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第四章 三人目のハル・ウェルディス
小鳥の密書
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朝日を浴びて山肌が明るさを増していく。
シェイドは椅子に掛けて、窓際からそれをぼんやりと眺めていた。これが、ここから見る最後の朝になるかもしれないと思いながら。
待ちわびていた知らせが、今朝早く届けられたのだ。
あの瑠璃色の羽をもつ鳥が夜明けと同時に運んできたものだ。
シェイドは自分たちが生きて囚われていることを知らせるために、餌付けした小鳥に自らの髪の束を結び付けて離した。ミスルの離宮で見かけた青い羽根を持つ鳥が、あの離宮で待つ者に届くことを信じて。
同じような鳥がこの山にはたくさんいるのかもしれないし、髪を結び付けた鳥がまっすぐ離宮に戻る保証もない。離宮に戻ったとしても、誰かが見つけてくれるとは限らない。
それでも何もしないよりはいいと、一縷の望みを託したものだが、返事はすぐにあった。
翌朝、小鳥は足に小さな蔓を巻き付けてやってきたのだ。離宮の温室で栽培されている『シェイド』の花の蔓だった。
どれほど嬉しかっただろうか。
シェイドはパンくずに夢中の小鳥の足に、今度は折り畳んで用意しておいた小さな紙片をそっと結びつけた。この旧砦の名と部隊について暗号にして記したものだ。
その翌朝やってきた小鳥は、今度は足に青く固い小さな蕾を結び付けられていた。
『花開く時まで待て』――暗号を読んだ者からの返答を、シェイドはそう読み取った。
そしてその『時』とは、まさに今夜だった。
今朝方窓辺にやってきた小鳥の足には、小さな紙片が括りつけられていた。
逢瀬を契るささやかな恋文のように、そこにはたった一行『朔の夜に忍んでまいります』――サラトリアの筆跡でそれだけが記されていた。
今夜は月の出ない新月の夜。星以外に地上を照らすもののない暗闇の夜だ。
救出にこれほど相応しい夜があるだろうか。
ゆっくりと息を吐き、恐れと緊張で震え出しそうな自分を抑える。
今夜を逃せば機会が再び巡ってくることはないかもしれない。失敗は許されない。
ウェルディの加護を乞うように、シェイドは組んだ両手に額を押し付けた。
扉の向こうに人の気配を感じて、シェイドは窓に向けていた顔を振り向かせた。
ゾッとすると同時に、体の芯が熱をもって疼き始めるのを自覚する。
初めは死んだ方がましだと思うほどつらかったことなのに、どんな環境にも慣れてしまえるものだと、シェイドは自嘲気味に考えた。
待つまでもなく施錠されていた扉が開き、男が一人、顔を覗かせた。
「……お利口にして待ってたか?」
揶揄するような言葉とともに入ってきたのは傭兵たちをまとめるコーエンだった。そしてその後ろから続くのは二人の領兵。続きの部屋で見張りに当たっている男と、階段の下を警備している男だ。
コーエンは窓際の椅子に座るシェイドに手を差し出すと、立たせて寝台の方へ導いた。
シェイドは逆らわず、コーエンに背を抱かれるようにして素直に従う。領兵の一人が慣れた手つきで寝台の上に外套の使い古したものを敷いた。シェイドは身体に巻いていた掛布を床に落とし、促されるまま裸でそこに横たわった。
「こいつを咥えてろ。ここは声が階下に丸聞こえだからな」
いつものように丸めた布を口の中に押し込まれる。男の精の匂いが染みついた、不潔で吐き気を催しそうな代物だが、汚れた布を咥えさせること自体が男たちにとっては愉しみの一つなのだろう。
シェイドが大人しくそれを噛み締めると、男たちは目配せしあっていやらしい嗤いを浮かべた。
立てて開いた膝の間に一人目の男が入ってくる。シェイドは肌身離さず手に持っていた経典を心臓の真上に乗せて、祈るように両手で押さえた。
この小さな経典はラナダーンから与えられたものだ。
こうすれば胸の中央に烙印されたファラスの紋章を隠すと同時に、いまだ腫れ上がってじくじくと痛む左胸の傷を、腕で押さえて隠すことができる。
「昨日はここに若様のお情けをいただいたか?」
シェイドが答えられぬのを見越したうえで、領兵が言葉で嬲ってきた。
男は指に油を取って、連日の荒淫で花開かんばかりにぷっくり膨れた窄まりにそれを塗す。下手に傷を残してラナダーンに不審を抱かれないためだ。
「……ゥン!……」
油断しているといきなり二本の指が根元まで入り込んできて、シェイドはくぐもった声で喘いだ。
使われ過ぎてひりつくその場所は、指で探られただけで、ぞくぞくした痺れが背筋を走り抜けてくる。
臍から下が別の淫猥な生き物になってしまったように、意志に関わりなく腰が淫らに揺らぎ、肉壺の中に入れられた指をしゃぶり始めた。
「慣らす必要なんぞなかったな」
「……ンンッ!」
男は言いざま、指で拡げた窄まりに猛った肉棒を宛がい、力任せに突き入れてきた。先走りが滑りになって一気に奥まで入り込む。尻に毛むくじゃらの陰嚢が当たった。
「どうだ、いいか」
確信を込めて男が問いかけた。シェイドは観念しきったようにガクガクと頷く。
