15 / 31
第15話
しおりを挟む
数発ずつレイネとネミリの攻撃を食らい、盗賊たちは意識を失った。
ちゃんと生きていることを確認したうえで、ネミリが【肉球次元】で収納する。
彼らを引き渡せば、一定額の賞金がもらえるはずだ。
もし特別に懸賞金がかけられていたりすると、さらにもらえるお金は多くなる。
多分、今日の奴らは野良のザコ盗賊だろうけど。
「猫のお姉ちゃん、ありがとう!」
女の子がネミリに抱き着く。
ネミリは優しく抱きしめ返して言った。
「大丈夫だよー。怪我がなくてよかった」
「お姉ちゃんは怪我してないの?」
「大丈夫大丈夫。私、頑丈だからね」
ネミリは強がってるけど、額には汗が浮かんでいる。
これまでの戦いでは全く汗をかくことのなかったネミリが、だ。
もしかしたら、これまでモンスターを瞬殺していた分、攻撃の受け方や痛みの流し方が鈍っているのかもしれない。
「お姉ちゃん、名前は?」
「ネミリだよ」
「ネミリお姉ちゃんかー。私はアニだよ」
「アニね。アニの家はどこなの?」
「この近くの農村だよ」
「じゃあ案内して。また襲われないように、私たちが守りながら送って行ってあげる」
「ありがとう!こっちだよ」
アニがネミリの手を握って歩き始める。
俺とレイネもその後に続いた。
「本当に何とお礼を言っていいか……」
アニの住む農村。
俺たちが送り届けると、彼女の母親は何度も頭を下げた。
「いやいやー、そんなそんな」
ネミリが照れくさそうに頭をかく。
ふと、アニが家の中へ入っていった。
戻ってきた彼女の手には、赤い輪っかが握られている。
「ネミリお姉ちゃんにこれあげる!腕飾りだよ!」
「いいの?ありがとー」
「つけてみて!」
ネミリは左腕にもらった飾りをつける。
それから嬉しそうにアニへ見せた。
「大事にするね」
「うん!本当にありがとう!」
「ありがとうございました」
元気よく手を振るアニと、頭を下げる母親に見送られ、俺たちは農村を出た。
少し歩いて、ネミリがしゃがみこむ。
額には相変わらず、いやさっき以上の汗がにじんでいた。
やはり、確実にダメージを食らっているようだ。
「むー。多分だけど折れてるなぁ、骨。アニを守るのに夢中になって、避けきれなかった」
「猫になれ。そしたら街まで運んでいくから」
「ありがたいよ。【獣化・第一形態】」
俺は黒猫をそっと抱きかかえる。
ネミリはすぐに、俺の腕の中で丸くなった。
「ほんと、よく頑張ったな」
「にゃ」
小さく一鳴きして、ネミリが眠りにつく。
出来るだけ振動が伝わらないよう気を付けながら、俺とレイネは並んで街へと歩いていく。
「休暇に入るかぁ」
俺の呟きに、レイネは黙って頷いた。
今のネミリでも、戦えば十分強いんだろう。
だけど彼女のことを考えたら、ゆっくり休んでもらうのがベストだ。
「となると……」
俺には1か所、休暇を取るのにちょうどいい場所の心当たりがあった。
ちゃんと生きていることを確認したうえで、ネミリが【肉球次元】で収納する。
彼らを引き渡せば、一定額の賞金がもらえるはずだ。
もし特別に懸賞金がかけられていたりすると、さらにもらえるお金は多くなる。
多分、今日の奴らは野良のザコ盗賊だろうけど。
「猫のお姉ちゃん、ありがとう!」
女の子がネミリに抱き着く。
ネミリは優しく抱きしめ返して言った。
「大丈夫だよー。怪我がなくてよかった」
「お姉ちゃんは怪我してないの?」
「大丈夫大丈夫。私、頑丈だからね」
ネミリは強がってるけど、額には汗が浮かんでいる。
これまでの戦いでは全く汗をかくことのなかったネミリが、だ。
もしかしたら、これまでモンスターを瞬殺していた分、攻撃の受け方や痛みの流し方が鈍っているのかもしれない。
「お姉ちゃん、名前は?」
「ネミリだよ」
「ネミリお姉ちゃんかー。私はアニだよ」
「アニね。アニの家はどこなの?」
「この近くの農村だよ」
「じゃあ案内して。また襲われないように、私たちが守りながら送って行ってあげる」
「ありがとう!こっちだよ」
アニがネミリの手を握って歩き始める。
俺とレイネもその後に続いた。
「本当に何とお礼を言っていいか……」
アニの住む農村。
俺たちが送り届けると、彼女の母親は何度も頭を下げた。
「いやいやー、そんなそんな」
ネミリが照れくさそうに頭をかく。
ふと、アニが家の中へ入っていった。
戻ってきた彼女の手には、赤い輪っかが握られている。
「ネミリお姉ちゃんにこれあげる!腕飾りだよ!」
「いいの?ありがとー」
「つけてみて!」
ネミリは左腕にもらった飾りをつける。
それから嬉しそうにアニへ見せた。
「大事にするね」
「うん!本当にありがとう!」
「ありがとうございました」
元気よく手を振るアニと、頭を下げる母親に見送られ、俺たちは農村を出た。
少し歩いて、ネミリがしゃがみこむ。
