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三章 エイヴィの翼 後編(前期休暇旅行編)

230、 初の前期休暇 10(装いの整え)

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 エリーがラヴィをベッドに横たえる。魔術でドレスの汚れ払い、髪や化粧は起きてから直そうとそのままにしておく。

 同室ではアルベラとジーンが話していた。

 エリーは二人の汚れも払うべく、先ずは早めに終えられそうなジーンの方へと向かった。

「庭で貴方が不審者を追い払ったって事でいいかしら。私はラヴィと屋敷の案内がてら散歩していた。庭で不審者が現れてラヴィが捕まって気を失って……ジーンが応戦して放火。どう?」

「良いんじゃないか。『相手の姿は見てない。まんまと逃げられてどこの誰かも分からなかった』って事で」

 アルベラはその言葉に不安げに方眉を寄せる。

「……これだと、貴方が騎士として怠慢だと思われるかしら?」

 他の騎士なら「そういう事もある」「むしろ女性を二人守ったのだからそれで十分だ」ともなりそうだが、他ならない「ニセモノ」である彼だ。彼を陥れ笑いの種にしたいと思う者たちは、喜んで揚げ足取りに使うだろう。

 ジーンは首を傾げる。

「大丈夫だろ。公爵は俺の悪い噂に興味ない」

「……。そう、ね。私の言い方にもよるし……」

 アルベラはそう言いながら自分の案に納得できていないようで、もっといい理由が無いか考える。

「―――あら。でしたら表向きは不審者とかは無く、『お嬢様とラヴィちゃんで散歩をしていてらジーン様も偶然居合わせ、二人に頼まれ魔法のご教授として炎を出して見せた。途中ラヴィちゃんが貧血を起こして倒れた』とかどうでしょう。公爵様にはできるだけ本当のことを伝えるという事で、外部の人たちにはそれくらいの説明で」とエリーが提案する。

 「あ、そっちがいい」「それいいですね」とアルベラとジーンは頷いた。

「お力になれて何よりです」

 エリーはにこやかに作業に戻る。彼女はテキパキとジーンの背中に付いた土や草を取り除き、乱れた髪を直していった。

「それで、そのケイソルティ嬢に憑いてた人間に心当たりはないのか? 目的はなんだ」

 ジーンの問いにアルベラは応える。

「探しものみたいだったけど」

「探し物?」

「何かの瓶。エニオルニエ? ……の瓶? と言うのを探してたみたい。あとダークエルフの双子」

「何でそれを探しに来てお前を引っ張り出す必要があったんだ」

「私の匂いがそのダークエルフの匂いに似てたのかなんかで、関係あるんじゃないか探りを入れに来てたみたいだけど……」

「ダークエルフ? 関係あるのか?」

「ダークエルフには全く心あたりは無いけど、匂いって言ってたし、それには心当たりがあるの。―――多分だけど、私の体質の事じゃないかしら? 貴方や殿下が気にしてた体質の件。多分ダークエルフの双子っていうのも、私と同じ体質なのよ。他人種にはこの匂いが分かる見たいだから。今のところエイヴィー族に魔族に、あと多分エルフがこの匂いをかぎ分けてるわね」

 アルベラはエイヴィーの少女ピリに、ガルカや雷炎の魔徒、そしてヒーローの一人、エルフと人間のハーフであるセーエン・スノウセツと、スチュートの連れていたエルフの奴隷を思い浮かべる。 

「じゃあ今回の犯人は他人種って事か」

「多分ね」

 エリーがアルベラの後ろへと移動する。身を整え直してくれた彼女へ、ジーンは「ありがとうございます」と礼を告げる。

「いいえ。では次はお嬢様、」

「はーい」

 エリーはアルベラのドレスの汚れを確認する。汚れは魔術で、破れほつれは手作業で直すことになるのだが、幸いラヴィ合わせ二人とも布地に損傷はなかった。

 二人は話へ戻る。

「その匂い、人には分からないんだな」

「ええ、多分。……ちなみにエイヴィーの子が言ってたんだけど、くさいとかじゃないって。罪人にはいい匂いに感じるらしいわよ。……あと、罪を誘う怖い匂いなんですって」

 アルベラは自分の腕を鼻に近づけ、よく分からないなと首を傾いだ。その様子を見ていたジーンに、冗談めかして「嗅ぐ?」と手を差し出し、ジーンは「いいよ」とむすりと返した。

