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社会人編 season2
第15話→sideY
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今日は東流はスタッフの面接などで忙しいらしく、オレが1人で一望を施設に迎えにいくことになった。
そもそもがオレの息子なのだから、オレが行くのが当たり前なのだが。
まだ、オレも未熟でずっと存在すら知らなかった息子にどういう態度をとりゃいいのかまったくわからない。
どう接するか考えるだけでなんだか気持ちが重くなり、深いため息を漏らして施設の駐車場に車を停めると、庭で遊んでいる子供たちを横目に中に入る。
たぶん、東流がいなければ引き取るなんてことはしなかった。
綺麗な建物だが、何故かどことなく冷たい感じがする。
子供がもてるとか覚悟もなく10年前にすでにいたとか。
まあ、散々遊びまくっていたツケなんだし、仕方がない。
「日高、さんですね」
応対してくれる中年女性は、物珍しいように俺の顔をじろじろ眺める。
こんな視線には慣れている。
「はい。色々片付けがすみましたので、息子を迎えにきました」
女性向けの笑顔を作りながら中に入り、応接のソファーに座る。
「YASUSHIさんですよね。滅多にTVとかでないけど、雑誌でよく見ますよ」
若い女性スタッフたちがわらわらと寄ってくる。
「あ、はい。僕はタレントとかではないので、あまり有名ではないですから」
謙虚な姿勢でいいながら、出されたお茶を手にとる。
「一望君、すごくイイコですよ。頭もよくて。顔もすごくパパ似ですね」
「そうですか?僕は、ずっと存在を知らなかったので、まだ、あまり実感がなくて」
困りながら迷うように答えると、女性たちは曖昧に笑う。
暫くして荷物を手にした一望が、少しだけ視線を落としながら部屋にやってくる。
「こんにちは。一望、これからよろしくな」
手を差し出すと、おずおずとしながら軽く握り返してくる。
1度は目の前で施設に預けるという決断を口にしたオレに、一望は少し警戒をしているようだ。
「よろしくおねがいします」
見れば見るほどガキの時のオレに似ている。
少しだけ体がたくましそうなのは、サッカーをやっているからか。
「じゃあ、一望、行こうか。一望はサッカーが好きなんだよな。これから、競技場にいこうか。オレの友達でサッカー選手がいるから、ちょっと練習をみにいこう」
腕をひくと、少し驚いた顔をして嬉しそうに頷く。
まあ、母親を亡くしてすぐだしな。自分をお父さんと呼ぶのも抵抗感があるし、呼ばれるのも違和感しかない。
急に父親と言われても、一望も納得しがたいだろう。
最初は、友達みたいな関係からはじめないとな。
いきなり父親には、オレもなれない。
「〇〇○サンダーズってプロチームなんだけど。車でいけばすぐだし」
「…………お、お父さんも、サッカーすき?」
どう呼んでいいのか迷った表情をしている。
「昔、少しだけやってたからね。おとうさんとか、呼びにくいか?別に名前で呼んでもいいぞ」
車の助手席のドアをあけてやり、運転席乗り込む。
「…………大丈夫。おとうさん、は、ずっと…………呼んでみたかった」
静かにはにかむ様に笑う一望の様子になんだか胸を掴まれて、オレは振り切るように車を発車した。
競技場につくと、来たことがなかったと素直に一望は喜んでいる。そんなふうに素直な笑顔を作られると、こういうのも悪くないなとか考えるオレは、案外自分で考えてるより単純なのかもしれない。
競技場に入ると、ピッチで練習をしている選手の中から知り合いを探して軽く手を振る。
久しぶりに会う友達の東山は、即座にこちらに走ってくる。
「…………おす!久しぶりだな、日高。なーんだ、相変わらず腹立つくらいのイケメンだな。日高から突然連絡くるから、かなりビックリしたぞ」
爽やかな笑顔をたたえて、相変わらずな歯に衣着せぬ口調で東山は言った。
大学に入ってすぐからかなり活躍をして、日本代表にも選ばれた東山は、高校時代よりかなり自信をつけたのが、態度にも口調にもでている。
「え、え!おとうさん、テルの知り合いなの?!」
「ヒガシ、これが話していた息子の一望」
「へえ、何歳?なんだ結構大きくない?」
「一望です。今年11歳になります」
「へえ、しっかりしてるなあ。おい…………遊んでた時のか?」
東山は声をひそめて耳打する。
オレは素直に頷く。
普通は中二の頃の子供とか、ありえないだろう。
「俺は東山輝矢、おとうさんの高校時代のクラスメイトだよ。一望君はサッカー好きなの?」
東山は、子供の目線で一望に優しく話かけてくれる。
選手になれなかったら、先生になるのだと教職もとっていたはずだ。
