竜攘虎搏 Side Dragon

密月陽炎

85

　学校に着いても、虎王は俺から離れる様子はなくいつもより険しい顔をしている。
　まあ、多分怪我して狙われるかもしれないって警戒してくれているんだろう。
　俺と言えば、まだまだ密着していた興奮がさめないので、虎王の肩に手をかけて体重を預けながら、早く帰ってエッチしたいなと心から願っていた。
「士龍サン、脚大丈夫すか？」
　直哉が、番犬のごとく俺の方へと駆け寄ってくる。
　教室に入るとさすがにザワザワと、部屋がざわつく。
　まあ、犬猿だった俺と虎王が同時に登校してきたっていうのもあるよな。
「木崎、昨日はありがとう……な」
「お、おう……｣
　虎王が礼を言ったことに、直哉は目を丸くして、なんだか虚をつかれた返事を返した。
「ナオヤ、脚は日曜に手術することにしたよ。……走れなくなったら困るしな」
「あー、それで、木崎。士龍の脚が治るまで一緒に行動したいんだけど、構わないか？」
　殊勝な顔で、らしくなく虎王は直哉に頼んでいる。
　ケガ人はこの学校じゃ、的にしかならない。
　それを見越しての虎王申し入れだし、多分ここの誰より虎王は強いと思う。
「ンなの、当たり前だ。士龍さんが怪我したのはテメエのせいだ。テメエが殺されても守れよ」
「わかってる。士龍、何かして欲しいことあったら言えよ」
　直哉の許しが出て、笑顔を向ける虎王が眩しく見える。
　しかし、残念なことに俺の頭の中はすっかり邪念しかない。
「じゃあ早く帰って、セックスしよう」
　眩しい虎王とは裏腹に、俺はいやらしいことばっかしか考えてない不届きものだ。
「お前がいない間、士龍サンかなりたまってたみたいだから、ちゃんと相手してやれよ。それくらいしか、オマエのいいとこねえんだからよ」
　直哉が、さらりとあんまりなことを言う。
「ナオヤ、いじめんなよ。大丈夫、きっちり埋め合わせしてもらうし。たけおは、俺のアナ埋めよろしくね！」
　うまいこといったな、俺。
　きっと、笑点なら山田くんが、座布団二枚くらい持ってきてくれるな。
　虎王は、深々と息を吐き出すとぐいと俺の腕をとる。
「さっき点呼とったよな？次は英語だっけ。木崎、士龍の代返頼む」
　俺が虎王を見上げると、軽く顎をあげてた俺に立てと言外に言う。
「…………アナ埋めすっから、体育館倉庫にいくぞ」
　体育館には、運動部の為にシャワー室も完備してある。運動部なんか、殆どいないけど無駄に設備はいい。
　ドクンとそれだけで興奮してくる。
　ひょこひょこと脚をひきずって虎王に支えられ、俺は下半身を固くしながら、虎王の肩をグッと掴み体育館へと向かった。