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長編版
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公園の開けた広場には簡易な作りの露天商がずらりと並んでいて、食べ物や工芸品など様々なものを売りに出していた。
「食べ物もあるんですのね」
「そうだな。先ほど腹いっぱいに食べたばかりだろうに、まさかまだ食べるのか?」
揶揄うように言う殿下の手は、未だ私の手を握り締めたままだ。
きっと次に私が口にすれば、殿下はすぐに手を離してしまうだろう。公園に着いた私達には、手を繋ぐ口実は無くなっているから。
それが分かっていて、お互いに気付かない振りをしている。
せっかく来たのになんだかお店を見る気分ではなくなってしまったなと内心で残念に思っていると、一つの露店が目に入った。
細工物の露店だ。指輪やブレスレット、ネックレスにピアスなど、女性向けのアクセサリーが並んでいる。
その中の一つ、花の意匠の髪飾りが目に止まった。
布で作られた花と、きっとただの色石だろうがカラフルな石がたくさん飾られた髪飾りはお花畑を切り取ったように華やかで、ひと目見て気にいってしまった。
「これ、とても可愛いわ。おいくらですか?」
店主は若い男性で、やや上気した顔で値段を教えてくれた。
この辺りではやや高価だろう値段だが、当然公爵令嬢の私にとっては安い買い物だ。
「……それが気に入ったのか」
至近距離で声がして、心臓が跳ねる。目だけを声の方向へと向けると、同じ露店を覗き込む殿下のお顔が産毛が分かるほど近くにあった。
聞かれたことに答えられずにいると、殿下はそっと私の腰を支えて、ここから立ち去ろうとしてきた。
「あのように安価なものは、使う機会がないだろう。俺が今度お前に相応しいものを贈ってやるからやめておけ」
その言い方には少しムッとしてしまう。
「わたくしが買うものなのですから、殿下からの指図は受け付けておりません。わたくしはあれが気に入ったのです。とても可愛いのですもの」
「しかし王太子妃の髪を飾るものなのだから、もっと洗練された職人の手によるものにすべきではないか?」
「王太子妃にはなりませんから、問題ありませんわね」
「まだ言うか。絶対に買ってやらんからな」
「自分で買えますもの。ごく普通のご令嬢と一緒にしないでくださいませ」
これでも一人で買い物くらいできる。憤慨しつつポケットから財布を取り出して小銭を数え──足りない。
「……まさか足りぬのか?」
「……いいえ。ここからが勝負です。半額から行きますわよ!!」
後半の言葉を店主に向けると、その口元が引き攣った。
「待て待て。値切るんじゃない。持つ者が持たざる者から過剰に搾取してはならん」
「……これも露店の醍醐味ですのに」
唇を尖らせて抗議するも駄目だと突っぱねられて、結局髪飾りは殿下が買ってくださった。
「まったく……どのように育てればお前のような令嬢が出来上がるのだろうな」
呆れ口調の殿下は髪飾りを包むのを断って、手渡してくれる。無意識に膝を折り、身を屈めた。
「…………」
……ん? どうしたんだろう。
不思議に思い、殿下を仰ぎ見る。そのお顔は赤く染まり、手は私の頭の付近で固まったままだった。
しまった。髪飾りは人につけてもらうのが当たり前だったから癖でつい体を屈めてしまったけど、殿下につけさせるのは失礼すぎた。
「……失礼しました」
背筋を伸ばして謝罪し、受け取ろうとするも髪飾りが逃げた。
「いや……触れても、良いか」
その問いかけも、私を見つめる目の真摯さも、なんだか髪に触れたいと懇願されているようだった。
声が出せなくて俯き、身を屈めて答えにする。
髪に触れた手は震えていて、パチンと音がしたと同時に熱はすぐに離れていった。
この熱を名残惜しいと思ってしまう。その前に、またいつものように怒鳴りつけて欲しい。
