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番外編
キミの名を→side T
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「……え、俺が名前を日高にしねえとなんねえのか」
前々から俺は康史が大学を卒業したら、結婚しようと約束をしていた。康史は卒業前にも、モデルをして働いてはいたがケジメはきちんとしようと、卒業後の誕生日に入籍をすることにしていた。
が、入籍をするためには、養子縁組とかが必要で、1日でも早く生まれた方の養子にならないとならんらしい。
康史の誕生日は6月2日だ。同学年の俺は2月で康史の方が早く生まれている。
そして、誕生日までは、あと、たった1週間後である。
「嫌かな?やっぱり名前が変わるの大変だしね。トールは働いているし」
少し眉を寄せて何か言いたげだが、康史は言葉を飲み込んでいる。
確かに、名前が変わると自分が呼ばれても気が付かないかもしれない。だけど、最近じゃ事務の女の子も結婚後も名前を変えずにやっている。
「いや、それは別にかまわねえ。ちっとビックリしただけだ。婿よーしとかもあるしな。プロポーズしたのは、俺だし、オマエと同じ名前になることが大事なことだ」
「よかった。やっと、トールと結婚できるって楽しみにしてたから。あ、結婚式とか……海外とかでする?」
「ん?いや、別に……オマエと俺との結婚だしよ。式とかはいらねえよ」
結婚式って、ケーキとかドレス着て神様に祈ったりなんかするんだったか。
康史のドレスは見てみたいが、それじゃあ女装になっちまう。神様とかも関係ねえことだ。
俺の言葉に康史は少し肩を落として寂しそうに笑うので、ほんとはやりたかったのかなとか考える。
「あーー、なんだ、その……式はしねえが、ツーリングに行こうか。晴れてたら、その日最後の太陽に、なんかを誓ってやるからさ」
「なんかって、なに?」
「なんかは、なんかだよ!!」
ちょっとばかりカッコつけすぎたかと恥ずかしくなって、俺は康史から視線を逸らした。
「ありがと、それで十分だよ。明日、書類をとりに市役所に行ってくるよ」
康史は嬉しそうに笑い、俺の首筋にぶらさがるように抱きついた。
「は?長谷川、名前が変わるとか。なんだ、結婚か!?」
上司の阪口さんに報告したところ、大声でガハガハ言いながら周りに聞こえるように言う。
何年か前に結婚している阪口さんだし、総務とかへの手続きを聞きたかったんだが。
「あー、まあ、そんな感じっす。養子なんとかってやつで」
「婿養子か。へえ、意外だな。オマエは亭主関白って感じなのになあ」
やっぱり面倒な人だなと考えて、どうしようかと悩みながら総務の手続きを聞くと、それはきっちり教えてくれた。
入社5年、大体の人間の扱いには慣れたが、この人はあまり得意ではない。
「で、オマエの彼女、美人とか聞いてるけど。実際どうなの?結婚式あげるんか」
「式は……やらねえです。派手なことは……苦手なんで」
「美人な彼女が、式あげないとか良く許したなあ」
嘘をつくのが元々苦手なんで、しどろもどろにまあなんとかとか、返していると、
「彼女も結構恥ずかしがり屋さんなんだよな、東流」
横から栗原が助け舟を出してくれたので、俺はこくこくと頷く。
「へえ。道郎は、彼女にあったことがあるのか?」
「まあ、何度かですけど」
不服そうな表情をする阪口さんに不穏な空気を感じる。
あ、なんか、やべえ感じだ。
「へえ、明日公休だろ?夜、オマエ家行っていいか?結婚祝いもってくし」
きたきたきたきた。
ゴリ押しな感じがかなりヤバイ。
栗原を見ると両手を合わせてすまんと頭をさげている。
まあ……仕方ないか。
「わかりやした、ちと、彼女に電話入れて聞いてみますよ。いきなりだと、ビビッちゃうんで」
