246 / 382
246.収拾
しおりを挟む「だからですわ! 貴女の持つ高貴さも、その謙虚なお姿も、自然と周りに皆さんが集まってくるのも……それで、私たちは貴女の事が羨ましくなって、それで、あんな風に言っていましたけれど。でも本音は――本当は、“いいなぁ”って……」
自身が抱いた卑屈な考えを後悔し叫ぶように言い続けていた彼女はハッと我に返るよう言葉に、詰まる。
話が途切れ数十秒待った後、やり取りを静観していた先生が口を開く。
「彼女たちだけではなく、今この場にいる生徒の皆様には日々、先生方がお伝えしていると思います。たとえ何処へいようとも心は淀みなく清らかに流れるように。そして――『くれぐれも周囲に目を配りその立ち振る舞いの美しさを忘れないよう胸に刻み、行動するように』と」
その言葉を聞きこの場にいる生徒は皆、静かに頷いた。
顔を見合わせ落ち着いた御嬢様方の表情はだんだんと、柔らかくなっていく。そしてアメジストへ改めてお辞儀をするとまた、話し始めた。
「本当は私たち、貴女と仲良くお話がしたくて」
恥ずかしそうに自分の素直な気持ちを話した御嬢様を見つめ頬をピンク色に染めたアメジストの背中を、押したのは。
「アメジストお嬢様、本当に素敵なご友人ばかりですね」
「ジャニス……」
(私も皆様と、仲良くしたい)
目を瞑り一度ゆっくりと深呼吸をする。そうして心を落ち着かせたアメジストはあの華美な御嬢様の元へ行き手を取り彼女の言葉に、応えた。
「あの、ぜひ。もしよろしければ、私も皆様と仲良くしたいです」
「本当……本当に?」
「はい! 本当です」
「ありがとう! あんな事言って、ごめんなさい」
彼女の問いかけにアメジストは笑いながら、返事をする。その時、吹いた穏やかな風が皆の心を癒し和ませていく。
「うふふ! なるほど、なるほど♪ みんな、アメジストちゃんと仲良くなりたかったのですねッ」
「あの、貴女にもお詫びを、ごめんなさい。そしてお礼を、ありがとう」
「いえいえ、とんでもない! それよりお姉様方♪ ぜひ私もお友達になって頂きたいです」
「もちろんですわ! こちらこそ、お願いします」
「えっと、フレミージュさん? 貴女の寛大で優しいお心に感謝を……ありがとう」
「わぁ~い、では! もう此処にいるみーんなお友達ってことで!!」
あはは――ッ!!
緊張感は一気に解け生徒たちの笑い声が響いた、校門前。
そんな明るく素敵な放課後に場を収めたのは、他でもない。
アメジストの友人、フレミージュであった。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
異世界に召喚されたけど間違いだからって棄てられました
ピコっぴ
ファンタジー
【異世界に召喚されましたが、間違いだったようです】
ノベルアッププラス小説大賞一次選考通過作品です
※自筆挿絵要注意⭐
表紙はhake様に頂いたファンアートです
(Twitter)https://mobile.twitter.com/hake_choco
異世界召喚などというファンタジーな経験しました。
でも、間違いだったようです。
それならさっさと帰してくれればいいのに、聖女じゃないから神殿に置いておけないって放り出されました。
誘拐同然に呼びつけておいてなんて言いぐさなの!?
あまりのひどい仕打ち!
私はどうしたらいいの……!?
放置された公爵令嬢が幸せになるまで
こうじ
ファンタジー
アイネス・カンラダは物心ついた時から家族に放置されていた。両親の顔も知らないし兄や妹がいる事は知っているが顔も話した事もない。ずっと離れで暮らし自分の事は自分でやっている。そんな日々を過ごしていた彼女が幸せになる話。
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
意地を張っていたら6年もたってしまいました
Hkei
恋愛
「セドリック様が悪いのですわ!」
「そうか?」
婚約者である私の誕生日パーティーで他の令嬢ばかり褒めて、そんなに私のことが嫌いですか!
「もう…セドリック様なんて大嫌いです!!」
その後意地を張っていたら6年もたってしまっていた二人の話。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
お飾り妻は離縁されたい。「君を愛する事はできない」とおっしゃった筈の旦那様。なぜか聖女と呼んで溺愛してきます!!
友坂 悠
ファンタジー
この先はファンタジー色が強くなりすぎて恋愛ジャンルではどうかとの思いもあって完結させていましたが、ジャンルを移し連載再開することにしました。
よろしくお願いします。
「君を愛する事はできない」
新婚初夜に旦那様から聞かされたのはこんな台詞でした。
貴族同士の婚姻です。愛情も何もありませんでしたけれどそれでも結婚し妻となったからにはそれなりに責務を果たすつもりでした。
元々貧乏男爵家の次女のシルフィーナに、良縁など望むべくもないことはよく理解しているつもりで。
それでもまさかの侯爵家、それも騎士団総長を務めるサイラス様の伴侶として望んで頂けたと知った時には父も母も手放しで喜んで。
決定的だったのが、スタンフォード侯爵家から提示された結納金の金額でした。
それもあって本人の希望であるとかそういったものは全く考慮されることなく、年齢が倍以上も違うことにも目を瞑り、それこそ両親と同年代のサイラス様のもとに嫁ぐこととなったのです。
何かを期待をしていた訳では無いのです。
幸せとか、そんなものは二の次であったはずだったのです。
貴族女性の人生など、嫁ぎ先の為に使う物だと割り切っていたはずでした。
だから。縁談の話があったのも、ひとえに彼女のその魔力量を買われたのだと、
魔力的に優秀な子を望まれているとばかり。
それなのに。
「三年でいい。今から話す条件を守ってくれさえすれば、あとは君の好きにすればいい」
とこんなことを言われるとは思ってもいなくて。
まさか世継ぎを残す義務さえも課せられないとは、思ってもいなくって。
「それって要するに、ただのお飾り妻ってことですか!?」
「何故わたくしに白羽の矢が立ったのですか!? どうして!?」
事情もわからずただただやるせない気持ちになるシルフィーナでした。
それでも、侯爵夫人としての務めは果たそうと、頑張ろうと思うのでしたが……。
※本編完結済デス。番外編を開始しました。
※第二部開始しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる