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255.抵抗

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 アメジストの「謙遜しなくても」との言葉に心救われたジャニスティはふぅーと、息を整えた。そしていつもの冷静沈着で落ち着いた彼に、戻る。

「すみません、つい夢中に話を」
「そんな、謝らないで。私、珍しくジャニスがたくさんお話してくれたこと、とても嬉しいのよ」

 少しだけ口籠りながら頬を染めた彼女の様子にジャニスティは優しく、微笑。互いの笑顔から温かな空気が流れたことでホッとしたアメジストは自分の考えを詳細に、述べ始めた。

「私、思うの。この子クォーツにとって初めてかもしれない、見たことなかったかもしれない街――外の世界。色んな不安もある中でジャニスの存在は、心強い味方であり、大好きなお兄様のはず。だからこそ貴方の言葉を信じて、頑張ろうと、一生懸命に努力しているって」

「私にはまだ……そこまでの力は、ありません」
貴女様アメジスト様のように、愛の溢れる者にはなれない)

――自分に自信が、持てないんだ。

 いつも凛々しい彼だが心の奥底では堕落だらくしていた頃の自分の影が今もなお消えずにいる。そして“家族”という関係がどのようなものなのか? 正解を探す彼はクォーツにどう接すれば良いのかと、手探りなのである。

 しかしそんな彼の凍り付いた心に優しく語りかけるようにアメジストは言葉を、続ける。

「違うわ、ジャニス。私にはその確信が」
「……?」

「それはね、これまでずっと、傍で指導をしてもらってきた私にしか解らない、貴方の心。その力を、一番よく知っているのです」

「お嬢様……身に余るお言葉、恐縮です」

 感謝の気持ちを伝えるジャニスティの言葉にアメジストは左右に数回、ゆっくりと頭を振り「だって、本当のことですもの」と答えた。

(あぁ、そうか。私はやはりベルメルシア家に忠誠を誓いそして、ここで微笑むアメジスト様の為に、今後も生きてゆきたい)

――運命に、あらがいたいんだ。

「フッ、お嬢様にはかないませんね。しかし私も、まだまだ勉強が必要です」

「そうなの? うふ! では今度、クォーツと三人でお勉強会を開きましょう」

「ん? えぇ、ありがとうございます」
(勉強会、か。ずっと一人で、書庫の本を読むだけだったからな)

 ジャニスティがこの十年間、ベルメルシア家の書庫に眠る本の数々を読み続けている理由は、いくつかある。その内の一つは“終幕村”で人生を棒に振ってきた時代を何とか取り戻したいという強き思い。該博がいはくな知識を持つことにより『自信に繋げたい』という、心の表れでもあった。
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