10 / 528
1章 初級冒険者
第9話 魔力操作と魔道具
しおりを挟む「でも......そうだ。いくつか貰えるかしら?それを使って魔力を感じられるようにできるかもしれないわ。」
「それは是非使ってください。お願いします。」
「ありがとう。」
デリータさんは紙......これは羊皮紙ってやつかな?
それとインクを取り出すと何か魔法陣のようなものを書き始めた。
「これは何を書いているんですか?」
「魔術の起動式よ。これが魔術の本体ね。魔術の効果、対象、範囲、使用する魔力量、他にも色々な条件や動作を書き込んでいくの。今から作るのはそんなに難しい内容じゃないからすぐに出来るわ。」
「魔法と魔術は違うんですね。」
母さんから魔術というのは聞いたことがない、新しい......かどうかは分からないけど魔法とは違う技術のようだ。
「魔法?あれは神話の類ね。先史文明の頃は使い手がいたとされているけれど、ちゃんとした記録がない時代のものだからね......強力な魔術式を行使する人の事を魔法使いって呼んでいたって説が有力ね。実際今の技術でも理解できない魔術式の埋め込まれた魔道具が遺跡から出土するのよ。後、魔法と言えば確か遺跡に刻まれた碑文があったわね......魔術の深淵、世界の理に通ずる、それ即ち魔の法なり......だったかしら?」
「神話......先史文明ですか。」
まぁ4000年以上前の話なんだから神話と呼ばれても仕方ないと思うけど、それにしても先史文明か......母さんが外の世界にいた頃の文明は既に滅んでいるっていうことか......。
母さんが神域に籠るきっかけとなった大きな戦争があったって話を聞いているけど、そこで多くの技術や文化が失われて大戦以前が先史文明と呼ばれることになった......?
俺が歴史に思いを馳せている間もデリータさんの話は続いている。
「魔術っていうのはこうやって確立した技術。魔法はおとぎ話といった所かしら。」
そういうとデリータさんはペンを置いた。
「これが魔術式。このまま使うこともできるのだけれど、発動に必要な魔力を込めると羊皮紙が耐えられずに燃え尽きちゃうのよ。だからこれを魔晶石に転写するの。その為の道具がこれ。」
カウンターに置いてあった顕微鏡のようなものをテーブルに置きながらデリータさんは笑った。
なんだかとても楽しそうだ。
今までの大人の女性といった雰囲気とは違い、無邪気さを感じさせる笑みだ。
「これ自体も魔道具でね。魔術師を名乗るのなら自分で式を作って魔晶石に転写できてこそだと思うのだけど、最近の魔術師を名乗る奴らときたら他人の作った魔術式を起動させるだけの能無しが多いのよ。大体魔術の起動だけなら誰にでも出来るのよ?少し人より魔力量が多くて規模の大きい魔術式を起動できるからって、魔術師を名乗るなんておこがましいを通り過ぎて恥ずかしいわ。」
デリータさんがヒートアップする。
急にエンジンがかかったな。
魔術の事が本当に好きなんだな。
色々魔術について話してくれているが内容はあまり理解できていないけれど、魔術師であることに誇りがあり、同胞を名乗る人たちに憤りを感じているのは分かる。
怒涛の口撃が続くがその間手も流れるように動いていて、どうやら転写の準備は出来たようだ。
「というわけで、これこそが大事なことなのよ。じゃぁ起動するわね。」
次の瞬間顕微鏡のステージ......だっけ?台の部分に置かれた羊皮紙が燃え上がり対物レンズの部分に光が吸い込まれていく。
接眼レンズの部分に置かれた魔晶石に吸い込まれていく感じだろうか......?
いや顕微鏡じゃないんだけど。
羊皮紙が完全に燃え尽きると先ほどまではなかった光が魔晶石の中に生まれていた。
「うん、成功したわ。もう少し待ってもらえるかしら?もう一つ対となるものが必要なのよ。」
そう言うと先ほどと同じように羊皮紙に起動式を書いて顕微鏡にセットする。
先ほどは怒涛の説明で気付かなかったが作業をするデリータさんは本当に楽しそうだ。
鼻歌でも歌いそうな雰囲気でもう一つの魔晶石を作っていく。
「さて、これで完成ね。この魔道具は魔力の吸収と供給をする効果があるわ。片方の魔晶石に魔力を込めると、対になる魔晶石から魔力が流れ込んでくるの。お互いを10cm程に近づけることで起動するようにしてあるわ。これを両手に持てば魔力が出ていく感覚、流れ込んでくる感覚がつかめるかもしれない。」
自分で動かす感覚が分からないなら強引に動かして感覚を掴むってことか。
「なるほど、最初の自分で魔道具の起動が出来ないのも条件を二つの石を近づけることにすることでクリアしているんですね。」
「えぇ、本来は式の起動に必要な魔力を流し込まなければいけないのだけど、その桁外れに魔力を内包している魔晶石ならお互いの魔力をキーに起動させられるように出来たのよ。」
色々なことが出来るんだな、魔術も面白そうだ。
っと今は魔道具を起動してみよう。
「すごいですね。魔力操作が出来るようになったら僕も魔術勉強してみたくなりました。......よし、早速起動してみます。」
両手に握った魔晶石を近づける。
次の瞬間、右手から何かがゆっくり引っ張られて出ていく感覚と左腕から何かが押し込まれていく感覚がする。
「おぉ、何か、体の中を動いてます!」
「成功ね!その動いている何かが魔力よ、感覚をしっかり意識して。感覚が掴めてきたら一回魔道具の使用を止めて、魔道具なしで動かせるか試してみて。」
魔道具をテーブルの上に置き、目を閉じて先ほどまでの感覚を思い出してみる。
......動かせている気がする。
「気のせいじゃなければ動かせている気がします。」
感覚に集中するために閉じていた目を開けるとシャルが膝の上からこちらを見上げていた。
『出来ています!魔力操作できるようになっていますよ!ケイ様!』
シャルが俺の膝の上でちぎれんばかりに尻尾を振っている。
お礼を込めてシャルの頭を撫でる。
シャルは可愛いなぁ......。
「あら、もう出来るようになったの?じゃぁ試してみましょう。もう一度このランプの魔道具を起動してみて。指先に魔力を集めた後押し出しながらつまみを回すの。」
指先に魔力を集める......うん、できている感じがする。
後はつまみを回しながら魔力を押し出す......。
次の瞬間、パンッと何かが弾けるような音がした。
「うわ!?なに!?」
慌てて辺りを見渡すが、間違いなく音は目の前のランプからしていたように思う。
そっとランプに目を戻すと電球の部分にあたる場所に設置されていた魔晶石が砕け散っていた。
「これは、一体?」
「......魔力の過剰供給?魔力を大量に流しす混みすぎたのだと思うけど、魔晶石が弾けるところなんて初めてみたわ。」
どうやら力余って壊してしまったようだ。
「す、すみません!」
慌てて謝るがデリータさんはおかしそうに笑っている。
「いえ、いいのよ。とても興味深いわ。魔晶石が耐えきれないほどの魔力なんて聞いたことがない。」
