狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片

文字の大きさ
上 下
43 / 528
2章 ダンジョン

第42話 これが魔力視

しおりを挟む


View of レギ

時間はかかっちまったがこの場所にあいつらを迎えに来た。
少し体が震えている、体が強張っているのを感じる。
目の前が暗くなってきた気がする......目を瞑り深呼吸をする。
足はダンジョンの入り口に向かって動いている、目を開けて入り口を睨むがまた少し暗くなった気がする。
ダンジョンの手前で立ち止まる、もう一度、目を閉じて深呼吸。
そのまま一歩踏み出し、ダンジョンへ踏み込む。
大丈夫だ、意識ははっきりしている......俺が三人を、ヘイルをエリアをリィリをここから連れ出す!
ゆっくりと目を開けるとそこには闇が広がっていた......。



View of ケイ

「すみません!レギさん!」

「はは!いや!驚いたぜ!ダンジョンに入ったと思ったら何も見えねぇんだ。また気を失ったのかと思ったぜ!」

俺とレギさんは今、ダンジョンに入ってすぐの所にいた。
何故俺が平謝り状態かというと......。

「魔力視を出来るようにしたらダンジョンの中の魔力に視界が塗りつぶされるとは思わなくて!」

「いや、俺たちが慣れていないのが原因なんだろ?入ってすぐわかってよかったじゃねぇか。実戦中に掛けてたらパニクってたぜ。」

そう、魔力視が出来るように視力強化をしたところ、俺もレギさんもダンジョンそのものに蔓延する魔力以外何も見えなくなってしまったのだ。
いや、入り口に近づくにつれて薄暗くなっていくなぁとは思っていたんだけど......。
暗視も効かないし何事かと思ったらすぐ近くでレギさんも慌てていた。
シャルに言われて身体強化魔法を切ってようやく落ち着いたんだけど......やっぱりいきなり実戦投入は危険だね......。
辛うじて実戦手前って所で判明して良かったよ......。

『申し訳ありません!魔力視はピントの調整をしないとダンジョンでは周囲の魔力を先に拾ってしまうことを失念しておりました。ダンジョンの様な危険な地でこのようなことになってしまうとは......!』

「仕方ないよ。シャルにとっては普段から自然とやっていることなんだから。それにちょっとびっくりしただけで実害はなかったんだ、そんなに気にしなくても大丈夫だよ。」

シャルが結構落ち込んでいるので、頭を撫でる。

『ですが......。』

「ちょうどいい機会だよ。魔力視の訓練をしてからダンジョンに挑んだ方がいい、ミーティングの時点でシャルが教えてくれたからこの事態に気づけたんだ。それにまだここは入り口だ、安全地帯で気付けて良かったよ。」

『......そうなのでしょうか?』

「そうなのですよ。よし、シャル俺達の練習に付き合ってよ。どうしたらいいかな?」

「おう!頼むぜシャル!ここでしっかりマスターしてから探索を始めたいからな!」

『......わかりました、全力で指導させていただきます!』

レギさんも乗ってくれてお蔭か、シャルが少し元気を取り戻したようだ。
まだダンジョン入り口、ここでしっかり新しい技術を身に着けておこう。
俺とレギさんはこの日、一日を費やして魔力視の特訓をした。



「よし、今度こそ突入だ。ケイ、魔力視の制御は大丈夫だな?」

「えぇ、ばっちりです。昨日涙が枯れるまで特訓しましたからね。レギさんは大丈夫ですか?」

「あぁ、目玉が飛び出すくらい練習したからな。制御は完璧だな。」

『まだ戦闘になると制御が甘くなる時があるので注意してください。昨日のように何も見えなくなるということはないと思いますが。』

「まだ、制御が甘くなる時があるから戦闘中は気を付けたほうがいいそうです。」

「おぅ、了解だぜ。それじゃぁそろそろ行くとするか。」

「はい!」

今日から、本格的な探索の始まりだ。
昨日はアクシデントがあったせいで探索は出来なかったけれど、レギさんの緊張もいい感じに解れた気がする。
一日二日を急ぐような状況ではない、かえっていいコンディションで突入できたことを喜ぶべきだろう。
シャルを撫でたいけど今は肩にいないからな、休憩の時にでもたっぷり撫でておこう。
そんなことを考えながら俺にとっての二度目のダンジョンに足を踏み入れる。
昨日も入ったじゃんとか言わないでね......。



ダンジョンの中は相変わらずピリピリしていた。
薄暗いけど行動するのに不都合がない程度に明るく、暗視が無くてもある程度遠くまで見える。
この辺の雰囲気、洞窟系ダンジョンの共通項なのかな?
さて......今回の魔物はアンデッドだ、シャルから弱点は教えてもらっているとはいえ......内臓でろっと出てたり、脳みそにゅるっとはみ出したりしてたら嫌だなぁ......。

『ケイ様、前方に魔物の反応があります。二体、徘徊しているだけのようですがこちらに向かってきているので2分もあれば遭遇します。』

「遭遇するのは通路だよね?二匹同時に相手をしないといけない感じかな?」

『ここから先、遭遇するまで通路の幅は狭いので戦闘となったら一匹ずつになります。ただ相手によってはむりやり同時に前に出ようとしてくる可能性があるので注意してください。』