「……他にも店はたくさんあるから見て回ろう。手を」
差し伸べられた手を取ると、優しく引かれる。
──そのように優しくしていただくと、なんだか恐ろしくなります。
口元まで出かかった言葉を飲み込んだ。
この方に優しくしていただくたびに、鉛を飲み込んだように心が重くなって、苦しくなる。
なのに、私は。
「可愛い髪飾りをありがとうございます。フェルナンド様」
「……いや。そのように安価なものを着けたお前に言うのはどうかと思うが……」
いつからか殿下に優しく微笑んでいただきたいと願ってしまっている。
「よく、似合っている。……リシュフィ」
ほんの数時間前に言った、名前を呼んだだけという自らの言葉が恥ずかしくなった。
名前を呼んだだけ、などとんでもない。
そっと空いた手を伸ばして、殿下の上がった口角に触れる。私を映す碧眼が丸く見開かれ、すぐに熱を持ち、伸ばした手を取られた。
取られた手のひらに殿下の唇が吸い寄せられていき、音を立てた。
手のひらから全身に電気が走ったように、体の芯が痺れる。
すぐに私の視線から逃げるように殿下は体を翻して、先ほどよりも少し強く、手を引かれた。
沈黙が私達を包み、騒がしい心臓の音だけが耳の奥で響く。
「……っ」
急に殿下は足を止めて、その背に軽くぶつかってしまった。
「どうし──」
ましたか、と。聞く前に勢いよく振り返った殿下のお顔は、まさに茹でダコのようだった。
「…………手を、拭ったりしていないだろうな……?」
「は? 手を……?」
急に、なんの話だ……?
「珍しくお前から触れて来るものだからつい、その……してしまったが、お前が黙ってされたままだと言うのが、不気味で仕方ない……っさぁ、今度は何を企んでいる!!」
…………どうやら殿下の私不信は、相当重症らしい。
「……ハンカチを取り出すので手を離していただけますか」
「やはり未遂だったか! 決して手は離さぬからな!?」
何をされても破棄はしてやらんからなと、殿下が怒鳴る。ああ、うるさいうるさい。片手で耳を塞いで聞こえない振りをしつつ、内心少しホッとした。
殿下はやっぱりこの方が安心する。
「食べ物もあるんですのね」
「そうだな。先ほど腹いっぱいに食べたばかりだろうに、まさかまだ食べるのか?」
揶揄うように言う殿下の手は、未だ私の手を握り締めたままだ。
きっと次に私が口にすれば、殿下はすぐに手を離してしまうだろう。公園に着いた私達には、手を繋ぐ口実は無くなっているから。
それが分かっていて、お互いに気付かない振りをしている。
せっかく来たのになんだかお店を見る気分ではなくなってしまったなと内心で残念に思っていると、一つの露店が目に入った。
細工物の露店だ。指輪やブレスレット、ネックレスにピアスなど、女性向けのアクセサリーが並んでいる。
その中の一つ、花の意匠の髪飾りが目に止まった。
布で作られた花と、きっとただの色石だろうがカラフルな石がたくさん飾られた髪飾りはお花畑を切り取ったように華やかで、ひと目見て気にいってしまった。
「これ、とても可愛いわ。おいくらですか?」
店主は若い男性で、やや上気した顔で値段を教えてくれた。
この辺りではやや高価だろう値段だが、当然公爵令嬢の私にとっては安い買い物だ。
「……それが気に入ったのか」
至近距離で声がして、心臓が跳ねる。目だけを声の方向へと向けると、同じ露店を覗き込む殿下のお顔が産毛が分かるほど近くにあった。
聞かれたことに答えられずにいると、殿下はそっと私の腰を支えて、ここから立ち去ろうとしてきた。
「あのように安価なものは、使う機会がないだろう。俺が今度お前に相応しいものを贈ってやるからやめておけ」
その言い方には少しムッとしてしまう。
「わたくしが買うものなのですから、殿下からの指図は受け付けておりません。わたくしはあれが気に入ったのです。とても可愛いのですもの」
「しかし王太子妃の髪を飾るものなのだから、もっと洗練された職人の手によるものにすべきではないか?」
