192 / 310
三章 エイヴィの翼 前編(入学編)
192、冒険者と顔合わせ 3(フィブル・スタッフィングの自白)
しおりを挟むニコーラと別れ冒険者達の元へ行くと、アルベラは早速アンナに捕まり、頭を抑え込まれてぐりぐりと拳骨を食らう事となった。
「おい嬢ちゃん。おいおい嬢ちゃん。だれが酒浸りで酷いあばずれのどうしようもない底辺の人間だってぇ?」
押さえられた頭部の片側、豊かな胸が押し付けられており「痛いし逆セクハラだし何なんだこれ」とアルベラの頭が混乱する。
「んま、……まって姐さん。どうしようもない人は私じゃない、私言ってない……い、いたい、いたいって……ごめんなさい……!」
満足するまでアルベラの髪をかき乱すと、アンナはやっと彼女を開放した。
疲れ果てたアルベラの後ろ、エリーが素早く髪を解いて結い直していく。
「んで……ほら。嬢ちゃんに良いもん聞かせてやるよ」
アンナの後ろからフードを被った子供の背丈の人物が出てくる。
その人物は「スー」とアルベラのペットの名を呼んだ。
「キキッ」と彼女の鳴き声が聞こえ、アルベラは反射的に腕を出す。
そこにばさりと、スーが四つん這いになってぶら下がった。
『ちっ! 追え!! ――― 失敗じゃないですか? 大人しく身を引いては?――― クソ! もう少しだ。あと少しもすればイチルも疲れて足を止めるだろう。――― そこを坊ちゃんがさっそうと現れ助けると。はぁ……なんてかわいらし……――― 煩い! やれと言ったのはお前だろう! 私も初めになんて馬鹿らしいと言ったではないか!!』
口を開いたスーから、聞いたことのある声が聞こえた。
アルベラは目を据わらせる。
「どんな偶然? 奇跡?」
アンナがケラケラと笑った。
「さあ。ミミロウはもともと運が良かったり悪かったりするからな」
「それ運は良いの? 良くないの? どっち?」
「……ごめん」
しゅんと項垂れたローブの小さい人物に、アルベラは「いえいえ、こちらこそごめんなさい」と慌てて頭を下げる。
ミミロウはアンナのパーティーの一人だ。
午前中に顔合わせをし、冒険者たちの紹介を受け、その後数人が今日受けたクエストをこなしに出かけていた。
夕方前には戻って来るとの事で、そしたら食事でもしようという話になったのだ。
もともと今日は一日開けていたので、アルベラは何の問題もないと、折角なら休日を楽しむことにした。
今日はスーもつれ出し、彼女の散歩も兼ねていた所、ミミロウがスーを気に入り動物の扱いにも慣れているようだったので彼だか彼女だか分からないが、とりあえずそのミミロウに一時預けていたのだ。
なのにその、本当に僅かな一時に奇跡が起きていた。
「ミミロウさん。これ、声の人たちの姿は見た?」
ミミロウはコクリと頷く。
「銀と薄い青の縦縞。長髪」
「正解!」
アルベラは空いてる方の片手で親指を立てる。
表情の見えないミミロウは数秒沈黙し、アルベラへぐっと親指を立てて返した。
***
「な、なんだお前ら……」
「縦縞」改め「フィブル・スタッフィング」は連れ込まれた薄暗い路地にて、粗暴な輩に囲まれていた。
彼が睨みつける輩の中、深いフードから茶色の三つ編みを一本肩に乗せるようにして垂らす少女は、彼の名を口にし微笑んだ。
「ごきげんよう、スタッフィング様」
「……お前。これは私を知っての行いか。どういうつもりだ? 身代金でも要求する気か?」
「まぁまぁ、落ち着きなよ坊っちゃん」
アンナがスタッフィングの隣に並び肩を抱いた。
彼は一瞬、露出の多い彼女の胸元に目を止め、「下品な女だ」と吐き捨て顔を逸らした。
アルベラの後ろにはスナクスとミミロウとゴヤ、更にその後ろにフードで顔を隠したエリーとガルカがいた。
ゴヤは一人の従者を後ろ手に捉え、エリーとガルカの足元には眠りについた二人の護衛が転がっている。護衛が騎士でなく傭兵ないのは今日の行いに対する後ろめたさの表れだろう。
スタッフィングの近くで身を潜めていた彼らは、アンナの仲間により引っ張り出され、今はアルベラの睡眠薬とラベンの香水で眠りについていた。
