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第3章 幼女、王都へ行く

幼女、リリスと抱き合う

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 何とかシエルが解読を成功させたユーゲルの手記にも、やはり大したことは書いていなかった。
 そして初めて図書館に来た日から5日が経ち、イリナとリリスが帰ってくる。
 図書館に入ってくるなり、リリスは私に抱き着いてくる。

「たっだいまー!」

「お帰りー」

 うん、もふもふ。抱き心地めっちゃ良好。
 エリーチェの気持ちが分からないでもない。あまり分かりたくはないけど。

「ルーガティウス様の手記はいくつかあったから、それを全て持ってきたよ。この中に入ってる」

 イリナは図書館の机に木製の箱を置いた。
 開けてみると、3冊ほどの手記が入っている。
 その中で一番上にあるものを開くと、そこにはびっしり暗号文字が書かれていた。

「ううっ……もう当分は見たくない……」

 横から覗き込んだシエルが頭を抱える。
 ユーゲルの手記の解読に、相当メンタルをやられたようだ。

「なんかさー、あんまり面白いこと書いてないよね」

 口をとんがらせながらリリスが言った。
 確かに他の3人の手記と同様、問題の核心に触れるようなことは一切書かれていな……ん?

「えっと……リリス読めたの?」

「うん!あの手紙よーく目に焼き付けて、あとはこの手記を見ながらずっと考えてたら法則性が見えてきちゃった」

「そ、そんな……私が何年もかけてやっとたどり着いたところにあっさり追いつかれるなんて……」

 シエルは今にも卒倒しそうな勢いだ。
 これでリリスが実はダークエルフで……とか、彼女も転生していて……とかいったら本当に意識を失うんじゃないかな。言わないけど。

「あ、あと裏意味もあってさ」

「はひゃう!」

 シエルが妙な声を上げた。
 あーあ。リリスが裏意味まで理解し始めたことが追い打ちとなり、彼女の意識は崩壊寸前だ。
 なだめるのはイリナに任せて、私はリリスの指す箇所を読んでみる。

「意味、繋がらないな」

「やっぱり?意味が繋がらないから、私が間違えてるのかと不安になっちゃたよ」

 私は机にルーガティウスの手記、そして3枚の紙を並べる。
 紙に書かれているのは、他3人の手記に記されていた意味の繋がらない裏意味の部分だ。
 4つを繋げたら裏意味として機能するかと思ったけど、どうにも意味のある単語にならない。

「思い過ごし?」

「いや、4人全員がってことは何か意図があるはず……あっ!」

 閃いた。
 完全に閃いた。

「これ、裏裏意味だ!」

「うん、何だって?」

 食い気味にリリスがツッコんでくる。
 頭の中で再生されるのは、私とニノの会話……


「リスターニャ先輩!これどうですか!?」

「……何これ。全く意味が分からないんだけど」

「裏意味の裏、裏裏意味ですよ!」

「裏の裏はもう表じゃん……」

「違うんですよ!裏意味だと思わせての裏裏意味って良くないですか!?」

「何がどういいのか分からないんだけど。ややこしすぎても後々困るよ」

「むー」

「ちなみに何て書いてあるの?」

「変態下着、です」

「お前もやろがーー!!表に出るか?」


 あー、くだらな。
 確かこのあとニノが……ってそんなことはどうでもよくて。

 いや、いやいや、いやいやいやいや、裏裏意味なんて、それこそ私とアイツらしか知らない内輪ネタだよ?
 おそらく文書の形式では残っていないはず。
 それを手記に書くなんて、いよいよをもって誰かに読ませる気がないじゃんか。

 ともかく、裏裏意味でこれを読むと……。

「学院の老竜木」

「老竜木と言えば、リスターニャ学院に2000年前からずっと枯れていないものがあるわ」

「それだ!」

 さてさてさてさて、いよいよ王都での謎解き冒険も大詰めだ。
 アイツらからの挑戦状、指し示す場所はその老竜木……!
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