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2章 ダンジョン

第56話 隣の街へ

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ギルドから調査団が帰還して正式にダンジョンを攻略したことが確認された。
というわけで祭りの開催が決定され、俺とレギさんは隣の街へ招待されることになった。
有無を言わせぬ感じは招待というより連行って感じだったけど......。

「レギ殿、ケイ殿そろそろ到着しますぞ。」

連行するのはこの人、隣の街のギルド職員でハーネルさん。
調査団の調査結果を俺たちのいる街まで届けてそのまま俺たちを連行するのが仕事のようだ。
ギルド職員というよりも現役冒険者と言った体格をしているが普段はギルドで書類仕事をしているらしい。
......はっちゃけるタイプのギルド長だったりしないよね?

「そういえばハーネル殿、祭りはいつからですか?」

レギさんとハーネルさんが話しているが、この二人で馬車の八割くらいは占有している気がする。
今乗っているは四頭引きで六人乗りの箱馬車、乗っているのは四人......普通に考えるならもう少しスペースに余裕があると思うんだけどな......。
ちなみに俺の横にはハーネルさん、レギさんの横にはリィリさんが乗っている。
リィリさんは表向きには攻略時のメンバーではないが俺たちの仲間として同行を許可してもらっている。
因みに膝の上にはシャル、肩にはマナスだ。
グルフとファラは今回もお留守番を頼んであるけど、いい加減悪いなぁ……。

「流石に正式に調査が終わるまでは準備を始めるわけにもいかなかったので、今大慌てで進めている所ですな。関係各所への通達は既に済ませていますが、恐らく後三週程といったところでしょうか?」

俺が馬車について思いを馳せている間にハーネルさんがレギさんの質問に答えてくれる。
なるほど......三週間も待つのは長い気もするけど、馬車で移動するわけだし早めに呼ばれるのは仕方ないのかな?

「そこそこ余裕はありそうだな......なんかすぐ終わるような初級向けの仕事でもやるか?」

レギさんが隣に座っているリィリさんに話かけている。
レギさんは中々ワーカーホリックですね......。
街にいる間も毎日のように何かしらの仕事をやっているような気がする。

「そうね......とりあえず、早い所下級冒険者にはなっておきたいしいくつか受けようかしら。」

うん、リィリさんもその気があるね......。

「ふむ、それは助かりますな。祭りの主役である攻略者殿に仕事をして頂くのは恐縮ではありますが、祭りの準備で初級向けの仕事も増えいますからなぁ。ケイ殿はどうなさりますか?」

ハーネルさんが俺に聞いてくるが、正直何も考えてなかったな......。

「そうですね......実はこの前も補給に少し寄っただけで街の事を全然知らないんですよね。だからしばらくは街を見て回ろうかと思ってます。どこか名所のようなところってありますか?」

「名所、ですか......ふむ、うちの街は観光に力を入れているわけではありませんからなぁ......
食べ歩きとかどうですかな?おいしい店をいくつか紹介しますぞ。」

「それは嬉しいですね。是非お願いします。」

後はレギさん達の依頼で手伝えることがあったらって感じかな?
以前はほぼ素通りしているから適当に見て回るのも面白いかもしれない、本番まではそこそこ時間があるみたいだしね。
そんな感じでのんびりと会話をしながら俺たちは馬車に揺られていた。



冒険者ギルドについてすぐギルド長と面会することになったが相手はハーネルさんではなかった。
まぁ普通お偉方がほいほい他所の街まで来ないよね。
ギルド長との面会は祭りの時の段取りを聞き、また祭りの直前に打合せをしたいので詳しくはその時にと言った感じで終わった。
殆ど顔見せ程度でしたね。
祭りまでの間の宿はギルドが用意してくれている。
先にその宿に行こうかと思っていたのだが、レギさんとリィリさんは早速仕事を受けるとの事だった。
手伝いを申し出たのだけど、初級冒険者向けの仕事で手伝ってもらうほどのものがないってことだったので今は別行動をすることになった。
ということで今はシャルとマナスを肩に乗せ街中を散策中。
ハーネルさんにおいしいご飯処を教えてもらっているが、結構がっつり系が多くて食べ歩くというのには向いて無さそうだった......。
まぁあの人の体格なら出来るのかもしれないけれど、俺には無理だ。
とりあえず夕方頃に宿でレギさん達と待ち合わせをしているのでそれから一緒に食べに行くことになっている。

「お祭りが控えてるからかな?活気が凄いあるし、人通りもいつもの街より多い感じがするね。」

『そうですね、非常に賑やかです......あれは屋台を設営しているのでしょうか?』

シャルの目線の先に木材を使って何かを組み立てている人たちがいる。
道沿いにかなりの人手で組み立てているようでシャルの言う通り屋台だと思う。

「確かに屋台っぽいね。お祭りだからね、食べ歩きしやすそうなものが出されるんじゃないかな?色々楽しむのは屋台が出来るまでお預けかな。」

「お?なんだ?にーさん屋台が気になるのかい?」

設営中の屋台に近づくと作業をしていた人に声を掛けられる。

「あぁ、邪魔しちゃってすみません。」

「ははっ!別に気にするこっちゃねぇよ!屋台の組み立てが気になっているわけじゃないだろ?南門の方に行けばもう営業してる屋台が出ているから行ってみたらどうだい?」

屋台を組み立てていたおじさんがこちらの考えを見透かし、親切にも既に営業している屋台の場所を教えてくれる。

「ありがとうございます!行ってみます、設営頑張ってください!」

「おう、ありがとよ!」

折角教えてもらったんだから行ってみるとしよう。
俺は南門へ足を向ける。

「お祭りの時の屋台ってどんなのがあるんだろうね?」

『私もこういったことは初めてですので......楽しみですね。』

マナスも肩で小さく弾む。

「お祭りの屋台か......たこ焼きとかかき氷とかはないよなぁ。わたあめくらいならあるかな?」

『わたあめですか?どのようなものなのですか?』

「んー、見た目は雲みたいな感じなんだけど、溶かした砂糖を糸状にしたものを棒で絡めとって作るんだ。見た目のふわふわ感と違って食べると結構べたべたするんだよね......。」

『不思議な食べ物ですね、一度見てみたいものです。』

「あるといいねぇ。」

わたあめか......ザラメを溶かして空き缶的なやつに穴をあけて回転させればつくれるんだっけ?
なんか理科の実験で作ったことがあったような......全然ふわふわ感なかった記憶が......。
そういえば砂糖って高いのかな?
あまり甘味って見たことない気がする。
そんなことを考えながら南門の方へ歩いていると、もともと通りに多くの人がいたけれどより一層密度を増してきた気がする。

「こんな多くの人はこっちにきて初めて見たな......スリとかに気を付けないといけないね......。」

『はい、どうもよからぬ輩が結構潜んでいるようです。もし、ケイ様に近づくようでしたら排除してもよろしいでしょうか?』

「うーん、流石に近づかれただけで排除するのは不味いかな......。」

こういうお祭りとかにそういう輩はつきものって言うけど......被害にあった方は折角のお祭り気分が台無しになるし、お祭りのたびに思い出してヤな気分になるかもしれない......ロクでもないと思うけど......どうもこの世界だとそれで生計を立ててる子供とかもいるみたいなんだよね......。
いい事だとは言えないけれど......仕方ない事なのかなぁ......。

「とりあえず見て回ろうか、シャルも気になる物があったら言ってね。」

『はい!わたがしが気になります!』

「あったらすぐに教えてあげるよ。」

思いのほかシャルがわたがしに食いつている。
無かった場合作ってあげられればいいんだけど......。
ちゃんと作れる自信はない......。
出来ればわたあめの屋台あってほしいな......。
そんなことを考えながら屋台を見て回っていると悲痛な声が聞こえてきた。

「のわぁぁぁぁぁ!さ、財布がないのじゃぁぁぁぁぁ!」

のじゃ?

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