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97.内緒
しおりを挟む「あ、あの!? えっと、うーんと」
軽々と片腕乗せ抱っこをされたクォーツは慌てふためきそれ以上、言葉が出てこない。
「ははっ、クォーツ大丈夫。安心しなさい」
その様子に笑うオニキスはアメジストの幼き頃を、思い出していた。そして感慨深く見つめ「良い子、良い子」と落ち着かせながら、話す。
「さて、そういえばジャニスティ兄さんは、何処へ行ったのかな?」
上着で気付かれにくいとはいえクォーツをジャニスティが一人にしていることに不可解さを感じたオニキスは、尋ねた。
「お兄様と食事のお部屋へ向かい近くまで行ったのですが、突然怖い顔をして」
この場所まで戻り「待ってて」と言われた、という。クォーツは高鳴る気持ちを鎮め必死で、答えていた。
「なるほど……うーん」
(クォーツを連れて行かず、此処に待機させた理由が見えないが――余程の事だろうか)
「あのぉ~、旦那様」
「んっ?」
難しい顔をして考え込むオニキスにクォーツはコソッと、声をかける。
「この中に入れば誰にも見つからない“かくれんぼ”が出来るのですよ!」
「かくれんぼ?」
「シィー!! うっふふ」
頬を赤く染め楽しそうに語るクォーツは「ナイショ、ナイショです」と、囁く。
「あっはは、分かったよ。内緒だ」
「でも、旦那様には見つかっちゃいました」
その腕の中で恥ずかしそうにテヘッと笑うクォーツの姿がオニキスの目には天使のように、見えていた。
「あぁ、見つけてしまったよ」
そして優しく微笑みながら、答える。
(かくれんぼ……か)
黒の上着にはそのものが違和感を拭う効果もある――隠伏魔法が、施されていた。そのため上着が置いてあることに気付く者は、皆無に等しい。
――では何故、オニキスは気付いたのか?
「あっ! あの、旦那様はどうして私を見つけられたのですか?」
「ん? どうして、と」
その瞬間にハッ! とするオニキスは何かに気付く。
――そうか、ジャニス。やはり大した奴だ。
「とぉ~?」
首を傾げ「続きはなぁに?」と、言わんばかりのくりくり潤んだ瞳でオニキスの表情を窺うクォーツは彼の頬に、ふにぃっと触れた。
「あぁ、ありがとう。そうだね、私が見つけられたのは、クォーツ。君の事を大切に思っているから、じゃないかな?」
「たーい、せーつ?」
「そう“たいせつ”だ」
クォーツは人族の言葉全てを習得した訳ではない。そのため“大切”の意味はまだ理解できず。
再度、首を傾げ今度は不思議な顔でう~んと言い悩むと、考え込んだ。
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