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青天霹靂
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「士龍さん……。タケちゃんの家に俺と一緒に迎えに行ってください。こんなに学校にこないのは、おかしいから」
元宮は俺の返事もきかずに、有無を言わせず腕をひいて教室を出た。
教室を出ると一緒に直哉がついてくる。
直哉自身納得していないのもあるだろうが、やはり別の派閥のヤツに俺が連れ出されるのは気に入らないのだろう。
「士龍サンは、俺のバイクに乗せてくから」
駐輪場につくと直哉は俺に自分のメットを渡して、こっちだからと誘導する。
元宮のバイクの後ろに乗るのも気に入らないようである。
別に元々同じ派閥にいたのだから、仲良くしろと言いたかったがそんな雰囲気でもない。
「ちゃんとついてこいよ、木崎」
「大体の場所は分かってンよ……こないだ迎えにいったし」
「モトミヤにまで連絡ねぇのは、やっぱり心配だから」
元宮がうちに乗り込んできたのはいい口実になったと思う。
一週間顔を見ていないので、心配だったのは確かだ。
生きているならそれでいい。俺と会いたくないから、学校にこないっていうなら、俺がやめればいいだけの話だ。
虎王のマンションに着くと、あの日のことが思い出されて気持ちがずんと重たくなる。
こんなことばかり考えていても前には進めないな。
拳をぎゅっと握ると、思い切って前に立って歩き出す。
どんな結果になっていたとしても、自分で蒔いた種くらいかりとらなければならない。
エレベーターを降りてマンションの部屋の前に立つ。
あの時は表札なんてちゃんと見なかったが、マンションの表札には「橘」と書いてあるので、ここが父の持ち物のマンションなんだと思う。
今更なんだと言われたら、きっとどう言葉を返していいかわからなくなるだろう。
そう考えると恐くなって指先が震えてしまう。
漸く力強くインターホンを押したが、なかなか返事がこなかった。
虎王がカメラごしに俺を見て、躊躇っているのかもしれないし、そのまま出てこない可能性もある。
しばらくして諦めかけた時にゆっくりと扉が開くと、出てきたのは虎王ではなかった。
「…………士龍」
父が何故ここに居るのかわからず、最悪なことが頭をよぎってごくりと息を飲んで問いかけた。
「Takeo Wo sind……(たけおはいるのか)」
父はドイツ語で虎王がここにはいないと告げた。
居ないわけはないだろうと食ってかかりたかったが、横にいる元宮たちが驚くのもよくないなと思い黙った。
「Er wird vermisst(アイツは行方不明だ)」
父の言葉に俺は言葉を喪って、どうしていいか分からなくなった。
自分探しの失恋旅行みたいなのだったら言いのだが、父の口調はそれとは違うようで、嫌な予感しかしなかった。
「……士龍……、あとカナタ君たちも部屋に入れ。ここで言い合っても仕方がない。寒いし風邪をひくだろう」
父は元宮とは顔見知りなのか、一緒に入れと玄関をあけて中に促した。
「…………皆心配してんだ。……だからきた」
「そうみたいだな。お前も日本語がうまくなったのなら、これからは日本語で話そうか」
そう言われて、思わずドイツ語で話してしまったが、父の母国語が日本語ならばそのほうがいいだろうと頷いた。
「俺、十歳まではドイツにいたんだ。親が離婚するまでは、橘士龍って名前だった」
元宮はハッとしたような表情をして、複雑そうな表情で俺をじっと見返した。
察しのいい彼なら俺が虎王と別れた理由も分かるだろう。
元々ここは虎王と母親が住んでいたのだろう。豪華な作りや一人暮らしには広いリビングなのも納得できる。
虎王の母親だろうか。ソファーに座って三つくらいの子供を抱いて泣いている。
嫌な予感が的中したようで、心臓がバクバクして気分が悪くなってくる。
入ってきた俺たちに気がつくと彼女は涙を指先で拭いて、元宮に歩み寄ってくる。
「カナくん、虎王がっ、虎王が、しんじゃうっ」
元宮は慌てて、泣き崩れる彼女の腕を掴んで抱き起こす。
「さっきも言ったが虎王はここにはいない。誘拐された」
「ど、どういうこと、だ?」
虎王が誘拐されたという父の言葉に俺は目を見開いた。
もう、二度と会えない…………とかじゃねえよな。
吐き気までしてきて、胸がギュウギュウに飛び出しそうに痛くてたまらない。
二人を連れてきているんだし、もっと平然としてなきゃと思うが、握りしめた拳から変な汗が滲んできている。
全身の震えが止まらなくなり、必死で深呼吸を繰り返す。
「ど、どういうこと、だ」
俺の声はカサカサとして、なんだか自分の声じゃないみたいな感じがする。
父を見やると、俺の目の前に一通の封筒を置いた。
元宮は俺の返事もきかずに、有無を言わせず腕をひいて教室を出た。
教室を出ると一緒に直哉がついてくる。
直哉自身納得していないのもあるだろうが、やはり別の派閥のヤツに俺が連れ出されるのは気に入らないのだろう。
「士龍サンは、俺のバイクに乗せてくから」
駐輪場につくと直哉は俺に自分のメットを渡して、こっちだからと誘導する。
元宮のバイクの後ろに乗るのも気に入らないようである。
別に元々同じ派閥にいたのだから、仲良くしろと言いたかったがそんな雰囲気でもない。
「ちゃんとついてこいよ、木崎」
「大体の場所は分かってンよ……こないだ迎えにいったし」
「モトミヤにまで連絡ねぇのは、やっぱり心配だから」
元宮がうちに乗り込んできたのはいい口実になったと思う。
一週間顔を見ていないので、心配だったのは確かだ。
生きているならそれでいい。俺と会いたくないから、学校にこないっていうなら、俺がやめればいいだけの話だ。
虎王のマンションに着くと、あの日のことが思い出されて気持ちがずんと重たくなる。
こんなことばかり考えていても前には進めないな。
拳をぎゅっと握ると、思い切って前に立って歩き出す。
どんな結果になっていたとしても、自分で蒔いた種くらいかりとらなければならない。
エレベーターを降りてマンションの部屋の前に立つ。
あの時は表札なんてちゃんと見なかったが、マンションの表札には「橘」と書いてあるので、ここが父の持ち物のマンションなんだと思う。
今更なんだと言われたら、きっとどう言葉を返していいかわからなくなるだろう。
そう考えると恐くなって指先が震えてしまう。
漸く力強くインターホンを押したが、なかなか返事がこなかった。
虎王がカメラごしに俺を見て、躊躇っているのかもしれないし、そのまま出てこない可能性もある。
しばらくして諦めかけた時にゆっくりと扉が開くと、出てきたのは虎王ではなかった。
「…………士龍」
父が何故ここに居るのかわからず、最悪なことが頭をよぎってごくりと息を飲んで問いかけた。
「Takeo Wo sind……(たけおはいるのか)」
父はドイツ語で虎王がここにはいないと告げた。
居ないわけはないだろうと食ってかかりたかったが、横にいる元宮たちが驚くのもよくないなと思い黙った。
「Er wird vermisst(アイツは行方不明だ)」
父の言葉に俺は言葉を喪って、どうしていいか分からなくなった。
自分探しの失恋旅行みたいなのだったら言いのだが、父の口調はそれとは違うようで、嫌な予感しかしなかった。
「……士龍……、あとカナタ君たちも部屋に入れ。ここで言い合っても仕方がない。寒いし風邪をひくだろう」
父は元宮とは顔見知りなのか、一緒に入れと玄関をあけて中に促した。
「…………皆心配してんだ。……だからきた」
「そうみたいだな。お前も日本語がうまくなったのなら、これからは日本語で話そうか」
そう言われて、思わずドイツ語で話してしまったが、父の母国語が日本語ならばそのほうがいいだろうと頷いた。
「俺、十歳まではドイツにいたんだ。親が離婚するまでは、橘士龍って名前だった」
元宮はハッとしたような表情をして、複雑そうな表情で俺をじっと見返した。
察しのいい彼なら俺が虎王と別れた理由も分かるだろう。
元々ここは虎王と母親が住んでいたのだろう。豪華な作りや一人暮らしには広いリビングなのも納得できる。
虎王の母親だろうか。ソファーに座って三つくらいの子供を抱いて泣いている。
嫌な予感が的中したようで、心臓がバクバクして気分が悪くなってくる。
入ってきた俺たちに気がつくと彼女は涙を指先で拭いて、元宮に歩み寄ってくる。
「カナくん、虎王がっ、虎王が、しんじゃうっ」
元宮は慌てて、泣き崩れる彼女の腕を掴んで抱き起こす。
「さっきも言ったが虎王はここにはいない。誘拐された」
「ど、どういうこと、だ?」
虎王が誘拐されたという父の言葉に俺は目を見開いた。
もう、二度と会えない…………とかじゃねえよな。
吐き気までしてきて、胸がギュウギュウに飛び出しそうに痛くてたまらない。
二人を連れてきているんだし、もっと平然としてなきゃと思うが、握りしめた拳から変な汗が滲んできている。
全身の震えが止まらなくなり、必死で深呼吸を繰り返す。
「ど、どういうこと、だ」
俺の声はカサカサとして、なんだか自分の声じゃないみたいな感じがする。
父を見やると、俺の目の前に一通の封筒を置いた。
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