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意志薄弱
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意味としては、間違ってはいないだろう。
俺が富田君を好きな気持ちは、とても苦しいものだから。
胸が苦しくて、仕方がないくらいだ。
「どっか痛かったか?」
「…………大丈夫。やっぱ言わなきゃよかったな。息苦しくて思わず言っちゃただけ、心配すんなよ」
苦しいと告げると、富田君は心配そうな声で問いかける。
本当に優しいよな。
やっぱり勘違いしそうになってぐっと拳を握った。
こんな関係なんか続くわけがないのに、一挙一動、一言一句に期待してしまう。
早く寝た振りをしてしまうのが一番だと思った瞬間、背後から強く抱き寄せられた。
「眞壁、妹とかいないの」
突然問いかけられて、首を横に振った。
何故突然妹なのか、良く分からずに思い当たった想像に身震いする。
「会ったことのない弟ならいるらしいけど。もし、俺に妹がいたら、俺に飽きたから妹にとか……?こわい!」
「ちげえよ。つか、なんだ、飽きたから妹とか。わけわかんねえ。………オレは弟がいるよ……まだ、2歳だけど」
必死な表情で首を振る富田君に違和感を覚えながら、弟のことを語る彼の表情が優しくてなんだかもやもやとする。
「へえ、可愛いのか」
「まあな。弟はクォーターの血筋が出たのか綺麗な金髪してるんだ。巻き毛で可愛い。アンタの金髪とは違うんだけど」
「ああ。俺、天然じゃなくてブリーチしてるし。地毛も金髪だけどね」
学校には一応地毛と地目の証明書を提出はしている。
別にそんなの出さなくても問題がないような学校なのだが、母親が用意してくれたので提出した。
「いいなあ、弟とか欲しかったな。一人っ子は寂しい」
「良いアニキになりそうだよな」
「どうだろうな、イジメまくるかもしんねえよ」
父親と愛人の方に息子がいるって話は子供の頃に聞いていた。父は母や俺よりも彼女と彼女の息子を愛していたのを知っている。
人間は嫉妬する生き物だ。もし、父から弟だと紹介されたとしてもきっと仲良くはできなかっただろうと思う。
「アンタは優しいだろ。頼られると断らないし」
それとこれとは別の話なのだ。俺が頼られて断らないのはただ人に愛されたいだけだ。
感情表現が歪んでいるだけの話。
「俺には妹はいないけど、でも……飽きたらちゃんと言えよ」
もし妹がいたとして、富田君が妹と結ばれてお兄ちゃんと呼ばれるとか、考えたくもないなと思う。
富田君は、どう思ったのかその言葉には返事をせずに、黙ったまま俺の身体を抱き寄せた。
ただ、重苦しいような無言の空気に俺は耐え切れずにそのまま目を閉じて眠りについた。
俺が富田君を好きな気持ちは、とても苦しいものだから。
胸が苦しくて、仕方がないくらいだ。
「どっか痛かったか?」
「…………大丈夫。やっぱ言わなきゃよかったな。息苦しくて思わず言っちゃただけ、心配すんなよ」
苦しいと告げると、富田君は心配そうな声で問いかける。
本当に優しいよな。
やっぱり勘違いしそうになってぐっと拳を握った。
こんな関係なんか続くわけがないのに、一挙一動、一言一句に期待してしまう。
早く寝た振りをしてしまうのが一番だと思った瞬間、背後から強く抱き寄せられた。
「眞壁、妹とかいないの」
突然問いかけられて、首を横に振った。
何故突然妹なのか、良く分からずに思い当たった想像に身震いする。
「会ったことのない弟ならいるらしいけど。もし、俺に妹がいたら、俺に飽きたから妹にとか……?こわい!」
「ちげえよ。つか、なんだ、飽きたから妹とか。わけわかんねえ。………オレは弟がいるよ……まだ、2歳だけど」
必死な表情で首を振る富田君に違和感を覚えながら、弟のことを語る彼の表情が優しくてなんだかもやもやとする。
「へえ、可愛いのか」
「まあな。弟はクォーターの血筋が出たのか綺麗な金髪してるんだ。巻き毛で可愛い。アンタの金髪とは違うんだけど」
「ああ。俺、天然じゃなくてブリーチしてるし。地毛も金髪だけどね」
学校には一応地毛と地目の証明書を提出はしている。
別にそんなの出さなくても問題がないような学校なのだが、母親が用意してくれたので提出した。
「いいなあ、弟とか欲しかったな。一人っ子は寂しい」
「良いアニキになりそうだよな」
「どうだろうな、イジメまくるかもしんねえよ」
父親と愛人の方に息子がいるって話は子供の頃に聞いていた。父は母や俺よりも彼女と彼女の息子を愛していたのを知っている。
人間は嫉妬する生き物だ。もし、父から弟だと紹介されたとしてもきっと仲良くはできなかっただろうと思う。
「アンタは優しいだろ。頼られると断らないし」
それとこれとは別の話なのだ。俺が頼られて断らないのはただ人に愛されたいだけだ。
感情表現が歪んでいるだけの話。
「俺には妹はいないけど、でも……飽きたらちゃんと言えよ」
もし妹がいたとして、富田君が妹と結ばれてお兄ちゃんと呼ばれるとか、考えたくもないなと思う。
富田君は、どう思ったのかその言葉には返事をせずに、黙ったまま俺の身体を抱き寄せた。
ただ、重苦しいような無言の空気に俺は耐え切れずにそのまま目を閉じて眠りについた。
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