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身体だけでなく心も手に入れたと思ったのに。
シートベルトを解いて助手席を降り、後部座席のドアを開ける。
身体を抱えようと士龍の身体に触れると、素直にオレに身体を任せるので支えるようにしてから背負う。
あんなにも触れることさえ拒絶されたのが嘘のようだ。
「大丈夫?手伝わなくて平気かな」
日高はオレに気遣って、声をかけるがこれはオレが運びたかったので、頷いた。
「巻き込んで、わ、りい、士龍はオレが運ぶから」
やっと、触れられたんだ。
この体を離したくはない。
「シロは俺らの幼馴染みだから、オレらに気を使わねえでいいよ」
日高は優しい口調で告げたが、オレは頷いただけで彼を手放しはせずに、日高のマンションへと運んだ。
背中に彼がいると思うだけで、なんだか胸のあたりの動悸がおかしいことになっている。
ドキドキするのが恋だという士龍の理論に従えば、こんなに胸が熱くなるほどドキドキしているのは、相当な恋情だってことになる。
士龍は、背中で素直にオレに背負われていて、一体何を考えているのだかまったく読めない。
別れた時の様子では、もう二度と触れることができないとまで思っていたのはオレだけだったのか。
わけがわからなくて、ただただ混乱ばかりしている。
日高のマンションのリビングに入ると、背中の上で士龍ははしゃいだように声をあげる。
「うわー、やっぱしヤッちゃんの部屋オシャレ!」
男子高生にしては、センスがよさそうなものばかりが揃えられていて、そこらへんのヤンキーの部屋には思えない。
まあ、気になる違和感といえば部屋の隅にある使い古されたサンドバックとか、ウエイトトレーニングの器具が転がっているが、持ち主はなんとなく予想がつく。
「シロをソファに降ろして。とりあえずしっかり殺菌とか止血とかしなくっちゃなんねえし」
救急箱を手にして、日高は指示するので、そっとソファーの上に士龍を降ろす。
「…………ありがとな」
視線を合わせられて、思わず軽く逸らしてしまう。
正気に戻ると、どうしていいのかわからなくなる。
「オレこそ…………。助けに来てくれて……ありがとう」
ドギマギしながら、士龍を見返すと柔らかい笑みを返される。
最後に会ったあの日、あんな決別をしたというのに、まるでなかったかのように、優しい表情でよかったと言われて、オレはどう返していいのか分からなくなった。
「弾は?中に入ったままか」
日高が士龍の血だらけの脚を掴んで、傷口を拭ってから消毒液をかけているのを、自分のことではないのに痛そうで視線を逸らす。
「ンッ……貫通はしたみたい。弾近くにおっこてた!」
流石に痛むのかしかめ面になるが、悲痛な声をあげることなく、士龍はあの混乱の中で拾ってきたのか、血まみれの銃弾を見せる。
「あれほど、チョッキ以外のとこは気をつけろって言われてたけどな。聞いてなかった?」
「んー。たけお見たら、ワーッて頭に血がたまっちゃった」
「血がのぼる、だよ」
日高に日本語を訂正され、士龍は大人しく治療を受けている。
この怪我で病院いかねえで、大丈夫なのか。
いや、病院で待ち伏せされている可能性を考えたら、あとで父親に診てもらう方がいいのかもしれない。
不安でいっぱいなのに何もできず手持ち無沙汰に、立ち尽くしていると玄関が開く音がして、低く声が響く。
「たでえま!!」
リビングへと入ってきたハセガワはジャケットを脱ぐと、日高にハンガーを渡されて、部屋の前の上着かけにひっかける。
「ちゃんと二人を送り届けた?」
「おーう。それよか、シロ、大丈夫か?」
士龍に近寄り、風呂に入るから後は手当よろしくと日高がリビングを出ていくのに頷いて、ハセガワは士龍の傷口を看ている。
「弾丸は綺麗に貫通してる。良かったな」
ハセガワは、慣れた手つきで手当てしはじめた。
怪我に慣れているのか。
なんだか、安心してきたのと同時に頭がぼっうとしてくる。
「あ、オマエも疲れただろ?そっち側に座ってな」
ハセガワがオレに気がついて、むこうがわのソファーを指すので、ゆっくりと腰を降ろす。
対峙した時には、恐怖しか感じなかったが、士龍を見て話している姿は意外なくらい穏やかだ。
落ち着いたら、士龍を病院に連れていかないとな。
……オヤジには会いたくはないけど、何かあったら後悔じゃすまなくなる。
ちゃんと、弟にならないと。
会えただけで、良かったと、神様に…………感謝しねえと。
ぐるぐると頭の中でそればかりをオレは繰り返していた。
