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第3章 海の主討伐編

海獣

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 翌朝。
 漁に出られない村の男性陣も含め、みんなが見守る中で私は丘の上に立っていた。
 何だってこんなにギャラリーがいるかな。

「【解放リリース】!」

 私は雷竜サンダードラグを解放する。
 海への超高飛び込みで閃いたといえば、もう分かるはず。
 こいつに乗ってアーケロンの真上まで行って、そっから飛び降りればいいのだ。
 私は【落下無効】があるから無傷だし、アーケロンはその大きすぎる体が仇となって逃げきれない。
 うん、我ながら完璧な作戦だね。

「そぉれっ!」

 雷竜サンダードラグの背中に乗って、空へと飛び出す。
 あっという間にアーケロンの上へ到着すると、私は雷竜サンダードラグを収納した。
 支えを失った体が、アーケロンへと急降下を始める。
 ぐんぐんとごつごつした甲羅が近づいてきた。
 よっしゃ、行けるぞ!

「……!?」

 ふと、海から何かが飛び出してきた。
 アーケロンは動いていない。
 その下から、何か太くて長いものが迫ってくる。
 その何かに、私は超高速で払いのけられ吹っ飛ばされた。
 昨日と同じように崖に叩き付けられる私。
 大ホームランだ。
 くっそぅ……空中で上手く姿勢が取れずに手で触れられなかった。

「ミオンさーん!!!」
「ミオン!!!」
「大丈夫なのか!?」

 心配する村人たちを、私は再び取り出した雷竜サンダードラグに乗って戻り安心させる。
 海へと戻っていく私をホームランで葬らんとした何か。
 それは巨大なイカの腕だった。
 よく見てみると、アーケロンの下にもう1つ、巨大な影がある。

「あれはクラーケンの腕じゃ……」

 呆然としたままミョン爺が呟いた。
 アーケロンだけじゃなかったとは。
 完全に不意打ちを食らってしまったな。

「今の感じだと、クラーケンがアーケロンを守ろうとしたように見える。そんなことがあり得るの?」

「あり得ん話ではない」

 ミョン爺は渋い顔をして頷く。

「アーケロンやクラーケンのような巨大な海洋生物を海獣という。ただし、海獣族ではない。ここがポイントなんじゃ」

「というと?」

「人間族や竜族、さらには鳥人族などなど。これらは高度な知能を持ち、意思疎通を図ることができる。ただし海獣は、知能はあれども高くはない。言語も持たん。じゃから海獣同士で、あるいは人間族や竜族などと明確なコミュニケーションを取ることはできん」

「なるほど。図体はデカいけど、頭は詰まってないってわけだ」

「そういうことじゃな。あれで知能など持たれたら、ちっぽけな漁村など一巻の終わりじゃわい。話を戻すが、言語を持たない海獣同士でも、主従関係が結ばれることがある。ちょうど今のアーケロンとクラーケンのようにな」

 アーケロンに近づく危険を、クラーケンが守った。
 あの状況から推察するに、アーケロンが主でクラーケンが従ってところかな。

「おそらく2頭は海中で偶然出会い、そして戦ったのじゃろう。そしてアーケロンが勝った」

 あんな大きい海獣同士の戦いなんて、まるでこの世の終わりだね。
 でもそんな激しい戦いを見たっていう噂は聞かないから、人目につかない海の奥深くで行われたんだろう。

「クラーケンが関わっているとなれば、また話は変わってくる。ミオン、どうするつもりじゃ?」

「大丈夫。今のは不意打ちを食らっただけだからさ。いると分かってるなら、クラーケンの腕が飛び出してきた瞬間に収納しちゃえばいい。あとはアーケロンの上に落ちればいいだけ」

「そう、上手くいくかの」

「やってみるよ。でも……」

 私は転移装置を取り出して言った。

「そろそろ王都に行かないと、今日の開店に間に合わない」

 何せ今日の分は材料があるのだ。
 それに念のため、明日は臨時休業ということを知らせておいた方が無難。
 となると、一旦は王都に行かないといけない。

「今日はニナとフェンリアと……」

 当番のみんなが私に掴まり、王都へと転移する。
 アーケロンとクラーケン。
 収納したら『美音』で特別メニューとして出すのもありだな。
 絶対にそうしよう。
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