普通の睡眠薬も持っていたので、初めは「手っ取り早く」と思いそれを加減しながら使ってみたのだが、片方が耐性を持っているようで効かなかったのだ。そこで香水を試したところ、ぐっすりと眠りについてくれた。
どうやら、この魔法の耐性と薬の耐性は別物らしい。これはアルベラにとって、少しお得な情報だった。
「大丈夫ですよ。ちょっとお話を聞きしたいだけですし……。先にこちらを聞いていただいていいかしら?」
アルベラは自身の腰に手を触れる。
そこにはコートの下、逆さまになったスーがアルベラの体にへばりついているのだ。
『ちっ! 追え!! ――― 失敗じゃないですか? 大人しく身を引いては?―――……』
スーはコートの中から先ほど同様、アルベラ達に聞かせた内容を再生する。
(そろそろスーも忘れちゃうな)
流せるのはこれが最後の一回かもしれない。
「……」
スタッフィングは黙り込み、アルベラの後ろに捉えられていた彼の従者は「おや」と間が抜けた声を漏らした。
「私たち、先ほどあなたが少女を追い回してるのを目撃しましたの。それで、面白い光景でしたのでただその事情が知りたくなりまして」
「話せば開放すると? そんな言葉を信じられるか。本当の目的はなんだ?」
「まったくも~。余裕のない可愛い坊ちゃんだね。良いから答えなよ。なんであの子を追い回してたんだい? 自演で助けてヒーローになって……あんたこそどういうつもりだったのさ?」
アンナが無色透明の小さな香水瓶をスタッフィングの顔に構え、それを「シュシュシュシュ……」としつこいくらいに吹きかける。
五センチほどの細身の円柱の瓶はあっという間に空になった。
(姐さん……それ私の自白剤……。まだまだあるからいいけど遠慮ないな……)
顔をびしゃびしゃにされたお坊ちゃんは不愉快そうに「これはなんだ?! 何をかけた!!」と声を荒げる。
「おうおう、滴ってんねぇ。良い男になったじゃん」
アンナはケラケラ笑った。
彼の頬をつんつん突き、様子を見るように顔をのぞき込む。
「顔と体が良いからと調子に乗るなよ、この下民!」
「おや。下品な女もお好みだったかい、坊ちゃん?」
アンナがスタッフィングの顎を色っぽい手つきで撫でつける。彼は不快だと言わんばかりに顔をゆがめた。
「お前のような大人っぽくてセクシーな女は好きに決まってるだろう何を言う!」
表情と発言がまるであべこべだ。
本人は自分の発言に気付いていないような顔で堂々としていた。
「へぇ。可愛い坊やだね。事情を聴く前にお姉さんからご褒美を上げようか」
「ご褒美とは非常に気になる話だな!」
そう言いながらスタッフィングの表情と体は「何をする気だ」と言ってるかのようにアンナの体を押し返していた。拒否の体制だが、口では喜んでいる。見ていて混乱する図だ。
アンナは彼の顎を掴み、その唇に己の唇を近づける。
薄く開いた唇から舌がのぞき、それが薄暗い路地の中で艶めかしく照らいだ。
「う、ぐぅ……」
力で敵わないのを察し、スタッフィングは諦めたようにただ近づいてくる唇を凝視した。
「―――……っと、口付けたら私も自白しかねないもんな。って事でこっちだ。ありがたく思いな」
アンナは彼の顎から手を離すと、代わりに頭を掴み、彼の顔面を豊かな谷間に押し付けた。
アンナの胸部に埋まったスタッフィングの頭部、耳が真っ赤に染まった。
青年の頭を自分の胸に押し付けて、アンナは「どんなもんだい」とでも言いたげに顔を上げる。
両手で顔を覆いっているアルベラの姿が目に入り、アンナは「ぷっ」と拭き出した。
アルベラの手は大きく開かれ、指の隙間から真ん丸の目がこちらを覗き見ていた。
(は……! ついガン見していた……)
だが手を引っ込めることも、目を完全に覆い隠してしまう事もせず。アルベラはそのままアンナを見つめ返す。
その視線は「どうぞお好きに続けてください」と言っていた。
(見たいのか見たくないのかどっちなんだろうね)
アンナは年頃の少女にしては悠然としているお嬢様の姿に呆れる。
「や、やわらはい……はいほうか! ふほぉ!!」
「おっと、」
アンナは思い出したようにスタッフィングの頭を自分の胸から引きはがした。
彼は屈辱的な表情を浮かべ「くそお!!」と声を上げた。
「『くそ』とは何だい。嫌なのかい? 嬉しいのかい?」
アンナがニヤニヤと尋ねれば、「嬉しい! 最高だ!!」と貴族の坊っちゃんはハッキリと答える。自分では「嬉しいわけが無いだろう! 何て下品な女だ!!」とでも文句を言っているような顔で。
彼の有様がツボに入ったらしい。後ろでスナクスとゴヤの「ぶふっ!」と拭き出す声が聞こえた。
「良い趣味してんじゃねぇか嬢ちゃん……」と、薬の効果を聞いていたゴヤが、くつくつと笑い肩を揺らす。
「こっりゃあ想像よりえげつねぇ!!」と、スナクスは遠慮無くゲラゲラと声を上げ笑っていた。
(ああ、もう。ここまでくるといたたまれない……)
アルベラは両手を下ろし、学園の先輩である彼へ憐みの目を向けた。そんな彼女の視界はがくがくと揺れる。
アルベラの後ろの二人が、彼女の肩や背中をバンバンと叩いているのだ。
顔を合わせたのは今日が二回目だというのに、随分と砕けたものである。
なされるがまま、「わ、私『お嬢様』なんだが」とアルベラは心の中呟いた。
スタッフィングは絶望した表情で地べたに手をつきうなだれていた。
アンナのサービスが嬉しかったのも確かだが、それが屈辱的だったのも確かなのだろう。
「なんで私がこんな侮辱を受けなければならない……」
まだ薬が効いているのだから、項垂れる彼の口から洩れる悲壮感漂う言葉の数々も紛うことなき本心だ。
(可哀そう………………ではあるけど、そもそも自業自得だったな。そういえば)
彼にはこの後、部屋でゆっくり落ち込む時間が必要だろう、と気を使いかけたアルベラは気にせず本題へ話を戻す。
「人を怖い目に会わせておいて、自分が受けたら理不尽だとお嘆きかしら、スタッフィング様」
「何だ貴様」
スタッフィングは忌々しげな目をアルベラへ向ける。
「まさか私のあの行いを言ってるのか? だとしたら何様だ。私に罰でも下したつもりか?」
「話が早くて助かるわ。なぜあの女の子にあんな事を? 男たちをけしかけて、助けて、恩を着せて。目的は何かしら?」
「助ける所まで……」
彼は目を見開く。
「おうおう、答えてみろぉ。そしたらアンナの姉さんがまたご褒美くれるぞぉー」
スナクスが「キシシ」と笑いスタッフィングの脇を小突いた。
「そ、そんなこと……誰がお前らのような下民に話すか! 私を好きにさせたいからに決まっているだろう!」
「は?」
「はぁ?」
「おや」
「おん?」
「あらまぁ」
声の主は順にスナクス、アルベラ、アンナ、ゴヤ、エリーだ。アンナとエリーは楽しげに、三人は予想外の返答に呆気にとられたようなトーンだ。
ガルカから声はないが、楽しげに目を細めこの光景を楽しんでいた。
「好きに……って、好きにさせて手籠めにでも? あなたそんなに妾が欲しくて? あなたの言う『下民』からしてみたら、貴族様の気まぐれに振り回されて都合のいい遊び道具にされるなんていい迷惑だと思うのだけど。下民でなくたって、腹立って当然じゃない?」
アルベラの言葉に、彼は身を乗り出して「違う! 私は本気だ!」と声を上げる。
その勢いにアルベラは一歩後ずさった。
「私は彼女を本妻として迎えたいのだ!! 二人きりになってそう話したい!! なのに彼女が全く私に見向きもしない! だから私の素晴らしさに気付くきっかけを作ってやったのではないかっ!!」
「……いや、あんちゃん……『ではないかっ!!』って言われてもな……」
ゴヤが呆れて頭をかいた。
「フーン。嬢ちゃん、話が違うね。話よりもこじらせてらっしゃるわ、このぼっちゃん」
アンナはケラケラと笑いながらそう言う。
「そ、そうね……」
予想外の彼の発言に、アルベラも混乱していた。
自分がこんな事をした動機が軽いだけに、その返答の扱いに困った。
アルベラは本当にただ知りたかっただけなのだ。
だから「妾として落とし込む気だった」と彼が言ったとしても、「へ―そうだったの。すっきりした。じゃあね」で帰すつもりだったのだ。
だというのに……。
「本妻……?」
アルベラは首をかしぎ、彼の前に行きさらに質問を重ねる。