「すごく、好きです。よく、テルさんのことも観てます。いつも応援してます」
社交辞令かどうかわからないが、ハキハキ話す一望に、東山はそうかと嬉しそうに笑うと、わしゃわしゃと一望の頭を撫でまわす。
「ホントそっくりな。なーんかよ、日高に応援されてるみたいで気分がいい」
「別に普通に応援してるよ。俺も」
「いや、ぜーんぜん純粋さが違うの。一望君、教えてあげるからピッチに入りなよ」
東山は、一望の手を引いていく。
オレはピッチの脇で眺めるだけでよさそうなので、少しほっとする。
普段あまり子供と接しないからどうしていいかわからなかったのだ。
東山は一望にボールを蹴らせたり、フォームを見たりしてくれる。
仕事でなかなか会えないだろうし、父親らしいこととか思い浮かばないからな。
こうやって好きなことに協力するくらいしかできない。
楽しそうに東山とボールを蹴る一望をぼんやり眺める。
オレはあそこまで、サッカーも必死でやってなかったし、そんなことより東流と一緒にいる時間が大事だった。
だから簡単にやめれた。
2時間くらい東山と一望の動きを眺めていたが、ようやく気がすんだのか二人はオレの方に戻ってきた。
「小学校にしてはかなり上手いなー。チームでも入れてやれよ」
「どうやればいいんだ?オレはあんまり日本にいないからさ。トールに言って教えておいてくれるか?」
東山の言葉に、オレは一望にタオルを渡しながら問いかける。
東山はそうすると言ってあまり突っ込まなかったが、才能があるっていうなら伸ばしてやらないとな。
オレは暫く話をした後で、東山に礼を言って競技場を後にした。
「おとうさんは、モデルさんだって聞いたけど、芸能人なの?」
一望は助手席に乗り込みながら、俺を見上げる。
「いや、違うかな。テレビとかには出ないし。雑誌で服を着てポーズをとって写真とられたり、ファッションショーで服をきて歩く仕事だよ」
そんないいもんじゃないけど、いまのところは稼ぎもいい。
「でも、テルと知り合いとか、すごいよね。優しく教えてもらえたよ」
「高校で同じクラスだったからね」
子供なりに気を使っているのかな。
そんなに頑張らなくてもいいのにな。
オレは手を伸ばして、東山がしたように頭をくしゃくしゃと撫でる。
「教えてもらえて良かったな。チームに入りたいなら、ヒガシに聞いておくから。送り迎えとかは、多分トールがしてくれるしな」
オレも成長しないといけないな。
子供に気をつかわせたりは、あんまりしたくないな。
慣れた道にはいると、ひとりごちに帰路を急いだ。
そもそもがオレの息子なのだから、オレが行くのが当たり前なのだが。
まだ、オレも未熟でずっと存在すら知らなかった息子にどういう態度をとりゃいいのかまったくわからない。
どう接するか考えるだけでなんだか気持ちが重くなり、深いため息を漏らして施設の駐車場に車を停めると、庭で遊んでいる子供たちを横目に中に入る。
たぶん、東流がいなければ引き取るなんてことはしなかった。
綺麗な建物だが、何故かどことなく冷たい感じがする。
子供がもてるとか覚悟もなく10年前にすでにいたとか。
まあ、散々遊びまくっていたツケなんだし、仕方がない。
「日高、さんですね」
応対してくれる中年女性は、物珍しいように俺の顔をじろじろ眺める。
こんな視線には慣れている。
「はい。色々片付けがすみましたので、息子を迎えにきました」
女性向けの笑顔を作りながら中に入り、応接のソファーに座る。
「YASUSHIさんですよね。滅多にTVとかでないけど、雑誌でよく見ますよ」
若い女性スタッフたちがわらわらと寄ってくる。
「あ、はい。僕はタレントとかではないので、あまり有名ではないですから」
謙虚な姿勢でいいながら、出されたお茶を手にとる。
「一望君、すごくイイコですよ。頭もよくて。顔もすごくパパ似ですね」
「そうですか?僕は、ずっと存在を知らなかったので、まだ、あまり実感がなくて」
困りながら迷うように答えると、女性たちは曖昧に笑う。
暫くして荷物を手にした一望が、少しだけ視線を落としながら部屋にやってくる。
「こんにちは。一望、これからよろしくな」
手を差し出すと、おずおずとしながら軽く握り返してくる。
1度は目の前で施設に預けるという決断を口にしたオレに、一望は少し警戒をしているようだ。
「よろしくおねがいします」
見れば見るほどガキの時のオレに似ている。
少しだけ体がたくましそうなのは、サッカーをやっているからか。
「じゃあ、一望、行こうか。一望はサッカーが好きなんだよな。これから、競技場にいこうか。オレの友達でサッカー選手がいるから、ちょっと練習をみにいこう」
腕をひくと、少し驚いた顔をして嬉しそうに頷く。
まあ、母親を亡くしてすぐだしな。自分をお父さんと呼ぶのも抵抗感があるし、呼ばれるのも違和感しかない。