「ダークエルフか……。最近、どっかの伯爵の屋敷で貴重な品が盗まれたって話聞いたな。男女のダークエルフで、騎士が数人殺されて、警備の兵士や居合わせた使用人も何人か」

「もしかしたらそいつら?」

「わからない。けど、話を聞くとそう思いたくなるよな」

「そうね。―――まあ、結局私はその双子とは無関係って事で、あちらの用は済んで解放されたわけだし。この件はそんな感じで良いかしら? もちろん殿下には全部伝えて貰って構わないわ」





 先ほどの事情を話終え、アルベラはエリーに髪を直してもらいながら考えていた。

 彼女は自分を待って部屋に待機しているジーンへ尋ねる。

「私、あの時どうしてたら良かったと思う?」

「あの時?」

「そう、屋根に上った時。それかその前から。どこからどうすべきだったのかなって」

 アルベラは、ルーと別れ会場を出た辺りからを思い返した。

「……私が考えたのは、『ラヴィがおかしいと思った時点で引き返してみる』『ラヴィが犠牲になっても自分第一で逃げる』。―――屋根に出てから出来た事は『魔力を無駄遣いせずにいざという時のため温存』。さっきは出来なかったけどね。あと『相手の力で浮いてた間に屋根に戻る』ね。できたか分からないし、出来たとして彼女を見放す事になっちゃうけど……」

 「貴方ならどうした?」とアルベラは尋ねる。

 ジーンは背もたれに背を預け、斜め上に視線を向ける。

「魔法が使えなかったとして、一緒に居たのがラツなら……俺の立場的には落ちた時は自分が下敷きになる義務があるな」

「シビアね……」

「つっても、体はお前より頑丈だろうし、生身での高所からの着地の方法ってのはある。人を抱えてても一命はとりとめられるさ。……けどそういうのを知らない人間が、か。どうするかな……」

 ジーンは真面目な表情で考え込んだ。

「―――まず、落ちる寸前に屋根に移れるタイミングがあったなら屋根に移ったかもな」

「え……?」

 彼が真っ先にラビィを見放す選択をするなんて、とアルベラは目を丸くする。その表情に、ジーンは「違うぞ」と呆れた返しをする。

「屋根の上からケイソルティ嬢に魔法を放つんだ。人二人を支えるより、人一人の方が少ない労力で済むだろ。それならお前の言ってた魔法をクッションにしながら勢いを殺す手も出来たんじゃないのか? 自分も一緒に落下してない分、魔法の展開に意識を集中できるだろ」

「そうね……確かに……」

 自分が屋根に戻る、イコール、ラヴィは見捨てるという考えになっていた自分の思考にアルベラも呆れる。

(風で魔力を無駄遣いせず、ちゃんと魔力を温存した上で落ち着いて得意な方の水を使っていれば……。人一人、一定の時間宙に固定して引き上げる事だってできた。落ち着いてれば、相手が消えるのを察した時に無駄口叩かず、水で足場作って屋根に移る事もできた。その間ラヴィの下に水の壁引いてとどめておくこともできたかも……。うーん。やっぱり落ち着きって大事だな……)

 落ちるのでは無く屋根に戻る手を想像し、アルベラは悔しげに表情を歪めた。

「あと落ちる事を選んだとして、その前にある程度魔力も消耗してたとして、魔法で体を押して窓に飛び込むとかどうだ。体押せるだけの威力とかタイミングとか、窓の位置とか問題はあるけど。それか、地面より柔らかそうな場所、落下距離が短そうな場所があればそっちに体を押すとかか。さっきの場所だと一番近くにあった木がいいか……」

「ああ、そうか。なるほど……窓とか木に向けて……」

「相手が上手なら窓に結界張ってて弾かれる場合もあるけどな。タイミングミスれば壁に衝突して落下するだろうし」

「……」

「咄嗟の判断で木の方に体を飛ばせばいいけど、そう言うのは経験か運だよな……………あ、あとケイソルティ嬢から魔力を分けてもらうとかどうだ? 『吸収』、お前はどうだ?」

 「魔力の吸収」、出来る人にはできるし、出来ない人にはできない技術だ。「お前は出来るのか?」と問われ、アルベラは首を振る。

「何度か人に教えてもらって試したことあるけど、私は出来たことないの。たまーに練習はしてみてる」

「そうか。じゃあ今回は論外か」

 「ええ」と頷き、アルベラは「あ」と思い出したように声を上げる。 

「そういえば……相手に交渉するのも手よね……。私あの時、地面に下ろすよう一度も相手に頼んで見てなかったの。下ろしてもらえたとして次の問題が起きたかもだけど、一回言ってみれば良かった」

「そうなのか。会話できる相手ならものは試しだよな。荒事なしで済むのが一番だ」

「うう……そうか……なんで私あの時……」

 アルベラは頭を抱え悔しがる。

「―――あ、あと体力的にできるか分からないけどこういうのはどうだ」

「まだあるの?! なんか腹立つ!」

「……やめるか?」

「聞いてあげるわよ! 言いなさい!」

「お前な……」

 アルベラの髪を整え終えたエリーは、あれこれ話し合う二人を微笑ましく眺めていた。

 そして魔法を使えず、なんの備えもなかった状況での対策を自分も思い浮かべてみる。

(私なら地足で着地するわね)

 屋根の上から飛び降り普通に着地する自分を思い浮かべ、なんの参考にもならないなと口に出さずにおく。





 話しの区切りもつき、

「じゃあお嬢様、お化粧を直すので少しの間お喋りはストップで」

「あ、はい」

 エリーに言われ、クルリと椅子を回されアルベラは頷く。四本足の椅子なのだが、まるで回転式の椅子のようにエリーはスムーズに持ち上げて回してしまう。

 「流石です……」とアルベラは目を据わらせる。

(侵入者か……エリーにはちゃんと玉の事伝えておきたいんだけど……。話すなら今が良いか?)

 アルベラは「ちょっと待って」とエリーへ言い、ジーンを振り返る。

「ジーン、ここまで話に付き合わせといて今更何だけど、先に会場に戻っててくれないかしら? もう少し時間かかりそうだし、貴方は殿下の護衛だし」

「……わかった。エリーさんも居るしな」

 自分に席を外して欲しい理由があるのだろう、と察しジーンは椅子を立つ。

 彼は扉に手を掛けると、足を止め振り返った。その気配にアルベラもそちらへ目をやる。

「そうだ。お前、冒険者と噂になってるの知ってるか?」

「冒険者と私の……ああ。恋人って奴?」

 アルベラは他人事の笑みを浮かべる。

「ベッティーナから聞いたわ。冒険者の人たちと街を歩いてる所を、誰かが勘違いしたみたいね」

「勘違い?」

「ええ。スナクスさんと並んで品物見た瞬間を誰かが見たんじゃないかしら。それともゴヤさん? ……そういえば『銀髪の冒険者』って言ってたしスナクスさんか。―――けどその話、以前訊かれた時に否定したんだけど、まだ流れてるのね」

「そうか……」

 とジーンは呟き、その瞬間エリーと目が合った。ニコリと笑む楽し気な青い瞳に、彼は自然と表情を引き締める。

「じゃあ先に行ってるな」

「ええ。ありがと」

 ―――パタン

 と戸を閉め、ジーンは会場に向け歩き出した。

(『勘違い』……)

 彼は人知れずほっと安心の息を零す。





 ***





 コツコツと、誰かが階段を上がる音が小さく響く。

 窓が開け放たれた人気のない屋根裏部屋。

 柔らかい金髪が入り込む風にさらりと揺れる。

「あれ? ここから気配がしたと思ったのに」

 青年になり始めの彼は窓に腕を乗せ外を覗き込む。

(彼等来てたのかな。けど、なんで公爵邸に……)

 街の明かりを眺め、彼は微笑むように目を細めた。





「僕の身の回りで、余計な事しないで欲しいな」





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