「あなた、普通に女性を部屋に連れ込んだりもしてるわよね」
「そうだ! 嗜み程度には当然だろう! なんで貴様がそんな事を知ってる?!」
「まあ嗜みに文句つけやしないけど……あの子が本気で好きだと? 妾にする気はないと? 平民なのに?? 平民は馬鹿にしてらっしゃるでしょう?」
「本当に好きだ! 当たり前だろう! 平民なのに本気で好きになってしまったからこまってるのではないか! 好きでなければなぜ私が平民など相手にしなければならない!! 私は彼女を守りたいのだ! そしてあの優秀さも、忍耐強さもかっている! 卒業後はぜひ我が領地で力になって欲しいのだ!!」
「けど、あの子には妾になれと言ったんでしょう?」
「そうだ!!!」
「なんでそんな堂々としてんよ……」
アルベラは目を据わらせた。
アルベラも、一通りの二コーラとスタッフィングの話は知っていた。彼に水をかけた翌日、エリーが使用人たちも知る彼らの話を聞かせてくれたのだ。
「ストーカーして怯えさせて、みみっちいこと言って脅しておいて本命……。まあ、本命だからみっともなく付け回したんだろうけど」
「だからなんで貴様がそんな事を知っている!! その通りだ!!」
「おいおい。あんたそりゃ色々おかしくねー? 本命なら本命って言ってやれよ。妾なんて言うからややこしくなったんじゃねーの? 男として情けねーわ」
スナクスが呆れの言葉を投げかけた。ごもっともだと、アルベラとゴヤが頷く。アンナはただニヤニヤと口元を歪ませていた。
「仕方がないだろう! 他の貴族の目が合ったのだぞ! 平民相手に『私の本妻になれ』など口が裂けても言えるか!!」
「……はぁ。じゃあどうしたいのよ」
「本妻にしたい!」
「とっととプライド捨てろ!」
勢いのまま声を上げ、アルベラはため息をついた。
「もうこの人達には帰ってもらっていかなぁ」とアルベラが考える前、冒険者たちが楽し気に、彼の恋がどうしたら成就するかを面白おかしくアドバイスしていた。
「いいか。その子が好きならもう付け回すの止めとけ。距離取り直すのも大事だぞ」とスナクス。
「そうだぞ。ほら、手紙だ。手紙出せ。そんで顔見せんな。良いか、派手なのは駄目だ。シンプルで畏まった便せん使って先ずは謝罪だ。返事が来るようになったら少しずつ色味とか装飾とか、その子好みのに変えてったりして、時間をかけて面会の許しを得るんだ」と、ゴヤ。
「なんてじじ臭くみみっちいやり方だ! 好かん!!」
「てめぇぶん殴るぞ」
「ならさっさと押し倒しちゃいなよ。既成事実作って、子供さっさと生ませてその子人質に屋敷に閉じ込めちまいなって」とアンナ。
「素直、大事って教わった。素直に『好き』っていえば?」とミミロウ。
皆好き勝手、スタッフィングを囲って言いたい放題だ。
(楽しんでるなぁ……)
アルベラは目を据わらせる。
「もういいわ。エリー、適当に馬車を」
と言って後ろを振り返れば、ゴヤからエリーへ預けられた、スタッフィングの従者と目があい会釈をされた。
アルベラはついつられて会釈をし返していた。
「馬車の手配ですか。感謝いたします」
三十歳前後と見える彼は緊張感もなく、マイペースに礼の言葉を述べる。
「は、はあ」
「まあ、ああいう感じでして。本当素直じゃなくてまいっちゃいますよ」
「は、はあ……」
(なんだろうこの人。気が抜けるな)
ゴヤが馬車へ、爆睡した傭兵達と、その後弄りたいだけ弄られて眠らされたスタッフィングを運び込む。
それが終わると、帰りの事を考えて、あえて眠らさずにおいた従者の彼へ、アンナが片手を上げにかっと笑った。
「んじゃ。後はあんた一人で大丈夫だな。気ぃ付けて帰んなよ」
「はい。お手数おかけしました」
「あんた年上なんだから、ちゃんとその坊ちゃんに道示してやれよ。ったく。拗れに拗れてあんな醜態晒すはめになって……哀れで仕方ねぇぜ」とスナクス。
「はぁ。まあ、頑張ってみます」
従者は頭を掻きながらへらっと笑った。その場の誰もに、「ああ、こりゃ駄目だな」と思わせる気の抜けた返答だった。
馬車が動き出し学園へ向かっていくと、エリーとガルカが「一仕事終えた」とばかりにフードを外す。
