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第20話
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「お待たせしました。シグリンマッポワッエクです」
運ばれてきたのは、骨付き肉だった。
それもかなり大きなサイズのものが3つ。
これだけでお腹いっぱいになりそうな量だ。
肉とは別の器にソースが入れられていて、これをつけて食べるようだ。
「まずは肉を適当な大きさに切り分けます」
レイネが、実演と共に食べ方を解説してくれる。
ナイフを入れると、表面のサクッという音の後に肉汁があふれ出してきた。
もうこれだけで十分美味しそうだ。
「それからパンに載せて……」
なるほど。
シグリンマッポワッエクはパンと一緒に食べるのか。
それにしても、こんな名前いったい誰がつけたんだろう。
噛まずに言える自信がない。
「最後にこのソースをかけます。このソースこそ、シグリンマッポワッエクのシグリンマッポワッエクたるゆえんです。これがなければ始まりません」
「よく噛まないで言えるな」
「もう言い慣れていますから。さあ、ご主人様もぜひ」
「分かった」
えっと肉を切り分け、パンに載せてソースをかける。
口いっぱいにほおばると、ああ……これは半端ない。美味い。美味すぎる。
肉、パン、ソース。どれが欠けても、きっとこの味は出ないのだろう。
「これを食べにまた来たくなるくらい、めちゃくちゃ美味いな」
「ふっふっふー。このシグリンマッポワエグゥ……」
「お、噛んだな」
「シ、シグンリング、シングリン、シグリンマポワン……ふにゃぁぁ!」
どうやらネミリはこの料理名をすらすら言えないらしい。
照れ隠しのつもりなのか、ものすごいペースで料理を食べ始めた。
おい、俺の分の肉にまで手を出すんじゃない。
「で、結局のところ何が言いたかったんだ?」
「この料理、私も作れるんだよ。ちょっと特殊な材料がいるけど、それさえ手に入ればいつでも作ってあげられるよ」
「本当か?その特殊な材料って?」
「ソースに使うフルーツ。このソース、ほのかに甘酸っぱいでしょ?」
「確かに」
「この味を出すには『ワニャの実』っていうのがいるんだよね。多分、人間の街ではそうそう売ってないと思う」
「でもここでこの料理が出てるなら、この街にはあるんじゃないか?」
「多分ね。見つけたら仕入れておくよ。肉球の世界なら、腐ることもないし」
「お店の人に聞いてみますか?もしかしたら、仕入れ先を教えてくれるかもしれません」
「それもありだな……っとわあ!びっくりした」
「どうかなさいましたか?」
「いや、ほらあそこ」
俺の指さす先で、1匹のネズミがこちらを見つめている。
チュウと一鳴きしたかと思うと、ネズミは走り去っていった。
「あのネズミが足元を駆け抜けて行ったんだよ」
「なるほど。しかし、ただのネズミではありませんでしたね」
「うん。召喚獣だったね」
「え?」
俺は全く気付かなかった。
普通に野良のネズミかと思ったのだが……。
「どう考えても召喚獣だよ。尻尾の付け根に印があったし」
「それに雰囲気も召喚獣のものでした。といっても、あまり高度な個体ではないようですが」
「2人みたいに、人間の言葉は話せないってことか」
「はい」
やっぱり、召喚獣には召喚獣ならではのシンパシー的なものがあるのだろう。
それに2人は、俺なんかよりも圧倒的に感覚が鋭い。
彼女らが言うのなら、あれは誰かの召喚獣で間違いないはずだ。
「うーん。少し嫌な感じがしたのは、私だけでしょうか」
「嫌な感じ?」
「はい。説明しづらいのですが、胸騒ぎというか何というか……」
「私も、あのネズミと目が合った時に一瞬だけ嫌な感じがしたな。説明できないけど」
「もしまたご主人様があのネズミを見かけるようなことがあったら、すぐにお声かけください。思い過ごしかもしれませんが、念のために」
「分かった。まあ取りあえず今は、ネズミなんかより目の前の骨付き肉だな」
「ただの骨付き肉じゃないよ。シグリンマッポワングエンぐぬぅ……」
やっぱり言えないのな、ネミリの奴。
運ばれてきたのは、骨付き肉だった。
それもかなり大きなサイズのものが3つ。
これだけでお腹いっぱいになりそうな量だ。
肉とは別の器にソースが入れられていて、これをつけて食べるようだ。
「まずは肉を適当な大きさに切り分けます」
レイネが、実演と共に食べ方を解説してくれる。
ナイフを入れると、表面のサクッという音の後に肉汁があふれ出してきた。
もうこれだけで十分美味しそうだ。
「それからパンに載せて……」
なるほど。
シグリンマッポワッエクはパンと一緒に食べるのか。
それにしても、こんな名前いったい誰がつけたんだろう。
噛まずに言える自信がない。
「最後にこのソースをかけます。このソースこそ、シグリンマッポワッエクのシグリンマッポワッエクたるゆえんです。これがなければ始まりません」
「よく噛まないで言えるな」
「もう言い慣れていますから。さあ、ご主人様もぜひ」
「分かった」
えっと肉を切り分け、パンに載せてソースをかける。
口いっぱいにほおばると、ああ……これは半端ない。美味い。美味すぎる。
肉、パン、ソース。どれが欠けても、きっとこの味は出ないのだろう。
「これを食べにまた来たくなるくらい、めちゃくちゃ美味いな」
「ふっふっふー。このシグリンマッポワエグゥ……」
「お、噛んだな」
「シ、シグンリング、シングリン、シグリンマポワン……ふにゃぁぁ!」
どうやらネミリはこの料理名をすらすら言えないらしい。
照れ隠しのつもりなのか、ものすごいペースで料理を食べ始めた。
おい、俺の分の肉にまで手を出すんじゃない。
「で、結局のところ何が言いたかったんだ?」
「この料理、私も作れるんだよ。ちょっと特殊な材料がいるけど、それさえ手に入ればいつでも作ってあげられるよ」
「本当か?その特殊な材料って?」
「ソースに使うフルーツ。このソース、ほのかに甘酸っぱいでしょ?」
「確かに」
「この味を出すには『ワニャの実』っていうのがいるんだよね。多分、人間の街ではそうそう売ってないと思う」
「でもここでこの料理が出てるなら、この街にはあるんじゃないか?」
「多分ね。見つけたら仕入れておくよ。肉球の世界なら、腐ることもないし」
「お店の人に聞いてみますか?もしかしたら、仕入れ先を教えてくれるかもしれません」
「それもありだな……っとわあ!びっくりした」
「どうかなさいましたか?」
「いや、ほらあそこ」
俺の指さす先で、1匹のネズミがこちらを見つめている。
チュウと一鳴きしたかと思うと、ネズミは走り去っていった。
「あのネズミが足元を駆け抜けて行ったんだよ」
「なるほど。しかし、ただのネズミではありませんでしたね」
「うん。召喚獣だったね」
「え?」
俺は全く気付かなかった。
普通に野良のネズミかと思ったのだが……。
「どう考えても召喚獣だよ。尻尾の付け根に印があったし」
「それに雰囲気も召喚獣のものでした。といっても、あまり高度な個体ではないようですが」
「2人みたいに、人間の言葉は話せないってことか」
「はい」
やっぱり、召喚獣には召喚獣ならではのシンパシー的なものがあるのだろう。
それに2人は、俺なんかよりも圧倒的に感覚が鋭い。
彼女らが言うのなら、あれは誰かの召喚獣で間違いないはずだ。
「うーん。少し嫌な感じがしたのは、私だけでしょうか」
「嫌な感じ?」
「はい。説明しづらいのですが、胸騒ぎというか何というか……」
「私も、あのネズミと目が合った時に一瞬だけ嫌な感じがしたな。説明できないけど」
「もしまたご主人様があのネズミを見かけるようなことがあったら、すぐにお声かけください。思い過ごしかもしれませんが、念のために」
「分かった。まあ取りあえず今は、ネズミなんかより目の前の骨付き肉だな」
「ただの骨付き肉じゃないよ。シグリンマッポワングエンぐぬぅ……」
やっぱり言えないのな、ネミリの奴。
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