「王太子妃にはなりませんから、問題ありませんわね」
「まだ言うか。絶対に買ってやらんからな」
「自分で買えますもの。ごく普通のご令嬢と一緒にしないでくださいませ」
これでも一人で買い物くらいできる。憤慨しつつポケットから財布を取り出して小銭を数え──足りない。
「……まさか足りぬのか?」
「……いいえ。ここからが勝負です。半額から行きますわよ!!」
後半の言葉を店主に向けると、その口元が引き攣った。
「待て待て。値切るんじゃない。持つ者が持たざる者から過剰に搾取してはならん」
「……これも露店の醍醐味ですのに」
唇を尖らせて抗議するも駄目だと突っぱねられて、結局髪飾りは殿下が買ってくださった。
「まったく……どのように育てればお前のような令嬢が出来上がるのだろうな」
呆れ口調の殿下は髪飾りを包むのを断って、手渡してくれる。無意識に膝を折り、身を屈めた。
「…………」
……ん? どうしたんだろう。
不思議に思い、殿下を仰ぎ見る。そのお顔は赤く染まり、手は私の頭の付近で固まったままだった。
しまった。髪飾りは人につけてもらうのが当たり前だったから癖でつい体を屈めてしまったけど、殿下につけさせるのは失礼すぎた。
「……失礼しました」
背筋を伸ばして謝罪し、受け取ろうとするも髪飾りが逃げた。
「いや……触れても、良いか」
その問いかけも、私を見つめる目の真摯さも、なんだか髪に触れたいと懇願されているようだった。
声が出せなくて俯き、身を屈めて答えにする。
髪に触れた手は震えていて、パチンと音がしたと同時に熱はすぐに離れていった。
この熱を名残惜しいと思ってしまう。その前に、またいつものように怒鳴りつけて欲しい。
「……他にも店はたくさんあるから見て回ろう。手を」
差し伸べられた手を取ると、優しく引かれる。
──そのように優しくしていただくと、なんだか恐ろしくなります。
口元まで出かかった言葉を飲み込んだ。
この方に優しくしていただくたびに、鉛を飲み込んだように心が重くなって、苦しくなる。
なのに、私は。
「可愛い髪飾りをありがとうございます。フェルナンド様」
「……いや。そのように安価なものを着けたお前に言うのはどうかと思うが……」
いつからか殿下に優しく微笑んでいただきたいと願ってしまっている。
「よく、似合っている。……リシュフィ」
ほんの数時間前に言った、名前を呼んだだけという自らの言葉が恥ずかしくなった。
名前を呼んだだけ、などとんでもない。
そっと空いた手を伸ばして、殿下の上がった口角に触れる。私を映す碧眼が丸く見開かれ、すぐに熱を持ち、伸ばした手を取られた。
取られた手のひらに殿下の唇が吸い寄せられていき、音を立てた。
手のひらから全身に電気が走ったように、体の芯が痺れる。
すぐに私の視線から逃げるように殿下は体を翻して、先ほどよりも少し強く、手を引かれた。
沈黙が私達を包み、騒がしい心臓の音だけが耳の奥で響く。
「……っ」
急に殿下は足を止めて、その背に軽くぶつかってしまった。
「どうし──」
ましたか、と。聞く前に勢いよく振り返った殿下のお顔は、まさに茹でダコのようだった。
「…………手を、拭ったりしていないだろうな……?」
「は? 手を……?」
急に、なんの話だ……?
「珍しくお前から触れて来るものだからつい、その……してしまったが、お前が黙ってされたままだと言うのが、不気味で仕方ない……っさぁ、今度は何を企んでいる!!」
…………どうやら殿下の私不信は、相当重症らしい。
「……ハンカチを取り出すので手を離していただけますか」
「やはり未遂だったか! 決して手は離さぬからな!?」
何をされても破棄はしてやらんからなと、殿下が怒鳴る。ああ、うるさいうるさい。片手で耳を塞いで聞こえない振りをしつつ、内心少しホッとした。
殿下はやっぱりこの方が安心する。
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