額には相変わらず、いやさっき以上の汗がにじんでいた。
やはり、確実にダメージを食らっているようだ。
「むー。多分だけど折れてるなぁ、骨。アニを守るのに夢中になって、避けきれなかった」
「猫になれ。そしたら街まで運んでいくから」
「ありがたいよ。【獣化・第一形態】」
俺は黒猫をそっと抱きかかえる。
ネミリはすぐに、俺の腕の中で丸くなった。
「ほんと、よく頑張ったな」
「にゃ」
小さく一鳴きして、ネミリが眠りにつく。
出来るだけ振動が伝わらないよう気を付けながら、俺とレイネは並んで街へと歩いていく。
「休暇に入るかぁ」
俺の呟きに、レイネは黙って頷いた。
今のネミリでも、戦えば十分強いんだろう。
だけど彼女のことを考えたら、ゆっくり休んでもらうのがベストだ。
「となると……」
俺には1か所、休暇を取るのにちょうどいい場所の心当たりがあった。
0
お気に入りに追加
210
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)
SHO
ファンタジー
15歳になり、女神からの神託の儀で魔法使い(ウィザード)のジョブを授かった少年ショーンは、幼馴染で剣闘士(ソードファイター)のジョブを授かったデライラと共に、冒険者になるべく街に出た。
しかし、着々と実績を上げていくデライラとは正反対に、ショーンはまともに魔法を発動する事すら出来ない。
相棒のデライラからは愛想を尽かされ、他の冒険者たちからも孤立していくショーンのたった一つの心の拠り所は、森で助けた黒ウサギのノワールだった。
そんなある日、ショーンに悲劇が襲い掛かる。しかしその悲劇が、彼の人生を一変させた。
無双あり、ザマァあり、復讐あり、もふもふありの大冒険、いざ開幕!
リアルチートは突然に _ゲーム初心者の最強プレーヤー_
Lizard
ファンタジー
Battle Frontier Online ―――
通称、『BFO』
過去に発売されたVRゲームとは一線を画す最新型VRMMORPG。
過去最大最高規模の世界、そして圧倒的な動作の正確性を売り文句に発売されたゲームだ。
主人公、18歳の覇城龍成(ハジョウリュウセイ)は友人でありプロゲーマーである赤羽彰太から貰ったBFOのために開発された最新型VRヘッドギア―――『VR-EX』でBFOをプレイする。
彼自身は自分が普通の高校生だと思っているのだが、彼は父から「覇城」という剣道の流派の技術を教え込まれており、さらに彼自身が「面白そうだから」という理由で合気道や柔道などのいくつかの武術を習っていたため、その戦闘技術は友人達が「コイツなら銃弾の飛び交う戦場でも素手で敵将とれんじゃね?」と評価するほど。
若干ハーレム要素、戦闘狂要素ありの冒険が、
今、始まる―――――
※他サイトで投稿させていただいているものです
動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョンを探索する 配信中にレッドドラゴンを手懐けたら大バズりしました!
海夏世もみじ
ファンタジー
旧題:動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョン配信中にレッドドラゴン手懐けたら大バズりしました
動物に好かれまくる体質を持つ主人公、藍堂咲太《あいどう・さくた》は、友人にダンジョンカメラというものをもらった。
そのカメラで暇つぶしにダンジョン配信をしようということでダンジョンに向かったのだが、イレギュラーのレッドドラゴンが現れてしまう。
しかし主人公に攻撃は一切せず、喉を鳴らして好意的な様子。その様子が全て配信されており、拡散され、大バズりしてしまった!
戦闘力ミジンコ主人公が魔物や幻獣を手懐けながらダンジョンを進む配信のスタート!
ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~
むらくも航
ファンタジー
Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。
配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。
誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。
そんなホシは、ぼそっと一言。
「うちのペット達の方が手応えあるかな」
それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。
☆10/25からは、毎日18時に更新予定!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる