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127.質問
しおりを挟む想定外な質問を受けたラルミは思わず、目を逸らしてしまいそうになる。その見透かす様なアメジストの澄んだ瞳は彼女の心を包み込みまるで、二人の間に流れる時は止まっているかのようだった。
(真っ直ぐと私を見つめる、穏やかな瞳。お嬢様の美しい桃紫色が、眩しい)
輝く瞳の奥にラルミを疑う心は、微塵も感じられない。
そんなアメジストの優しい視線に彼女は、言葉を失う。
「え、え……と」
「大丈夫?」
「はい……あの」
アメジストは不安気なラルミに微笑みかけ“ふわり”――その手に触れる。するとなぜか彼女の杞憂する心はホッと、安心。体中は幸せな気持ちでポカポカと、満たされていく。
それから平常心を取り戻すとラルミはゆっくり、話し始めた。
「朝早く、まだ私が身支度も終えていない時間で――」
朝四時前、ちょうど着替えをしていたラルミの部屋へ、誰かが訪ねてきた。その人物は外せない所用がある為アメジストの部屋へ挨拶に行けない、代わりに頼みたいとの依頼であった。もちろんラルミには断る理由はなく(むしろ喜んで)急な話であったが受けたという。
「そう、朝から大変だったのね。ごめんなさい、私のお部屋に来るだけで皆様に負担を……でもラルミが来てくれて、本当に嬉しかった」
満面の笑みで頬をピンク色に染めそう答えた、アメジスト。
「そんな負担になることなど、絶対にあり得ません!! きっと皆も、同じ気持ちですし、それに私は……」
気合を入れ直すようにグッと手に力を入れるラルミは、懸命に話し続ける。
「お嬢様! 私は今回この依頼を受け、心から嬉しく光栄に思っております」
「まぁ、ラルミ。私の方こそ、心より感謝を。ありがとう」
「ぃ、ぃぇ。あ、あの、アメジストお嬢様。私だけではなく、お嬢様の為に何かをしたいというのは、お手伝いたち皆の願い――」
長くベルメルシア家に務めているとはいえラルミがアメジストの傍に就くことは、まずない。そのため“ラミ”という愛称や昔の話で『ラルミが慰めてくれた』というアメジストの幼き頃の記憶に自分が残っていたことは、彼女にとって人生最大の、喜びであった。
「ですので、本日こうしてお嬢様のお傍にお仕えすることが出来るなんて、本当に夢のようで」
「――!!」
その言葉を聞いた瞬間アメジストの頬にキラリと光る粒が、零れ落ちる。
(たとえ私の魔法が使えなかったとしても、必ず皆を守るわ)
彼女の心に咲く花は強く、美しく、そして優しく、育っていた。
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