興味深げに砕けた魔晶石を観察していたデリータさんはこちらに視線を向ける。
「少し魔力操作の感覚を反復しておいてもらえるかしら?今のままだと魔晶石をバンバン割ってしまいそうだし出力調整出来るようにならないといけないわね。私は魔力操作の訓練用の魔道具をもってくるわ。」
「わかりました、宜しくお願いします。」
出力調整は必須だな。
触れる傍から魔道具を破壊しまくっていては確実にお尋ね者になってしまう。
さっきは思いっきり指先に集中させる感じでやったからふわっと軽い感じで魔力を押し出す。いや、滲みださせる様な感じにしてみよう。
『先ほどよりも少量の魔力を出せていますよ!さすがですケイ様!』
さすがです言われてしまった。
でも何となく魔力操作はうまくいっている気がする。
もっといろいろやってみよう!
とりあえずシャルを撫でてからだ。
4
お気に入りに追加
1,717
あなたにおすすめの小説
老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!
菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは
「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。
同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと
アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう
最初の武器は木の棒!?
そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。
何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら
困難に立ち向かっていく。
チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!
異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。
話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい!
****** 完結まで必ず続けます *****
****** 毎日更新もします *****
他サイトへ重複投稿しています!
レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)
荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」
俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」
ハーデス 「では……」
俺 「だが断る!」
ハーデス 「むっ、今何と?」
俺 「断ると言ったんだ」
ハーデス 「なぜだ?」
俺 「……俺のレベルだ」
ハーデス 「……は?」
俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」
ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」
俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」
ハーデス 「……正気……なのか?」
俺 「もちろん」
異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。
たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
どこかで見たような異世界物語
PIAS
ファンタジー
現代日本で暮らす特に共通点を持たない者達が、突如として異世界「ティルリンティ」へと飛ばされてしまう。
飛ばされた先はダンジョン内と思しき部屋の一室。
互いの思惑も分からぬまま協力体制を取ることになった彼らは、一先ずダンジョンからの脱出を目指す。
これは、右も左も分からない異世界に飛ばされ「異邦人」となってしまった彼らの織り成す物語。
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
異世界転生!俺はここで生きていく
おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。
同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。
今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。
だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。
意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった!
魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。
俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。
それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ!
小説家になろうでも投稿しています。
メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。
宜しくお願いします。
外れスキル持ちの天才錬金術師 神獣に気に入られたのでレア素材探しの旅に出かけます
蒼井美紗
ファンタジー
旧題:外れスキルだと思っていた素材変質は、レア素材を量産させる神スキルでした〜錬金術師の俺、幻の治癒薬を作り出します〜
誰もが二十歳までにスキルを発現する世界で、エリクが手に入れたのは「素材変質」というスキルだった。
スキル一覧にも載っていないレアスキルに喜んだのも束の間、それはどんな素材も劣化させてしまう外れスキルだと気づく。
そのスキルによって働いていた錬金工房をクビになり、生活費を稼ぐために仕方なく冒険者になったエリクは、街の外で採取前の素材に触れたことでスキルの真価に気づいた。
「素材変質スキル」とは、採取前の素材に触れると、その素材をより良いものに変化させるというものだったのだ。
スキルの真の力に気づいたエリクは、その力によって激レア素材も手に入れられるようになり、冒険者として、さらに錬金術師としても頭角を表していく。
また、エリクのスキルを気に入った存在が仲間になり――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる