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君と歩いた道2

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「長くて余命1年ですね」
真っ白な病院の一室で
私は担当医から余命宣告をされた

進行の度合いが早く、治療方法もない
医師が淡々と病気の説明を続ける中
私は彼氏との未来について考えていた

2人で住んでる部屋に帰ると
私は彼に病気のことを言えなかった
「検査したらさ、なんか機械のエラーだったよ」
「そっかあ、良かった」
そう言って彼は半泣きになる

「なんで泣くのよ」
「だってさあ、心配で」
こんな優しい人を残して
私はこの世を去るんだ

彼は泣くだろうか
自暴自棄になるだろうか
きっと優しい彼は
私のことを忘れられず
将来がめちゃくちゃになってしまう

そう思った私は
「他に好きな人ができたから別れよう」
そう言って彼から離れることにした

今のうちに離れれば
私の病気のことを知る事もない
嫌われて
愛想をつかされて
私になんか興味ないって

そう思われれば
きっと彼はまた違う人と幸せになれる
私はその後、淡々と実家に戻る準備をした

自分の荷物を運び終わり
2人で住んでた部屋から出ていく日
実質、今日が2人の最後の日になった

(じゃあね、今までありがとう)
その言葉さえ言い終えれば
彼はきっと幸せになれる
私は意を決して口を開くが
心が勝手に全く別の言葉を紡ぐ

「最後の日くらいさ
  最高の思い出にしようよ」
私は何を言ってるんだ
こんなこと言って、また彼を苦しめて

当然、彼には断られて
私は落ち込みながら部屋を出ようとすると
「ちょっと待って」
と彼に引き止められた

ご飯くらいなら、そう私に言う彼は
とても悲しげな顔をしていて
本当にこれで良かったのか
私には分からなくなる

その後、思い出のレストランに行って
2人でよく歩いた道をまた一緒に歩いて
公園を通り過ぎて
駅に向かった

初めて話しかけられたのは
私があの店でバイトをしていた時で
告白されたのは
あの滑り台が長い公園で

私たちは駅に着くといつも反対のホームに行って
お互い手を振り合いながら別れを惜しんで
私が思い出を口にしつつ
心の中で整理していると彼は
「もういいって!」
と声を荒らげた

「さっきからなんなんだよ
  もういいだろ、今日からはまた別方向だよ
  子供と3人でこんなとこ歩く事も絶対ないし
  僕達は二度と会話することもないんだよ」

彼から悲しい現実を突きつけられる
そう、私たちはここで終わって
もう2人で描いた未来はやってこない

「私の事、嫌いになった?」
「嫌いっていうか、もう興味ない
  そんな無神経な人間だと思わなかったし
  僕もいい経験になったよ」

良かった…
これで私の当初の目的は達成された
本当に申し訳ないけど
2人で過ごした時間が嘘になってしまうけど
私は彼に嫌われて
興味ないって言われて
心から救われた気持ちになる

「あのさ…」
彼は悲しげな顔でまた口を開く
私は一瞬期待してしまう

だけど
同時にその期待が思い過ごしになれと
心から強く思う

「俺、反対側だから…
  今までありがと。バイバイ」
そう言って彼は
駅の階段を駆け上がった

私は改札を抜けてホームに出る
すると彼は
向かいのホームからこちらを見ていた

私たちは最後に
お互いに手を振り合った
またね、じゃなく
これで最後という意味を込めて

彼に聞こえないように
小さい声で最後の言葉を贈る
「今まで本当にありがとう
  ごめんね、一緒にいれなくて
  ずっとずっと大好きだよ」

言い終えると涙で視界が滲む
私は彼にバレないように後ろを向くと
彼の側のホームに電車が到着する

最後に一目だけ彼の姿を焼き付けたい
そう思って振り向くが
すでに電車は発進していた

私はその場に座り込んで
声を出して泣いてしまった
これで良かったんだ
私は彼に幸せになってもらいたくて
その願いも叶えられて
だけど
涙が止まらなかった

「大丈夫?」
不意に後ろから声をかけられる
振り向くと
そこには彼の姿があった

「なんで…」
「それはこっちのセリフだよ…
  なんで泣いてるの?
  もしかしてなんか嘘ついてる?」

「嘘なんかついてないよ!
   なんでこっちに来たの
   もう私たちは終わったの!
  あなたは早く次の人を見つけて…」

私が混乱して叫んでいると
彼はそっと私を抱きしめた

「ずっと考えてたんだ
   君と離れたあとの未来を」
「私と…?」
「うん。色々考えて分かった
  僕は君とじゃないと生きられない
  生きた心地がしない
  だからさ、もしできれば
  もう一度やり直して欲しいな」

「私の余命が、あと1年だとしても?」
「それだけあれば
  僕の人生が幸せになるのに十分すぎるよ
  君との思い出だけで
  ずっと生きてられるくらいにね」

その言葉を聞いて、私も彼を抱きしめる
「ごめんね、本当は今でも大好きだよ」
「僕もだよ…2人で生きよう」
「うん」

2人でひとしきり泣いた後
私たちは手を繋いで
同じ方向に向かう電車に乗った
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