とりあえず、康史に相談しようとスマホを手にして、事務所から外に出た。
前々から俺は康史が大学を卒業したら、結婚しようと約束をしていた。康史は卒業前にも、モデルをして働いてはいたがケジメはきちんとしようと、卒業後の誕生日に入籍をすることにしていた。
が、入籍をするためには、養子縁組とかが必要で、1日でも早く生まれた方の養子にならないとならんらしい。
康史の誕生日は6月2日だ。同学年の俺は2月で康史の方が早く生まれている。
そして、誕生日までは、あと、たった1週間後である。
「嫌かな?やっぱり名前が変わるの大変だしね。トールは働いているし」
少し眉を寄せて何か言いたげだが、康史は言葉を飲み込んでいる。
確かに、名前が変わると自分が呼ばれても気が付かないかもしれない。だけど、最近じゃ事務の女の子も結婚後も名前を変えずにやっている。
「いや、それは別にかまわねえ。ちっとビックリしただけだ。婿よーしとかもあるしな。プロポーズしたのは、俺だし、オマエと同じ名前になることが大事なことだ」
「よかった。やっと、トールと結婚できるって楽しみにしてたから。あ、結婚式とか……海外とかでする?」
「ん?いや、別に……オマエと俺との結婚だしよ。式とかはいらねえよ」
結婚式って、ケーキとかドレス着て神様に祈ったりなんかするんだったか。
康史のドレスは見てみたいが、それじゃあ女装になっちまう。神様とかも関係ねえことだ。
俺の言葉に康史は少し肩を落として寂しそうに笑うので、ほんとはやりたかったのかなとか考える。
「あーー、なんだ、その……式はしねえが、ツーリングに行こうか。晴れてたら、その日最後の太陽に、なんかを誓ってやるからさ」
「なんかって、なに?」
「なんかは、なんかだよ!!」
ちょっとばかりカッコつけすぎたかと恥ずかしくなって、俺は康史から視線を逸らした。
「ありがと、それで十分だよ。明日、書類をとりに市役所に行ってくるよ」
康史は嬉しそうに笑い、俺の首筋にぶらさがるように抱きついた。
「は?長谷川、名前が変わるとか。なんだ、結婚か!?」
上司の阪口さんに報告したところ、大声でガハガハ言いながら周りに聞こえるように言う。
何年か前に結婚している阪口さんだし、総務とかへの手続きを聞きたかったんだが。
「あー、まあ、そんな感じっす。養子なんとかってやつで」
「婿養子か。へえ、意外だな。オマエは亭主関白って感じなのになあ」
やっぱり面倒な人だなと考えて、どうしようかと悩みながら総務の手続きを聞くと、それはきっちり教えてくれた。
入社5年、大体の人間の扱いには慣れたが、この人はあまり得意ではない。
「で、オマエの彼女、美人とか聞いてるけど。実際どうなの?結婚式あげるんか」
「式は……やらねえです。派手なことは……苦手なんで」
「美人な彼女が、式あげないとか良く許したなあ」
嘘をつくのが元々苦手なんで、しどろもどろにまあなんとかとか、返していると、
「彼女も結構恥ずかしがり屋さんなんだよな、東流」
横から栗原が助け舟を出してくれたので、俺はこくこくと頷く。
「へえ。道郎は、彼女にあったことがあるのか?」
「まあ、何度かですけど」
不服そうな表情をする阪口さんに不穏な空気を感じる。
あ、なんか、やべえ感じだ。
「へえ、明日公休だろ?夜、オマエ家行っていいか?結婚祝いもってくし」
きたきたきたきた。
ゴリ押しな感じがかなりヤバイ。
栗原を見ると両手を合わせてすまんと頭をさげている。
まあ……仕方ないか。
「わかりやした、ちと、彼女に電話入れて聞いてみますよ。いきなりだと、ビビッちゃうんで」
とりあえず、康史に相談しようとスマホを手にして、事務所から外に出た。
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