ミミロウのみが唯一馬車に手を振ってしっかり見送っていた。
「で、あの男の弱みを何に使う? 平民の女にした情けない行いとその本心を、学園と領地中に知らしめて辱めるか?」
「鬼かよ……」
「やめてやれ」
と、スナクスとゴヤが零す。
「何にも使わないわよ。あれは保留。本人たちで適当に決着付けるでしょ。……それでニコーラとの件を教訓に次の恋頑張れって感じ」
「お嬢様、実らないこと前提なのね」
「うん。二コーラに良い感じの人ができて、スタッフィングが悲しみから激やせするとこまでは読めた」
「あらあら」とエリーは頬に手を当ててほほ笑む。
「それだけか、つまらん。せっかくなら奴の恋心に更に拍車をかけてその相手に挑ませるくらいはしたい。……そうだ。学園に立派な泥沼を作り上げてやるか? 人を次々に飲み込んでいく巨大で深い泥沼だ。折角なら見えない方が良いな。運動場で突然人が消えたら面白いだろう」
「いらん。面白くない」
アルベラは即答する。
(なんで恋路の泥沼からガチの泥沼に興味が移るかな……)
「なーなー、それより嬢ちゃ~ん。あの自白剤面白過ぎだろ。私にも分けてくれよ~、今日の奴五本ぶんくらいさぁ~。大事につかうからさぁ~あ」
もうスタッフィングの件はどうでも良くなったのか、アンナの興味はあの自白剤へと向いていた。
アルベラの首に腕を絡めてねだる彼女に、ゴヤがごく低い冷静な声で告げる。
「頼む嬢ちゃん。こいつにだけは絶対渡すな。頼む。 あっちの方でもきっと大変な事になるぞ」
「え、ええ。了解」
アルべラのしっかりと頷きに、後ろでアンナが「けち~!」と拗ねるような声を上げた。
0
お気に入りに追加
87
あなたにおすすめの小説
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。
私の家族はハイスペックです! 落ちこぼれ転生末姫ですが溺愛されつつ世界救っちゃいます!
りーさん
ファンタジー
ある日、突然生まれ変わっていた。理由はわからないけど、私は末っ子のお姫さまになったらしい。
でも、このお姫さま、なんか放置気味!?と思っていたら、お兄さんやお姉さん、お父さんやお母さんのスペックが高すぎるのが原因みたい。
こうなったら、こうなったでがんばる!放置されてるんなら、なにしてもいいよね!
のんびりマイペースをモットーに、私は好きに生きようと思ったんだけど、実は私は、重要な使命で転生していて、それを遂行するために神器までもらってしまいました!でも、私は私で楽しく暮らしたいと思います!
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜
福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。
彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。
だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。
「お義姉さま!」 . .
「姉などと呼ばないでください、メリルさん」
しかし、今はまだ辛抱のとき。
セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。
──これは、20年前の断罪劇の続き。
喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。
※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。
旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』
※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。
※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる