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第一章
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スペードの国の大通りに着くと、そこで別れて探そうということになった。ノエルは駆け出して行って、私はどうしようかと考える。
あのイベントの通りなら背景から考えてララは路地裏にいるはずだが、どこの路地裏かまではさすがにわからない。しらみつぶしに探すしかないか……?
「エルザ殿はどこから探すおつもりですか?」
悩んでいるとオーウェンが話しかけてきた。
「そうね……ここの大通りや店舗内はとっくに確認しているだろうし、ここまでの道中にもいなかったから、路地裏に迷い込んでいるのだと思うけど……」
「俺もそう思います。大通りからでも場所によっては城が見えるし、迷子になったならきっと城に向かって一直線に進むんじゃないですか?」
明るい時間なら路地裏といっても一人で怖くはないだろうし。そう言ってオーウェンは一本の路地裏を指さした。
「大通りから城が見えて、おまけに入り組んでいて迷った、となるとかなり絞られます」
「まさか、路地裏まで全部の道を覚えてるの?」
「……誰かさんを迎えに行かなきゃならないときがあるんで」
とてもいい笑顔だ。誰のことかしらね。
「すごいわ! さすが私のオーウェンね!」
「……はいはい、わかりましたから。さっさと行きましょう」
一瞬口元を引きつらせたオーウェンだが、小さくため息をつくと、一本の路地裏に向かって走り出した。
オーウェンの先導で路地裏を進んでいると、しばらくもしないうちに声が聞こえてきた。
まだ遅い時間ではないというのに、これはそこそこ飲んでるなとわかる声と怯えた女性の声。
さすがオーウェン、大当たりだ。
「頼むわね」
「はい」
一言ずつのやり取りでオーウェンはその場で足を止め、私は酔っ払い共の前に姿を見せる。
背後ではオーウェンが打ち上げた合図の火の魔法が、パンッと乾いた音を立てた。
「エルザさん!」
五人もの男たちに囲まれたララが、私の姿を見て声をあげる。
すると私に気付いた男たちが「ちょうどいい」だの「手が足りなかったところだ」だの言い始めた。
わかりたくはないが意味はわかる。スペードの10を相手によく言えたものだ。
「まったくお酒ってのは恐ろしいわね」
呆れてぼそりと呟くと、後ろから「あんたが言いますか」と声が聞こえたので「あなた達にも飲みたいときはあるわよね」と付け加えておいた。
「でも、ララを怯えさせた罪だけは償ってもらうわ」
のんびり立っている私に焦れたのか一人がこちらに手を伸ばしてきたので、その手を取ってひねり上げる。
流れるように足を払って地面に叩きつけると、鈍い大きな音がして男が動かなくなった。
しまった。生きてるよね?
更に二人がつかみかかってきたが、これは避けるだけで頭突きし合って倒れた。
仲間の窮地に残りの二人は酔いがさめたのか謝罪と共に立ち去ろうとするので、酒に酔って人様に迷惑をかけたことに対して罰金刑を言い渡した。
顔は覚えたから明日城まで来てちょうだいね。来なかったから取り立てにいくぞ。
怯えた表情の男達が去った路地裏が本来の静けさを取り戻すと同時に、ララが胸に飛び込んできた。
かすかに震えるララに、一発ずつくらい殴っておけばよかったかと物騒に考える。
五人もの男達に囲まれるなんて、とても怖かっただろう。
私がララを安心させるように薄桃色の髪を梳いていると、オーウェンが目頭を押さえてこちらに歩いてくる。やれば出来る子供の発表会を見た親の心境とみた。失礼な補佐官だ。
合図を見て駆け付けたノエルも合流し、お互いに謝り合いながら私達は無事帰路についた。
このイベントは普段可愛らしいところしか見たことがないノエルが、自分よりも背の高い男達相手に颯爽と立ち回る姿を見て、そのギャップにヒロインがノエルを意識し始めるというものだった。
当てが外れたものの、ララに大事がなくてよかったな。
帰る道中、ずっと私と手を繋いだままのララを見て、そう思った。
あのイベントの通りなら背景から考えてララは路地裏にいるはずだが、どこの路地裏かまではさすがにわからない。しらみつぶしに探すしかないか……?
