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「エミリア!またお前は勝手に抜け出そうとして!何度言えば分かる!ちゃんと聞かないか!」


私がチラチラと時計を見ていたことがバレ、更に怒られる。だが、仕方ないと思うのだ。一応、昨日だってちゃんと夕食前までには帰ってきたし、今日はこれからまたエルさんのところに行く予定なのだ。時間も気にするだろう。


「ほら、父さんも少し落ち着いて。リアも、自分が悪いというのは分かっているんだろう?」

「……それは、まあ。でも、他の授業はちゃんと受けているし、夕食までには帰ってきています!」


お兄様が私とお父様の間に入っているからか、いつもよりは怒られない。さすがお兄様。


「そういう問題ではない!護衛も付けず外に出ることが問題だと言っているんだ!」

「護衛なんて付けなくとも危険なんてありません!それに、護衛なんていたら怒られます!」

「なんだと!?」


エルさんは基本的に人が好きではない。私が護衛なんて付けて行ったら絶対に怒られるし、追い返される。もしかしたら、もう教えてもらえないかもしれない。そうなることだけは避けたいのだ。


「なら、僕が一緒に行くよ。父さんもそれならいいでしょう?」

「……アーレイ、そうは言ってもだな」

「ダメです!」

「リア、あれも嫌これも嫌じゃあ認められないのは分かっているだろう。これでも、最大限譲歩したつもりだよ?それでも嫌だと言うのなら、僕はこれ以上リアを擁護できないし、父さんの言う通り閉じ込めることになる。リアはどちらがいい?」


それは、分かっていた。だが、やはりエルさんに聞かずに……。というのは気が引けるし、怖かった。


「……分かりました。じゃあ、エルさんに聞いてみます」


仕方ない。あまり、というかかなり使いたくはなかったが、諦めるしかない。

私は水晶を取り出すと、魔力を流し呼びかけた。
しばらくして、エルさんの顔が映る。相変わらず機嫌が悪そうにしている。


『……なんだ?今日は来れないという話ならば』

「行きます、行きますからね!もう爆発させませんもん!」

『……はぁ。そうなればいいが。で、用件はなんだ』


危ない、忘れていた。エルさんが今日来れないのなら、なんていうから悪いのだ。


「その、ですね……?ほら、私って家抜け出して行ってたじゃないですか」


更に機嫌が悪そうになった。うん、なんとなく分かる。お前は何をやっているんだ、とでも思っているのだろう。


「それがですね?お父様とお兄様にバレまして……。護衛を付けるか、お兄様を連れてくかという条件を突きつけられて、どうしましょう?」

【……はぁ。分かった。一人、二人程度なら好きにしろ。で、今日は来るんだな?】

「はい!」


渋々、というよりも呆れの方が強いような表情だったものの、一応エルさんの許しが貰えた。


【来る時に連絡しろ。今日は迎えに行く。でなければ、普通の人間ならば辿り着けず迷うことになるからな】

「え?じゃあ、私は……?」

【お前は魔力で空間をこじ開けたんだろうが】

「エルさんエルさん、それ私初耳です」

【わざわざ説明することでもないだろう?】


つまり、だ。私はエルさんの張った結界を魔力でこじ開け、入り込んだと。……おおう。完全に不法侵入じゃないですか。エルさんはよく、そんな危険人物を家にあげたな。


【それだけなら切るぞ】

「あ、はい!ありがとうございました!また後で連絡しますね!」
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