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結実
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二十二時に約束をとりつけたホテルへ向かうと、いつものようなビジネスホテルではなかった。
本当に廃れ切って看板が錆びているほど、寂れたラブホテルだった。
この間のビジネスホテルも最悪だったが、何の酔狂だろうかといぶかしみながらも、渡された鍵を手にして指定された部屋へと向かった。
ドアを開いて中に入るとピンク色の趣味の悪い照明がくるくる回っている趣味の悪い部屋だった。
そこに場違いな縦縞のスーツ姿で、東郷は手持ち無沙汰な様子でベッドに座って待っていた。
「……こんなホテル、まだあったんだな……」
「ああ……タイムスリップしたような気分だろう」
視線を入ってきた高坂へと向けて、使ったことはなかったがなと東郷は憂いを帯びた口調で呟いた。
「そうだな。俺は良く知らない時代だけどね」
高坂はふうと吐息を漏らすと、串崎にお土産だと手渡された紙袋の中身を、円形のベッドの上にざらざらと撒き散らした。
「串崎のところへ行ってきたのか」
東郷は自分の脇に散らばった大人の玩具の山を呆れた表情で眺めて、高坂へ問いかけた。
渡したリストと情報を掻き集めれば、さほど時間はかからずに串崎の存在に気がつくはずだった。
そうなるようにあらかじめリストを作っていたのだ。
辿りつく答えも、彼の感情もすべて計算した上で呼び出した。
高坂は東郷の真意をさぐるように、慎重に口を開きながらベッドの上の彼の肩に手をかけた。
「ああ。会ったよ。これはアンタへの土産だって言っていた」
「あの人は……相変わらずだな。ヤツを逃がしてから……もう十五年近く会ってないが。この様子なら、元気なんだろうな」
「気になるなら会いに行ってみればいい」
久住組の若頭が常時控えている店へ顔を出した瞬間に、東郷の体が蜂の巣になるであろうことは分かり切っていたが、意地悪にそう返してみた。
高坂は東郷のスーツに手をかけると、いきなり引き剥がすようにして膝をベッドの上に乗せた。
「それで、情報は得られたのか」
「どうだろうな。串崎が、アンタを調教したっていう、どうでもいい話くらいかな」
高坂は彼の答えをはぐらかすと首筋に軽く唇をあてて、散らばった玩具からアナルビーズを取り出した。
ぷらーんと黒色のアナルビーズを東郷の目の前に翳すと、興味深そうに問いかける。
「なあ、アンタも調教されたっていうなら、こういうのされるのって興奮するのか」
興味津々の風情を出した高坂の問いかけに、眉を寄せて目の前のアナルビーズの先を唇に咥える。
「さすがに、今はもうされたいとは思わないが……。体は勝手に反応してしまうな」
その証拠とばかりに兆しを見せた膨らみを押し付けられて、高坂はその煽りに口元を緩めるとベルトに手をかけてしゅっと引き抜いた。
「へえ……それは、こっちも色々やってみたいという願望がでてきてしまうな」
「その前に、オマエが仕入れた情報を全部吐いてもらおうか」
アナルビーズから唇を外すと、じっと様子を窺うように東郷は高坂を見上げた。
「今、話をした……だろ。串崎がアンタをいやらしいマゾに調教した……。それはわかった」
「君は本当に分かりやすいからね。君は知ったことをなにも話はしていない、隠し事があるのだと、顔にしっかり出ている」
「……直接手は下した実行犯はわからなかった」
串崎からは東郷には言わないようにと釘を刺されたが、この様子であれば遠の昔に察していたのだろう。
ぐっと乗り上げて組み敷いた体にかけた体重を少しずらして、答えを待つように視線を合わせた。
決着をつけなければ、いけないのだというのだろうか。
そこまで強い人間ではない。
「……実行犯は、口封じされた可能性の方が高い。指示をしたのが誰かは検討がついた。そいつが既に死んでいるのなら、仕方がないと諦めるほかにないだろう」
行き着く答えには東郷の覚悟が見えていて、高坂は自ら彼が示唆する結末を避けたのだ。
だというのに、それを掘り起こそうとしてくる東郷は、高坂の気持ちに気づいてはいないのだろう。
ただ私怨のみで動いている、復讐の鬼だと考えているのかもそれない。
誰かをどうにかして断罪しなければ、俺の心が救われないと考えたのか。
その為に自らをスケープゴートに捧げるとでもいうのだろうか。
だから、マゾヒストとは相性が良くないんだ。
「刑事を辞めてまで得た答えが仕方がないなんていうそんなもので、君は本当に納得いくのか」
「……納得がいかないと言ったとして、死んだ人間に復讐などできやしないだろ。どうしようもない話だったと、笑い飛ばす以外に何ができるんだ」
東郷には似合わない派手な柄のネクタイを掴みあげて、顔をじっと睨みおろすと真っ直ぐな目で見返された。
静かに威嚇をしながらも簡単にその喉笛を差し出す男に、高坂はごくりと息を飲んだ。
