったものね......でも本当にレギにぃが言うように、興味深い内容だわ。」
話しているうちに考えがまとまって来たのかレギさん達が調子を取り戻していく。
というか若干テンション高めかな?
「やべぇな。恩を返すために手伝うって思いを好奇心が上回りそうだ。」
「興味を持ってもらえたのは嬉しいですけど......その、手伝っていただいてもいいんですか?」
「あぁ、もちろんだ。ケイ達に足りない、今の世界の情報。俺がフォローしてやる。」
「私は最新の情報というわけじゃないけれど、ケイ君達よりはマシかな?後、アンデッドとしての能力も色々役に立たせてみせるよ。」
俺の問いに二人はしっかりと頷いてくれた。
二人がこの話を持ち掛けてきてくれた時から感じていた喜びがじんわりと体に染み込んでくるようだ。
「ありがとうございます。お二人に手伝ってもらえるならとても心強いです。」
「じゃぁ、これから正式によろしくな。」
レギさんがコップを突き出してきて、それに合わせるようにリィリさんもコップを掲げてくる。
テーブルの上に置いていたコップを手に取り二人のコップに打ち当てる。
「改めて、宜しくお願いします。レギさん、リィリさん。」
「よろしくね、ケイ君。」
こうして俺達は正式に仲間となった......。
「さて、じゃぁこうして仲間になったんだ。これからどうするつもりだったか聞かせてもらえるか?」
「えぇ。とりあえず、いつもの街に戻ったら準備をしてから東へ旅立つつもりでした。」
「東ってことは......もしかして龍か?」
「はい、そうですけど......御存じなんですか?」
「世界に残った唯一の神獣って話だったが......あの山は龍王国シンエセラって国の領土でな......。」
「領土って言い方は龍王国内でしない方がいいと思うよ。あの山は龍王国にとっては聖域って言われているんだから。」
「聖域ですか......。」
「龍王国は神獣である龍を祀っている国で、その龍は聖域に住むと言われているの。迂闊なこと言うと国中から追われるって話よ。」
信仰があるのか......まぁ神獣って言うくらいなんだから信仰されててもおかしくはないか。
「なるほど......それは言動には注意したほうが良さそうですね。」
「まぁ龍信仰はそんな過激な感じじゃないけどな、泰然自若を是とする感じか?」
「へぇ、頼もしい感じがしますね......。」
「そうだな、俺の知ってる龍王国出身の奴も若いくせにえらい落ち着いた感じの奴だったぜ。」
「いつかお会いしてみたいですね。」
「機会があったら訪ねてみるか。龍王国にいればだが。」
現地の人に話が聞けるのは助かるな。
些細な情報でも値千金って可能性は十分にある......ファラにまた頑張ってもらおうかな......。
「龍の神獣にも何か名前があるのかしら?ケイ君のお母さんは天狼様ですよね?」
「あの山にいるのは応龍様って母さんから聞いています。母さんが言うには口うるさい爺と......。」
「それは龍王国では口にしないほうがいいな......そういえば噂では龍王国の国王は神獣から任命されるらしいぞ?」
「そこまで直接人に関わっているんですか?」
「まぁ、噂だがな。」
「なるほど......でもそこまで国に関りがあって、祀られているのだとすると会うのが難しそうですね......。」
「そうね......聖域ってだけでも簡単に近づけそうな感じがしないわよね......。」
国というか信仰の中心地によそ者は近づけないよね......。
聖域見学ツアーなんて絶対開催されて無さそうだ......。
「確かにな......天狼の使いですって言っても門前払いが関の山だろうな。下手したら捕まるか?」
「それは遠慮したいです......。」
何か聖域に近づく方法を見つけないといけない。
聖域と神域は同じ場所なのかな......?
ニュアンス的に応龍様の神域のある一帯を聖域って呼んでるようなイメージだけど......神域には結界があって普通は近づくことすら出来ないって母さんは言っていた......。
俺だったら問題なくいけるとも言われたけど。
「まぁ、その辺はここで考えていても案はでないだろうな。現地について色々調べてから考えていこうぜ。」
「......それもそうですね。」
「そういえば聖域とかって神聖な感じな場所。私って大丈夫なのかな?」
「あ、やっぱり不味いんですかね?」
「......どうかしら?アンデッドって教会とかに浄化されるイメージなんだけど......。」
「そのイメージは確かに僕もありますが......シャル、わかるかな?」
『特に問題ないと思いますが......。』
「シャルは特に問題はないって言ってますね。」
「なるほど......もっと自分の能力や弱点なんかは調べないといけないわね......。」
「龍王国までは結構遠そうですし、道中色々やってみましょう。」
「そうね。それがいいわ。ところでレギにぃ、龍王国までどのくらいかかるか分かる?」
「そうだな......俺も行ったことがないから正確なことは分からないが馬車の旅で二週間くらいって聞いたな。」
「シャルとグルフに乗せてもらえばもっと早くつけると思います。」
「荷物はどうするんだ?俺たちが乗ったら流石に荷物までは持てないだろ?」
「グルフ次第ですかね......最初、僕とシャルの二人で旅をしていた時はシャルの背中に乗せてもらって、荷物も運んでもらっていましたから......シャルよりグルフの方が一回り体は大きいので
多分頑張ってくれるかと......。」
「一応馬車で移動することも一考しておかないとな。」
馬車は体が死ぬほど痛くなるんですよね......今回迎えに来てもらった時に乗った箱馬車は椅子が柔らかくて耐えられたけど......二週間馬車の旅は耐えられそうにないな......。
「しかし、シャルの本当の姿がそんな大きさだなんてな。いや、確かに偶に子犬とは思えない風格や威圧感を感じることはあったが......。」
「あはは、街中で側にいてもらうために小さくなってもらっているんですが......本当にシャルには世話をかけっぱなしで......。」
傍らにいたシャルを膝の上に抱き上げて撫でる。
『っ!け、ケイ様をお守りするのは当然の事です!』
むず痒そうに体を捩るシャルだが尻尾がゆっくりと揺れている。
「シャルともいつか直接話をしてみたいもんだな......。」
多分念話を直接することは出来るんだろうけど......まだシャルから話かけてはいないようだね。
「シャル、これからレギさん達とは一緒にいることになるんだから出来るなら挨拶くらいしておいた方がいいと思うな。これから話す機会が増えるだろうし、緊急時にいきなり声をかけてもびっくりするだろうから。」
『承知いたしました。申し訳ありません、そこまで気が回らずに。』
そう言うとシャルがレギさん達の方に視線を向ける。
「......おぉ、これが念話ってやつか。いや、すまねぇ。これからよろしくなシャル。」
楽しそうにシャルに挨拶をするレギさんと頷くシャル。
「うん。よろしくね、シャルちゃん。念話ってこんな感じなのね、音は聞こえないのに頭に直接聞こえるというか......不思議な感じ。」
同じく嬉しそうにシャルに挨拶をするリィリさん。
さらにテーブルの上で自分をアピールするマナスによろしくと声をかける二人。
今までだってこのメンバーで一緒にいたはずなのに、いつもより賑やかになった気がするのは気のせいじゃないだろう。
「じゃぁ、今日はこんなところか。後は街に帰ってから決めるとしようや。」
レギさんがコップに残っていた酒をグイっと呷り立ち上がる。
「そうですね、これからも宜しくお願いします。」
「おう。」
「こちらこそ、よろしくね。」
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