シートベルトを解いて助手席を降り、後部座席のドアを開ける。
身体を抱えようと士龍の身体に触れると、素直にオレに身体を任せるので支えるようにしてから背負う。
あんなにも触れることさえ拒絶されたのが嘘のようだ。
「大丈夫?手伝わなくて平気かな」
日高はオレに気遣って、声をかけるがこれはオレが運びたかったので、頷いた。
「巻き込んで、わ、りい、士龍はオレが運ぶから」
やっと、触れられたんだ。
この体を離したくはない。
「シロは俺らの幼馴染みだから、オレらに気を使わねえでいいよ」
日高は優しい口調で告げたが、オレは頷いただけで彼を手放しはせずに、日高のマンションへと運んだ。
背中に彼がいると思うだけで、なんだか胸のあたりの動悸がおかしいことになっている。
ドキドキするのが恋だという士龍の理論に従えば、こんなに胸が熱くなるほどドキドキしているのは、相当な恋情だってことになる。
士龍は、背中で素直にオレに背負われていて、一体何を考えているのだかまったく読めない。
別れた時の様子では、もう二度と触れることができないとまで思っていたのはオレだけだったのか。
わけがわからなくて、ただただ混乱ばかりしている。
日高のマンションのリビングに入ると、背中の上で士龍ははしゃいだように声をあげる。
「うわー、やっぱしヤッちゃんの部屋オシャレ!」
男子高生にしては、センスがよさそうなものばかりが揃えられていて、そこらへんのヤンキーの部屋には思えない。
まあ、気になる違和感といえば部屋の隅にある使い古されたサンドバックとか、ウエイトトレーニングの器具が転がっているが、持ち主はなんとなく予想がつく。
「シロをソファに降ろして。とりあえずしっかり殺菌とか止血とかしなくっちゃなんねえし」
救急箱を手にして、日高は指示するので、そっとソファーの上に士龍を降ろす。
「…………ありがとな」
視線を合わせられて、思わず軽く逸らしてしまう。
正気に戻ると、どうしていいのかわからなくなる。
「オレこそ…………。助けに来てくれて……ありがとう」
ドギマギしながら、士龍を見返すと柔らかい笑みを返される。
最後に会ったあの日、あんな決別をしたというのに、まるでなかったかのように、優しい表情でよかったと言われて、オレはどう返していいのか分からなくなった。
「弾は?中に入ったままか」
日高が士龍の血だらけの脚を掴んで、傷口を拭ってから消毒液をかけているのを、自分のことではないのに痛そうで視線を逸らす。
「ンッ……貫通はしたみたい。弾近くにおっこてた!」
流石に痛むのかしかめ面になるが、悲痛な声をあげることなく、士龍はあの混乱の中で拾ってきたのか、血まみれの銃弾を見せる。
「あれほど、チョッキ以外のとこは気をつけろって言われてたけどな。聞いてなかった?」
「んー。たけお見たら、ワーッて頭に血がたまっちゃった」
「血がのぼる、だよ」
日高に日本語を訂正され、士龍は大人しく治療を受けている。
この怪我で病院いかねえで、大丈夫なのか。
いや、病院で待ち伏せされている可能性を考えたら、あとで父親に診てもらう方がいいのかもしれない。
不安でいっぱいなのに何もできず手持ち無沙汰に、立ち尽くしていると玄関が開く音がして、低く声が響く。
「たでえま!!」
リビングへと入ってきたハセガワはジャケットを脱ぐと、日高にハンガーを渡されて、部屋の前の上着かけにひっかける。
「ちゃんと二人を送り届けた?」
「おーう。それよか、シロ、大丈夫か?」
士龍に近寄り、風呂に入るから後は手当よろしくと日高がリビングを出ていくのに頷いて、ハセガワは士龍の傷口を看ている。
「弾丸は綺麗に貫通してる。良かったな」
ハセガワは、慣れた手つきで手当てしはじめた。
怪我に慣れているのか。
なんだか、安心してきたのと同時に頭がぼっうとしてくる。
「あ、オマエも疲れただろ?そっち側に座ってな」
ハセガワがオレに気がついて、むこうがわのソファーを指すので、ゆっくりと腰を降ろす。
対峙した時には、恐怖しか感じなかったが、士龍を見て話している姿は意外なくらい穏やかだ。
落ち着いたら、士龍を病院に連れていかないとな。
……オヤジには会いたくはないけど、何かあったら後悔じゃすまなくなる。
ちゃんと、弟にならないと。
会えただけで、良かったと、神様に…………感謝しねえと。
ぐるぐると頭の中でそればかりをオレは繰り返していた。
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