こちらが殺るか、油断をして殺らなければ今にも食い殺されてしまいそうだ。
「もう一度聞く。高坂行将を殺すように指示したのは、誰だ」
本当に廃れ切って看板が錆びているほど、寂れたラブホテルだった。
この間のビジネスホテルも最悪だったが、何の酔狂だろうかといぶかしみながらも、渡された鍵を手にして指定された部屋へと向かった。
ドアを開いて中に入るとピンク色の趣味の悪い照明がくるくる回っている趣味の悪い部屋だった。
そこに場違いな縦縞のスーツ姿で、東郷は手持ち無沙汰な様子でベッドに座って待っていた。
「……こんなホテル、まだあったんだな……」
「ああ……タイムスリップしたような気分だろう」
視線を入ってきた高坂へと向けて、使ったことはなかったがなと東郷は憂いを帯びた口調で呟いた。
「そうだな。俺は良く知らない時代だけどね」
高坂はふうと吐息を漏らすと、串崎にお土産だと手渡された紙袋の中身を、円形のベッドの上にざらざらと撒き散らした。
「串崎のところへ行ってきたのか」
東郷は自分の脇に散らばった大人の玩具の山を呆れた表情で眺めて、高坂へ問いかけた。
渡したリストと情報を掻き集めれば、さほど時間はかからずに串崎の存在に気がつくはずだった。
そうなるようにあらかじめリストを作っていたのだ。
辿りつく答えも、彼の感情もすべて計算した上で呼び出した。
高坂は東郷の真意をさぐるように、慎重に口を開きながらベッドの上の彼の肩に手をかけた。
「ああ。会ったよ。これはアンタへの土産だって言っていた」
「あの人は……相変わらずだな。ヤツを逃がしてから……もう十五年近く会ってないが。この様子なら、元気なんだろうな」
「気になるなら会いに行ってみればいい」
久住組の若頭が常時控えている店へ顔を出した瞬間に、東郷の体が蜂の巣になるであろうことは分かり切っていたが、意地悪にそう返してみた。
高坂は東郷のスーツに手をかけると、いきなり引き剥がすようにして膝をベッドの上に乗せた。
「それで、情報は得られたのか」
「どうだろうな。串崎が、アンタを調教したっていう、どうでもいい話くらいかな」
高坂は彼の答えをはぐらかすと首筋に軽く唇をあてて、散らばった玩具からアナルビーズを取り出した。
ぷらーんと黒色のアナルビーズを東郷の目の前に翳すと、興味深そうに問いかける。
「なあ、アンタも調教されたっていうなら、こういうのされるのって興奮するのか」
興味津々の風情を出した高坂の問いかけに、眉を寄せて目の前のアナルビーズの先を唇に咥える。
「さすがに、今はもうされたいとは思わないが……。体は勝手に反応してしまうな」
その証拠とばかりに兆しを見せた膨らみを押し付けられて、高坂はその煽りに口元を緩めるとベルトに手をかけてしゅっと引き抜いた。
「へえ……それは、こっちも色々やってみたいという願望がでてきてしまうな」
「その前に、オマエが仕入れた情報を全部吐いてもらおうか」
アナルビーズから唇を外すと、じっと様子を窺うように東郷は高坂を見上げた。
「今、話をした……だろ。串崎がアンタをいやらしいマゾに調教した……。それはわかった」
「君は本当に分かりやすいからね。君は知ったことをなにも話はしていない、隠し事があるのだと、顔にしっかり出ている」
「……直接手は下した実行犯はわからなかった」
串崎からは東郷には言わないようにと釘を刺されたが、この様子であれば遠の昔に察していたのだろう。
ぐっと乗り上げて組み敷いた体にかけた体重を少しずらして、答えを待つように視線を合わせた。
決着をつけなければ、いけないのだというのだろうか。
そこまで強い人間ではない。
「……実行犯は、口封じされた可能性の方が高い。指示をしたのが誰かは検討がついた。そいつが既に死んでいるのなら、仕方がないと諦めるほかにないだろう」
行き着く答えには東郷の覚悟が見えていて、高坂は自ら彼が示唆する結末を避けたのだ。
だというのに、それを掘り起こそうとしてくる東郷は、高坂の気持ちに気づいてはいないのだろう。
ただ私怨のみで動いている、復讐の鬼だと考えているのかもそれない。
誰かをどうにかして断罪しなければ、俺の心が救われないと考えたのか。
その為に自らをスケープゴートに捧げるとでもいうのだろうか。
だから、マゾヒストとは相性が良くないんだ。
「刑事を辞めてまで得た答えが仕方がないなんていうそんなもので、君は本当に納得いくのか」
「……納得がいかないと言ったとして、死んだ人間に復讐などできやしないだろ。どうしようもない話だったと、笑い飛ばす以外に何ができるんだ」
東郷には似合わない派手な柄のネクタイを掴みあげて、顔をじっと睨みおろすと真っ直ぐな目で見返された。
静かに威嚇をしながらも簡単にその喉笛を差し出す男に、高坂はごくりと息を飲んだ。
こちらが殺るか、油断をして殺らなければ今にも食い殺されてしまいそうだ。
「もう一度聞く。高坂行将を殺すように指示したのは、誰だ」
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