急に父親と言われても、一望も納得しがたいだろう。
最初は、友達みたいな関係からはじめないとな。
いきなり父親には、オレもなれない。
「〇〇○サンダーズってプロチームなんだけど。車でいけばすぐだし」
「…………お、お父さんも、サッカーすき?」
どう呼んでいいのか迷った表情をしている。
「昔、少しだけやってたからね。おとうさんとか、呼びにくいか?別に名前で呼んでもいいぞ」
車の助手席のドアをあけてやり、運転席乗り込む。
「…………大丈夫。おとうさん、は、ずっと…………呼んでみたかった」
静かにはにかむ様に笑う一望の様子になんだか胸を掴まれて、オレは振り切るように車を発車した。
競技場につくと、来たことがなかったと素直に一望は喜んでいる。そんなふうに素直な笑顔を作られると、こういうのも悪くないなとか考えるオレは、案外自分で考えてるより単純なのかもしれない。
競技場に入ると、ピッチで練習をしている選手の中から知り合いを探して軽く手を振る。
久しぶりに会う友達の東山は、即座にこちらに走ってくる。
「…………おす!久しぶりだな、日高。なーんだ、相変わらず腹立つくらいのイケメンだな。日高から突然連絡くるから、かなりビックリしたぞ」
爽やかな笑顔をたたえて、相変わらずな歯に衣着せぬ口調で東山は言った。
大学に入ってすぐからかなり活躍をして、日本代表にも選ばれた東山は、高校時代よりかなり自信をつけたのが、態度にも口調にもでている。
「え、え!おとうさん、テルの知り合いなの?!」
「ヒガシ、これが話していた息子の一望」
「へえ、何歳?なんだ結構大きくない?」
「一望です。今年11歳になります」
「へえ、しっかりしてるなあ。おい…………遊んでた時のか?」
東山は声をひそめて耳打する。
オレは素直に頷く。
普通は中二の頃の子供とか、ありえないだろう。
「俺は東山輝矢、おとうさんの高校時代のクラスメイトだよ。一望君はサッカー好きなの?」
東山は、子供の目線で一望に優しく話かけてくれる。
選手になれなかったら、先生になるのだと教職もとっていたはずだ。
「すごく、好きです。よく、テルさんのことも観てます。いつも応援してます」
社交辞令かどうかわからないが、ハキハキ話す一望に、東山はそうかと嬉しそうに笑うと、わしゃわしゃと一望の頭を撫でまわす。
「ホントそっくりな。なーんかよ、日高に応援されてるみたいで気分がいい」
「別に普通に応援してるよ。俺も」
「いや、ぜーんぜん純粋さが違うの。一望君、教えてあげるからピッチに入りなよ」
東山は、一望の手を引いていく。
オレはピッチの脇で眺めるだけでよさそうなので、少しほっとする。
普段あまり子供と接しないからどうしていいかわからなかったのだ。
東山は一望にボールを蹴らせたり、フォームを見たりしてくれる。
仕事でなかなか会えないだろうし、父親らしいこととか思い浮かばないからな。
こうやって好きなことに協力するくらいしかできない。
楽しそうに東山とボールを蹴る一望をぼんやり眺める。
オレはあそこまで、サッカーも必死でやってなかったし、そんなことより東流と一緒にいる時間が大事だった。
だから簡単にやめれた。
2時間くらい東山と一望の動きを眺めていたが、ようやく気がすんだのか二人はオレの方に戻ってきた。
「小学校にしてはかなり上手いなー。チームでも入れてやれよ」
「どうやればいいんだ?オレはあんまり日本にいないからさ。トールに言って教えておいてくれるか?」
東山の言葉に、オレは一望にタオルを渡しながら問いかける。
東山はそうすると言ってあまり突っ込まなかったが、才能があるっていうなら伸ばしてやらないとな。
オレは暫く話をした後で、東山に礼を言って競技場を後にした。
「おとうさんは、モデルさんだって聞いたけど、芸能人なの?」
一望は助手席に乗り込みながら、俺を見上げる。
「いや、違うかな。テレビとかには出ないし。雑誌で服を着てポーズをとって写真とられたり、ファッションショーで服をきて歩く仕事だよ」
そんないいもんじゃないけど、いまのところは稼ぎもいい。
「でも、テルと知り合いとか、すごいよね。優しく教えてもらえたよ」
「高校で同じクラスだったからね」
子供なりに気を使っているのかな。
そんなに頑張らなくてもいいのにな。
オレは手を伸ばして、東山がしたように頭をくしゃくしゃと撫でる。
「教えてもらえて良かったな。チームに入りたいなら、ヒガシに聞いておくから。送り迎えとかは、多分トールがしてくれるしな」
オレも成長しないといけないな。
子供に気をつかわせたりは、あんまりしたくないな。
慣れた道にはいると、ひとりごちに帰路を急いだ。
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