腹の中を脈打つ肉の芯が埋めている。ピクピクと痙攣するそれに好い場所を押し上げられて、シェイドは雄の匂いがする布を噛み締めながら、喜悦の啜り泣きを漏らした。
シェイドは椅子に掛けて、窓際からそれをぼんやりと眺めていた。これが、ここから見る最後の朝になるかもしれないと思いながら。
待ちわびていた知らせが、今朝早く届けられたのだ。
あの瑠璃色の羽をもつ鳥が夜明けと同時に運んできたものだ。
シェイドは自分たちが生きて囚われていることを知らせるために、餌付けした小鳥に自らの髪の束を結び付けて離した。ミスルの離宮で見かけた青い羽根を持つ鳥が、あの離宮で待つ者に届くことを信じて。
同じような鳥がこの山にはたくさんいるのかもしれないし、髪を結び付けた鳥がまっすぐ離宮に戻る保証もない。離宮に戻ったとしても、誰かが見つけてくれるとは限らない。
それでも何もしないよりはいいと、一縷の望みを託したものだが、返事はすぐにあった。
翌朝、小鳥は足に小さな蔓を巻き付けてやってきたのだ。離宮の温室で栽培されている『シェイド』の花の蔓だった。
どれほど嬉しかっただろうか。
シェイドはパンくずに夢中の小鳥の足に、今度は折り畳んで用意しておいた小さな紙片をそっと結びつけた。この旧砦の名と部隊について暗号にして記したものだ。
その翌朝やってきた小鳥は、今度は足に青く固い小さな蕾を結び付けられていた。
『花開く時まで待て』――暗号を読んだ者からの返答を、シェイドはそう読み取った。
そしてその『時』とは、まさに今夜だった。
今朝方窓辺にやってきた小鳥の足には、小さな紙片が括りつけられていた。
逢瀬を契るささやかな恋文のように、そこにはたった一行『朔の夜に忍んでまいります』――サラトリアの筆跡でそれだけが記されていた。
今夜は月の出ない新月の夜。星以外に地上を照らすもののない暗闇の夜だ。
救出にこれほど相応しい夜があるだろうか。
ゆっくりと息を吐き、恐れと緊張で震え出しそうな自分を抑える。
今夜を逃せば機会が再び巡ってくることはないかもしれない。失敗は許されない。
ウェルディの加護を乞うように、シェイドは組んだ両手に額を押し付けた。
扉の向こうに人の気配を感じて、シェイドは窓に向けていた顔を振り向かせた。
ゾッとすると同時に、体の芯が熱をもって疼き始めるのを自覚する。
初めは死んだ方がましだと思うほどつらかったことなのに、どんな環境にも慣れてしまえるものだと、シェイドは自嘲気味に考えた。
待つまでもなく施錠されていた扉が開き、男が一人、顔を覗かせた。
「……お利口にして待ってたか?」
揶揄するような言葉とともに入ってきたのは傭兵たちをまとめるコーエンだった。そしてその後ろから続くのは二人の領兵。続きの部屋で見張りに当たっている男と、階段の下を警備している男だ。
コーエンは窓際の椅子に座るシェイドに手を差し出すと、立たせて寝台の方へ導いた。
シェイドは逆らわず、コーエンに背を抱かれるようにして素直に従う。領兵の一人が慣れた手つきで寝台の上に外套の使い古したものを敷いた。シェイドは身体に巻いていた掛布を床に落とし、促されるまま裸でそこに横たわった。
「こいつを咥えてろ。ここは声が階下に丸聞こえだからな」
いつものように丸めた布を口の中に押し込まれる。男の精の匂いが染みついた、不潔で吐き気を催しそうな代物だが、汚れた布を咥えさせること自体が男たちにとっては愉しみの一つなのだろう。
シェイドが大人しくそれを噛み締めると、男たちは目配せしあっていやらしい嗤いを浮かべた。
立てて開いた膝の間に一人目の男が入ってくる。シェイドは肌身離さず手に持っていた経典を心臓の真上に乗せて、祈るように両手で押さえた。
この小さな経典はラナダーンから与えられたものだ。
こうすれば胸の中央に烙印されたファラスの紋章を隠すと同時に、いまだ腫れ上がってじくじくと痛む左胸の傷を、腕で押さえて隠すことができる。
「昨日はここに若様のお情けをいただいたか?」
シェイドが答えられぬのを見越したうえで、領兵が言葉で嬲ってきた。
男は指に油を取って、連日の荒淫で花開かんばかりにぷっくり膨れた窄まりにそれを塗す。下手に傷を残してラナダーンに不審を抱かれないためだ。
「……ゥン!……」
油断しているといきなり二本の指が根元まで入り込んできて、シェイドはくぐもった声で喘いだ。
使われ過ぎてひりつくその場所は、指で探られただけで、ぞくぞくした痺れが背筋を走り抜けてくる。
臍から下が別の淫猥な生き物になってしまったように、意志に関わりなく腰が淫らに揺らぎ、肉壺の中に入れられた指をしゃぶり始めた。
「慣らす必要なんぞなかったな」
「……ンンッ!」
男は言いざま、指で拡げた窄まりに猛った肉棒を宛がい、力任せに突き入れてきた。先走りが滑りになって一気に奥まで入り込む。尻に毛むくじゃらの陰嚢が当たった。
「どうだ、いいか」
確信を込めて男が問いかけた。シェイドは観念しきったようにガクガクと頷く。
腹の中を脈打つ肉の芯が埋めている。ピクピクと痙攣するそれに好い場所を押し上げられて、シェイドは雄の匂いがする布を噛み締めながら、喜悦の啜り泣きを漏らした。
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