相手によっては戦闘というよりのしかかってくる感じか......。
そういうタイプは苦手だな、相変わらず狭くて動きづらいし。
でもまぁ最初の戦闘は俺がやるって約束だしっかりやろう。
レギさんの話では下層の方は広くなっているらしいけど、そこに行くまではこういう場所での戦闘も多くなるはずだ。

「ありがとうシャル。レギさん、二分程で魔物二匹と遭遇します。昨日の打合せ通り最初は僕がいきます。」

「おぅ、頼むぜ。後ろからアンデッドの弱点が見えるか俺も試すからよ。」

「了解です。」

レギさんの顔色も普通だ。
前のダンジョンの時とは雲泥の差と言える。
後は俺がうまく立ち回れれば当面の問題はほぼない言える、この戦闘が試金石だね......。
魔力をナイフに流し魔道具として起動する。
そういえば、グルフの所に預けてある魔道具、レギさんは使えなかったな......。
どうやら起動するのに必要な魔力が足りないらしい。
起動させておくのに魔力を流し続ける必要があるし身体強化の魔法みたいに起動だけして渡すみたいには出来ない。
レギさんが使ったら面白そうな武器もあったんだけどな。
後は無限にものが入るバッグとか瞬間移動する指輪とか......あればよかったのになぁ......。
そんな妄想に浸っていると前方からずるずると引きずるような音が聞こえてきた......。
これはあれか......腐った系の魔物ですかね......これ足引きずる音ってことだよね......。

「魔法で耳もよくなったから分かるが......ケイは運が悪いみたいだな、初遭遇が死体系か......。嗅覚強化はやめとけよ......?」

「嗅覚は強化してませんよ......今回はこういう系も予想してたので......。」

「それが無難だな......まぁ、ここがダンジョンでよかったじゃねぇか。魔力に還せば腐臭も消えるぜ?」

そんなことを話していると曲がり角から姿を現した眼球のない顔がこちらを見ていた。
いや、全身出てきてるけど、やっぱり顔が怖すぎる。
ゾンビってやつは......。
瞼を開いているのに目がない、口は開いているが顎の筋肉が見えている。
内臓は出てなかった......よかった、脳みそもしっかり収まっている様だ、全部流れ落ちてなければ......。
こういうのは大抵、筋肉のリミッターがなくってってのが定番だよね......でもまぁ......シャルの言っていた弱点が......見えている。

「前の奴は首、後ろの奴は右肘かな?」

『はい、問題なく見えているようで何よりです。そこで間違いありません。』

よし、シャルからお墨付きをもらった。
後は相手に組み付かれないように一気にケリをつければいいだけだ。
コボルトのように雄たけびを上げることもなくゾンビ二体がこちらに向かってくる。
相手が伸ばしてくる手よりもこちらの方がリーチが長い。
半身になり引き絞った右手を突き出す!
狙いをたがわずにナイフの刃先が魔力核を貫く。
一瞬で魔力へと還った仲間に動揺することなく、二匹目のゾンビが組み付こうと両手を伸ばしてきたので、突き出したナイフを戻さずにそのまま右肘に叩きつける。
抵抗なく魔力核を断ち切ったナイフに魔力を流すのをやめて元のサイズに戻す。
その頃には二体のゾンビの痕跡はどこにも残されていなかった。
でも何となく......臭い残ってる気がするな......気のせいかもしれないけど......。
コボルトは血も残さず消えて......臭いはどうだったかな......覚えてないや。
とりあえず、初戦闘とアンデッドの魔力核の確認は出来た。
次はレギさんの戦闘、これが無事終われば本格的な探索のスタートだ!

しおりを挟む
感想 60

あなたにおすすめの小説

【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-

ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!! 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。 しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。 え、鑑定サーチてなに? ストレージで収納防御て? お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。 スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。 ※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。 またカクヨム様にも掲載しております。

異世界の片隅で引き篭りたい少女。

月芝
ファンタジー
玄関開けたら一分で異世界!  見知らぬオッサンに雑に扱われただけでも腹立たしいのに 初っ端から詰んでいる状況下に放り出されて、 さすがにこれは無理じゃないかな? という出オチ感漂う能力で過ごす新生活。 生態系の最下層から成り上がらずに、こっそりと世界の片隅で心穏やかに過ごしたい。 世界が私を見捨てるのならば、私も世界を見捨ててやろうと森の奥に引き篭った少女。 なのに世界が私を放っておいてくれない。 自分にかまうな、近寄るな、勝手に幻想を押しつけるな。 それから私を聖女と呼ぶんじゃねぇ! 己の平穏のために、ふざけた能力でわりと真面目に頑張る少女の物語。 ※本作主人公は極端に他者との関わりを避けます。あとトキメキLOVEもハーレムもありません。 ですので濃厚なヒューマンドラマとか、心の葛藤とか、胸の成長なんかは期待しないで下さい。  

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

処理中です...