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とある日の電話
しおりを挟む春休みということもあり、友人とずっと電話で話し続け、私は昨夜、徹夜した。そのせいでかなり眠く、18時には眠気に負け、気持ち良く眠っていた。
そんなときだ。
着信音が響き、叩き起されたのは。
「……折角気持ち良く寝てたのに、起こした奴は誰だ!」
機嫌が悪くなるのは当然だろう。
そして、敵意丸出しで画面を見ると、出ていたのは『父親(1代目)』という文字だった。
「……うわ。最悪。寝起きで暗号解けってこと?無理なんだけど」
寝起きだからか、思ったことがすぐに口に出る。とはいえ、かかってきたものは仕方ない、とばかりに電話に出る。
『あしゃーる?』
「……は?」
第一声がこれだ。思わずマヌケな声が出るが、誰だってこうなると思う。
よし、まず整理しよう。あしゃーる、とは?あしゃ……。朝?いや、でもそうなると『る』の意味が分からない。これは稀に見る超上級編では?
「ごめん、もう一回お願い」
もしかしたら、私の聞き間違いだったのかもしれない。そんな想いで聞き直す。
『あしゃてる?』
うん、一文字だけ変わった。あしゃは朝?てるは多分、空いてる?に変わる。となると、朝空いてる?いや、これは違う気がする。だが、多分最後は合ってる気がする。……明日空いてる?か。うん、なるほど。
「あいてるよー」
ここで予定があれば良かったのだが、残念ながら明日は一日暇だった。強いて言うのならばゲームでもやって一日中ゴロゴロしていようかと思っていた。
『かもきたいからっしょーて』
……うん、今なんて?『かもきたい』ってなに?からは多分、そのままとして。『っしょーて』?あ、一緒にきてか。かもきたい?鴨着たい?いや、絶対に違うな。
「オーケー、ワンモアプリーズ?ゆっくり、ゆっくりね?」
無理だ、分かるわけがない。『かもきたい』ってなんだよ。日本語で話して。お願いだから。
『あーしゃ、しょーかいたいから、しょにきーて』
おいコラ。また変わりやがったな。せめて統一しやがれ。
あーしゃ、は多分最初のように変換すると、明日。その次は何となくだが分かった。買いいきたいだと思う。『かものきたい』と『かいきたい』は同じような言葉、最初は買い物行きたいと言ったのだろう。『しょにきーて』は普通に変換すると『署に聞いて』だが、私に電話してきたことと前の文からすると、やはり一緒にきて、だろう。
つまり、この文は
『明日、買い物いきたいから一緒にきて』
となるわけだ。
しょーは多分、ものを言っているのだろう。
「何買いたいの?」
『しょーか、いたい』
「……は?」
しょーか……。消化?痛い?は?何言ってるのか全く理解できないのですが。
「もう一回」
『しょーいたい』
また変わったよ。誰か、コレ翻訳してくれる人いません?
「……ごめん、聞き取れない。ちょっと待ってて」
何するのかって?母親に任せるに決まってる。こんなの相手にしていられるか。私はまだ眠いのだ。
「お母さーん、暗号解読あとは任せた」
「営業時間外だから断る。娘なんだからそれくらいなんとかしなさい」
「無理だって!?というか、営業時間なんてあったんだ!?そもそも、これ娘だからってなんとかなるものじゃないと思うのですが!?」
「それを何とかするのが娘でしょう」
オーケーオーケー、よく分かった。この状態の母親はダメだ。うん、自分で何とかするしかない。
「ごめん。で、さっきの話な……【プツッ】」
ピーピーピー。
電話が切れた。
「……は?はぁぁぁぁぁ!?何あれ!ひどっ!はぁ?自分から掛けてきて、起こしておきながら何も言わずに切るってなに!意味がわからないんですけど!こっちは必死に暗号解読してるのに!」
ブチ切れた私に対し、母親が一言。
「うるさい」
「だって、切る!?普通やらないでしょ!ありえないって!」
「はいはい、分かったから静かにして」
「冷たっ!娘への対応酷っ!」
「冷たくて結構」
……まぁ、父親にLI○Eくらいはしておこう。
「なにか買いたいの?」
と。
そしてその結果、更にキレることになる。
だって、だ。明日、などと言っていたからLI○Eを送ったのにも関わらず、四時間経っても既読はつかず、次の日になってようやく既読がつき、返信は来なかった。
お分かりいただけるだろうか。急用かと思いLI○Eがくるのをずっと待っていたのだ。徹夜で。眠いのを我慢して!にも関わらず、返信が来るどころか既読もつかないとは何事だ。
「ふっざけんなぁぁぁぁぁ!」
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