「エルザ殿はどこから探すおつもりですか?」
悩んでいるとオーウェンが話しかけてきた。
「そうね……ここの大通りや店舗内はとっくに確認しているだろうし、ここまでの道中にもいなかったから、路地裏に迷い込んでいるのだと思うけど……」
「俺もそう思います。大通りからでも場所によっては城が見えるし、迷子になったならきっと城に向かって一直線に進むんじゃないですか?」
明るい時間なら路地裏といっても一人で怖くはないだろうし。そう言ってオーウェンは一本の路地裏を指さした。
「大通りから城が見えて、おまけに入り組んでいて迷った、となるとかなり絞られます」
「まさか、路地裏まで全部の道を覚えてるの?」
「……誰かさんを迎えに行かなきゃならないときがあるんで」
とてもいい笑顔だ。誰のことかしらね。
「すごいわ! さすが私のオーウェンね!」
「……はいはい、わかりましたから。さっさと行きましょう」
一瞬口元を引きつらせたオーウェンだが、小さくため息をつくと、一本の路地裏に向かって走り出した。
オーウェンの先導で路地裏を進んでいると、しばらくもしないうちに声が聞こえてきた。
まだ遅い時間ではないというのに、これはそこそこ飲んでるなとわかる声と怯えた女性の声。
さすがオーウェン、大当たりだ。
「頼むわね」
「はい」
一言ずつのやり取りでオーウェンはその場で足を止め、私は酔っ払い共の前に姿を見せる。
背後ではオーウェンが打ち上げた合図の火の魔法が、パンッと乾いた音を立てた。
「エルザさん!」
五人もの男たちに囲まれたララが、私の姿を見て声をあげる。
すると私に気付いた男たちが「ちょうどいい」だの「手が足りなかったところだ」だの言い始めた。
わかりたくはないが意味はわかる。スペードの10を相手によく言えたものだ。
「まったくお酒ってのは恐ろしいわね」
呆れてぼそりと呟くと、後ろから「あんたが言いますか」と声が聞こえたので「あなた達にも飲みたいときはあるわよね」と付け加えておいた。
「でも、ララを怯えさせた罪だけは償ってもらうわ」
のんびり立っている私に焦れたのか一人がこちらに手を伸ばしてきたので、その手を取ってひねり上げる。
流れるように足を払って地面に叩きつけると、鈍い大きな音がして男が動かなくなった。
しまった。生きてるよね?
更に二人がつかみかかってきたが、これは避けるだけで頭突きし合って倒れた。
仲間の窮地に残りの二人は酔いがさめたのか謝罪と共に立ち去ろうとするので、酒に酔って人様に迷惑をかけたことに対して罰金刑を言い渡した。
顔は覚えたから明日城まで来てちょうだいね。来なかったから取り立てにいくぞ。
怯えた表情の男達が去った路地裏が本来の静けさを取り戻すと同時に、ララが胸に飛び込んできた。
かすかに震えるララに、一発ずつくらい殴っておけばよかったかと物騒に考える。
五人もの男達に囲まれるなんて、とても怖かっただろう。
私がララを安心させるように薄桃色の髪を梳いていると、オーウェンが目頭を押さえてこちらに歩いてくる。やれば出来る子供の発表会を見た親の心境とみた。失礼な補佐官だ。
合図を見て駆け付けたノエルも合流し、お互いに謝り合いながら私達は無事帰路についた。
このイベントは普段可愛らしいところしか見たことがないノエルが、自分よりも背の高い男達相手に颯爽と立ち回る姿を見て、そのギャップにヒロインがノエルを意識し始めるというものだった。
当てが外れたものの、ララに大事がなくてよかったな。
帰る道中、ずっと私と手を繋いだままのララを見て、そう思った。
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