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番外編
キミの名を→side T
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「たでえま」
正直期待とかはしてなかったし、どちらかと言えば阪口さんを説得する内容ばかりを頭で考えていたかと思う。
玄関の扉を開けた瞬間、一瞬入る家を間違えたかと身体が強ばる。
いつもはモノトーンのマットとスリッパが並べてあるのだが、ふんわりとしたパステルカラーの品々が並んでいる。
「おかえりなさい。こんばんは」
そして、玄関から顔を出した康史の姿に俺は直立不動になるしかない。
ボブのカツラをかぶって、きっちりとメイクされていて、どこぞの女優のようである。服装はパンツルックである。
「……は、ハジメマシテ。今日はっ、と、とと、突然すいません」
「あ、気にしないでください。いつも、トールがお世話になってます。あまり綺麗にしてないですが、どうぞ」
女子にしては少しハスキーだとは思うが、気にならない程度の自然な声である。
「…………なあ、マジで美人すぎねえか。女優の金森ナズナにクリソツ」
阪口さんは、最近CMやドラマに引っ張りだこの売り出し中の女優の名前をあげるが、それは俺の元カノである。
「まあ、ナズとコイツ親戚なんで」
「マジか?うわ、サインとかもらえねえかな。すげー好きなんだよな、あのこ」
「あー、いーっすよ」
興奮する阪口さんを部屋にあげて、ダイニングの椅子を指さす。
よく見ると細かい部屋の中の小物もなんだか女子っぽいものが揃っている。
芸が細かいしそこまでするかとも思う。
「大したものできなかったのだけど」
俺の好きなハンバーグはきちんとあったが、いつも作らないような、コロッケやなんだかオシャレなサラダとかが並んでいる。
「めちゃくちゃリア充してんな、オマエ」
部屋を見回して、康史を前に緊張しているようである。
俺だって、女装の康史をマトモに見るのは初めてに近い。
最初に見た時は、頭がぐるぐるしてたし正直あんまり覚えてないし、次は殴り込み前でアドレナリンがでまくってた。
まじまじ見ると綺麗すぎる。
「はい、まあ……」
「よく見りゃテメエも男前だもんな、式とかあげねえのかあ」
「そういうの苦手なんで」
「今どきすぎるな」
そんなこんなで、阪口さんはすっかり康史を女だと思って帰っていった。
阪口さんが帰るとなんだかどっと疲れが出ちまってなんとなく椅子の背もたれに凭れかかる。
「……まさか、女装とかでくッとは思わなかった」
「似合ってねえ?」
自信満々な顔をして自信なさそうな口調で尋ねるのはなんだか、卑怯だ。
「いや、すげえキレイだけどな」
「ホントはもっとケバイのが好きだろ?」
俺の好みも何もかも把握してるとばかりに言いながら、康史は近づいてきて俺の顎先を掴む。
「部屋まで変えるとかなあ」
「コレは撮影の小道具を借りた、すぐ元に戻すよ」
やり過ぎと笑う俺の唇を、ピンク系のネイルアートされた指先でたどる。
「別に俺はオマエが男だって職場にバレても良かったんだ。オマエの名前になるって決めてから、そのつもりだった」
「相変わらず潔すぎる」
可笑しそうに笑うと康史は長い指先で、俺のシャツのボタンを外していく。
「なあ、もう30分で誕生日なんだけど、プレゼントくれるか」
答えも聞かずにシャツをぬがして椅子の上の俺の肩を軽く掴む。
「せっかちだな。メイクとか落とさないでいいのか?」
こんなとこじゃ椅子が壊れるだろうと、俺は康史の体を掴み返すと、その腰をかかえて抱き上げる。
ふんわりと甘い香りがするのは、香水までつけているようだ。
康史は、俺の顔を覗き込んで、いたずらっぽく告げた。
「いつもより、その方がトールが興奮して見えるから、このままでいいかな」
正直期待とかはしてなかったし、どちらかと言えば阪口さんを説得する内容ばかりを頭で考えていたかと思う。
玄関の扉を開けた瞬間、一瞬入る家を間違えたかと身体が強ばる。
いつもはモノトーンのマットとスリッパが並べてあるのだが、ふんわりとしたパステルカラーの品々が並んでいる。
「おかえりなさい。こんばんは」
そして、玄関から顔を出した康史の姿に俺は直立不動になるしかない。
ボブのカツラをかぶって、きっちりとメイクされていて、どこぞの女優のようである。服装はパンツルックである。
「……は、ハジメマシテ。今日はっ、と、とと、突然すいません」
「あ、気にしないでください。いつも、トールがお世話になってます。あまり綺麗にしてないですが、どうぞ」
女子にしては少しハスキーだとは思うが、気にならない程度の自然な声である。
「…………なあ、マジで美人すぎねえか。女優の金森ナズナにクリソツ」
阪口さんは、最近CMやドラマに引っ張りだこの売り出し中の女優の名前をあげるが、それは俺の元カノである。
「まあ、ナズとコイツ親戚なんで」
「マジか?うわ、サインとかもらえねえかな。すげー好きなんだよな、あのこ」
「あー、いーっすよ」
興奮する阪口さんを部屋にあげて、ダイニングの椅子を指さす。
よく見ると細かい部屋の中の小物もなんだか女子っぽいものが揃っている。
芸が細かいしそこまでするかとも思う。
「大したものできなかったのだけど」
俺の好きなハンバーグはきちんとあったが、いつも作らないような、コロッケやなんだかオシャレなサラダとかが並んでいる。
「めちゃくちゃリア充してんな、オマエ」
部屋を見回して、康史を前に緊張しているようである。
俺だって、女装の康史をマトモに見るのは初めてに近い。
最初に見た時は、頭がぐるぐるしてたし正直あんまり覚えてないし、次は殴り込み前でアドレナリンがでまくってた。
まじまじ見ると綺麗すぎる。
「はい、まあ……」
「よく見りゃテメエも男前だもんな、式とかあげねえのかあ」
「そういうの苦手なんで」
「今どきすぎるな」
そんなこんなで、阪口さんはすっかり康史を女だと思って帰っていった。
阪口さんが帰るとなんだかどっと疲れが出ちまってなんとなく椅子の背もたれに凭れかかる。
「……まさか、女装とかでくッとは思わなかった」
「似合ってねえ?」
自信満々な顔をして自信なさそうな口調で尋ねるのはなんだか、卑怯だ。
「いや、すげえキレイだけどな」
「ホントはもっとケバイのが好きだろ?」
俺の好みも何もかも把握してるとばかりに言いながら、康史は近づいてきて俺の顎先を掴む。
「部屋まで変えるとかなあ」
「コレは撮影の小道具を借りた、すぐ元に戻すよ」
やり過ぎと笑う俺の唇を、ピンク系のネイルアートされた指先でたどる。
「別に俺はオマエが男だって職場にバレても良かったんだ。オマエの名前になるって決めてから、そのつもりだった」
「相変わらず潔すぎる」
可笑しそうに笑うと康史は長い指先で、俺のシャツのボタンを外していく。
「なあ、もう30分で誕生日なんだけど、プレゼントくれるか」
答えも聞かずにシャツをぬがして椅子の上の俺の肩を軽く掴む。
「せっかちだな。メイクとか落とさないでいいのか?」
こんなとこじゃ椅子が壊れるだろうと、俺は康史の体を掴み返すと、その腰をかかえて抱き上げる。
ふんわりと甘い香りがするのは、香水までつけているようだ。
康史は、俺の顔を覗き込んで、いたずらっぽく告げた。
「いつもより、その方がトールが興奮して見えるから、このままでいいかな」
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