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選んだ科目
しおりを挟む「ふわり~! 早く早く」
「ちょ、ちょっと待ってぇ、実乃里ちゃあん」
私の通う大学では必修科目の他に自由選択科目が幅広く開設されている。五月から選択できる自由科目は四月中、体験で様々な講義に出られると聞いた私たちはお昼休みになると、事前確認をするために先生のもとを訪れた。
ガラガラーッ!
「失礼します、先生!! 今、お時間よろしいですかッ!?」
「ぅあ! さ、佐久間さん、あはは……今日も元気いっぱいね。そんなに急いでどうしたの?」
高揚しっぱなしで職員室へと向かった実乃里ちゃんは担当の先生へもグイッと(キラキラの眼差しで)尋ねる。その勢いに押された先生もまた、私と同じようにたじたじ。
「……失礼します。すみません、あの……騒がしくしてしまって」
「あぁ、あら、夢咲さんも。二人ともどうかしたの?」
それから体験講義の自由選択科目について、簡単に話をしてみる。すると先生は「同じような質問はありますので」と優しく丁寧に説明をしてくれた。そのおかげで無事、詳細を確認することが出来た。
「こんな感じで、いいかしら?」
「はい、先生。お忙しい所お時間頂きありがとうございました」
「……先生」
「はい?」
「どうしたの、実乃里ちゃん?」
彼女は突然、静かな声で話し始める。その様子に先生と私は首を傾げながら次の言葉を待った。
すると――。
「本当に……ほんっとうぉに! 必修科目と関連のない学科でも、良いのですかッ?!」
「ぅああ! エェ? えぇ、良いですよ。体験期間ですし、そもそも自由なので――」
「ホントにホント?! やったー、よし! このチャンス逃すまい!」
きゃははっと大はしゃぎで先生の手を取り、ブンブンッ!! いきなりまた大声で喜ぶ実乃里ちゃんの姿に先生もすっかり気圧されている。その後も、苦笑いをしながら質問に答えていた。
その後、私たちは予定通り社会心理学を選択。
実はそこからさらに学科分類され、その中で自身の選択する学科を決めて受講するのだ。
私が(というより実乃里ちゃんに誘われ)選んだ学科は――。
「実乃里ちゃん。それって」
「お願い! 合わなかったら変更も出来るから」
「そう、なんだ。うーん、でもぉ」
「そうなのよ! ありがと~ふわり! よし、決まりーッ」
返事を言い終わる前にガシッと手を掴み、満面の笑みで喜ぶ友人。
「あ、そういえば実乃里ちゃん。どぅし」
「えーなになに? はぁ~楽しみぃ」
「ぃぇ……何でも、ない、デス」
「そう? あぁ、このチャンス、逃すまいッ!」
本当は聞きたかった。その『チャンス』って何だろう。
そして――!
(どうして選んだ科目が、恋愛心理学なのぉー!?)
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